ビジネス車にカテゴライズされているホンダ『スーパーカブ』。ユーザーのさらなる安心感を支えるために、特にエンジンまわりを中心とした部品の耐久性がより高まっているという。
本田技術研究所 二輪R&Dセンター開発研究員 東 昭吉さんが教えてくれた。
「タフネス性を追求し、ピストンとシリンダースリーブの両方を新設計し、スリーブの中をピストンがより滑らかに往復できるようにすることで、エンジン耐久性のさらなる向上を目指しました」(東さん)
鋳鉄製のシリンダースリーブと、それが嵌合されているアルミシリンダー、双方の熱膨張率の違いからくる熱間時のスリーブ内面の歪みを最小限に抑えるため「スパイニースリーブ」を新採用した。
スパイニースリーブ表面の細かい凹凸がフックの役割となり、シリンダーの熱膨張に従ってスリーブが均等に引っ張られことで、スリーブ内側の真円度が保たれるため、ピストン往復時のフリクションが低減されるのだ。
同時にピストン側にも、ピストンスカート部に摩耗抵抗が低いモリブデンコーティングを追加し、スリーブと馴染みやすさを高めた。さらにピストンリングには窒化クロム処理を施し、優れた耐摩耗性を実現している。
「従来の遠心フィルターとスクリーンフィルター(オイルストレーナー)に加えて、より微細なスラッジを捕捉し、交換が容易なカートリッジ式のオイルフィルターを追加しました」(東さん)
「このオイルフィルターに効率よくオイルを導いて、常にきれいなオイルでエンジンを潤滑できるよう、オイルポンプ位置を変更しました。併せて、スクリーンフィルターをオイルドレンボルト側に配置変更することで、従来、スクリーンフィルター清掃時に必要としていた右クランクケースカバーの脱着を不要とするなど、メンテナンス性に配慮しました」(東さん)
濾紙式カートリッジ式オイルフィルターはボルト2本を外すだけで交換できる。メンテナンスがより簡単になったことで、ますますエンジンが丈夫というわけだ。
スーパーカブは世界生産累計台数1億台を突破し、来年は誕生60周年を迎える。ますます信頼性、タフネスさを向上させ、国内販売する新型スーパーカブは生産も中国から国内(熊本製作所)に5年ぶりに戻した。生産2億台に向け、死角は見当たらない。