最小回転半径3.3m未満、超小回りEVコンセプトカーに試乗【Vision Zero Days Japan】

エコカー EV
『ZF Innovation Vehicle』に試乗
『ZF Innovation Vehicle』に試乗 全 16 枚 拡大写真

ドイツの自動車部品世界大手、ZFの日本法人が開催した先進技術試乗会「ZF VISION ZERO DAYS」。ゼロエミッション、交通事故ゼロの2つを意味するキャッチフレーズだが、実際にはプラグインハイブリッドから完全電動車、また簡易な運転支援システムから自動運転までと、幅広くソリューションを提供するというのが同社の基本戦略だ。

【画像全16枚】

ZFが『ZF Innovation Vehicle』(以下、ZFIV)と名づけたスモールカーは、大都市における次世代のパーソナルモビリティづくりの技術を盛り込んだコンセプトカーだ。

スズキのAセグメントミニカー『スプラッシュ』をベースにエンジンを取り去り、後左右輪に1個ずつモーターを組み込んでEV化。さらに前サスペンションを最大75度転舵可能なものに換装している。車体寸法は小さいが、出力は合計80kW(109ps)と強力。驚異的なのは最小回転半径で、4人乗りモデルでありながら、何と3.3m未満であるという。

このZFIVを実際にドライブしてみた。まずはパイロンスラローム。試乗コースにはパイロンがごく短い間隔で置かれていた。これを倒さずに走ることなどできるのか? と思うくらいであったが、走り始めてみると、75度転舵の恩恵で、すさまじい小回りぶりでパイロンの間をクルクルとすり抜けることができた。

ドライブのコツは、パイロンぎりぎりまで鼻先を寄せてフル転舵すること。最初は慣れが必要だが、2トントラックやマイクロバスを運転している感覚で乗れば、ほどなく慣れるのではないかと思われた。

後輪の左右独立モーターは駆動力の独立制御が可能で、それを生かしたトルクベクタリング(左右輪のトルクに差をつけてクルマを曲げる機能)が実装されていた。それをオンにすると、さらに小回りが利くようになることが明確に体感できた。広いところではフル転舵したままで定常旋回をやってみた。すると、クルマは後輪を軸にして、その場でクルクルと回り続けることができた。

ZFIVは都市部向けのパーソナルモビリティを想定したモデルであるが、確かに都市走行にマッチしそうではあった。たとえばパーキング。日本では駐車禁止の道路が大半で恩恵はあまりないであろうが、欧州の都市部で路上駐車する場合、これだけ転舵角が大きいと、ちょっとした隙間があれば軽がると縦列駐車させることができるだろう。また、事業効率を上げるために狭い敷地にできるだけたくさんの車両を保管したいカーシェア車両にはうってつけではないかと思われた。実装が楽しみなシステムである。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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