はとバス 入社試験から松田聖子、五輪委員会まで…ガイドさんのリアル[インタビュー]

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はとバス(東京タワー)
はとバス(東京タワー) 全 8 枚 拡大写真

12月15日は「観光バスの日」だ。東京都大田区平和島。環七通りと首都高1号羽田線が交差する地に、あの黄色いバスの車両基地がある。

首都圏の定期観光バスや、貸切バスとして全国各地を行く、はとバス。1924年(大正14年)12月15日に、東京で初めて定期遊覧乗合バスの運行が開始された。これを記念して12月15日が「観光バスの日」になっている。はとバスでも翌日の12月16日に、「1日限定!/特別企画! はとバス体験ツアー(東京スカイツリー&浅草)」を走らせる。

この「観光バスの日」にあわせ、『レスポンス』編集部は、はとバスの第一線で活躍するガイドとトレーナーに直撃インタビュー。「ガイドという仕事のリアル」「はとバスらしさ」「意外な視点」などを教えてくれた。

今回、インタビューに応じてくれたのは、2年目の金本安奈さんと、キャリア12年目でトレーナーも兼任する吉塚里美さん。ふたりとも、スカーフに制服を着用したバスガイド業界の“アスリート”だ。

はとバス ガイド の吉塚里美さん(左)と金本安奈さん
---:どのようなトレーニングを積んでバスガイドの現場に立てるんですか?

吉塚さん(以下敬称略):新人はまず、3月中旬に仮入社します。そこで2週間ほどバス車両のバック誘導などの練習、机上で教本を手にしながら漢字や地名の学習を実施します。

そのあと、担当コースを地図で確認したり、実際にバスに乗って、どこのタイミングでなにを話すかなどを、教本に沿って覚えていきます。そして試験で合格すると、一般的には4月下旬にデビューするという流れです。

金本さん(以下敬称略):入社してすぐ、「こんなに覚えなければならないんだ!」って思いましたね。

---:入社試験はどんな内容ですか?

吉塚:バスガイド職として採用する場合は、適性試験・筆記試験、面接のほかに、「歌と朗読」といった試験項目もあります。

歌は自分で選んだ曲を伴奏なしで歌います。最近の受験者はみな、年配向けの歌を唄う傾向がありますね。ひとむかし前は、石川さゆりの「天城越え」が多かったですが、いまは松田聖子の「赤いスイートピー」。

---:カラオケで若い女の子が「赤いスイートピー」を歌ったら、「オヤジ受け狙い」ということですね。金本さんはなにを歌ったんですか?

金本:わたしは東日本大震災の復興を願って「花は咲く」を。ちなみに、朗読は当日「お題」が伝えられるまでわかりません。

はとバス ガイド用教本
---:はとバスのガイドになるために求められるものとは?

吉塚:まずもって体調ですね。ガイドの現場は体力勝負なので、体力に自信がある人、出会いや人と関わることが好きな人を求めていますね。

金本:わたしもちょっとやそっとじゃ寝込まないようになりました。体調に気を遣うようになって。

---:アスリートですね。入社までにどのような準備をしておくといいですか?

吉塚:歴史や史実の知識ですね。都内は江戸時代からの話がいりますし、鎌倉へ行けば、鎌倉時代の歴史を語ることになる。ひととおりの歴史の流れがわかっていると、現場でもそれが活かされると思いますね。時代の流れを組んでいくと。あとは、国語をしっかりと。

---:金本さんは、どんなきっかけで、はとバスのガイドを目指したんですか?

金本:もともと、人に何かを伝えたい、教えたいという思いからです。どこかに出かけたり、校外学習も大好きでした。

観光バスのガイドというと、いろいろな会社がありますが、はとバスを選んだ理由のひとつに、定期観光バスという存在です。都内・近郊定期観光バスは、一般乗合旅客自動車運送事業でして、はとバスの強みですよね。そこに惹かれました。

吉塚:はとバスは一般乗合旅客自動車運送事業の都内・近郊定期観光バスと、一般貸切旅客自動車運送事業の募集型企画旅行と、大きくふたつに別れます。定期観光は、地方からのお客様が多くて、募集型は都内の旅慣れてる人たち、というイメージ。

金本:どちらも気が抜けませんが、路線バスとしての定期観光は、ダイヤもルートも、どこでなにを話すかも決まってるので、ピリッとしますね。

ガイドの吉塚里美さん(向かって右)と金本安奈さん
---:はとバスの仕事をしてよかったと思えるのは、どんなときですか?

金本:トレーナーとともに教本と実習で学んだことが、お客様の前で伝えられて、降車時に「楽しかった」とお声をいただくことが、なによりもうれしいですよね。

横浜鎌倉コースで、「あなた、数か月前に東京スカイツリーコースのガイドでいっしょだった。あのときの歌がとても上手だったから覚えてるのよ」っていわれたときは、ほんとうにうれしかった。

それから、バスガイドの世界って「怖い女性たちがいる現場」と思ってたんですが、トレーナーをはじめ、先輩たちがいろいろと優しく教えてくれる。プライベートの話もいろいろ聞いてくれる。年次やキャリアも関係なく、現場を担当させてくれるところも「はとバスらしい」好きなところですね。

吉塚:年次によって担当するエリアが違いますね。関東が4~5年生、6年目から中部、北陸、東北などと広がり、若手が都内を守るという感じ。修学旅行シーズンの関東近郊は、年次関係なく担当します。

---:金本さんの平均的な一日のスケジュールを教えてください。

金本:7時半出勤の場合は、5時半に起床して、6時半ごろ家を出ます。7時半に平和島本社に出社し、8時には出庫。9時にお客様をおむかえします。7時半出勤ですと、18時には入庫し帰ってくるというパターンですね。

---:はとバスのガイドを目指す人にアドバイスを。

金本:毎日毎日、出会いや体感すること、覚えることがあり、体力が要りますが刺激的な現場です。すばらしい景色や、おいしいものにめぐり会えるときもあります。楽しみながら、仕事をしてほしいです。

吉塚:どんなことにも興味を持つという姿勢で。歴史、文化、食、あらゆるジャンルに興味を持ち、それをお客様にことばとして伝えていかなければなりません。アンテナは常に高く、ですね。

……聞き手の質問に対し、「うーん」と考え込むときもあったが、とにかくなんでも答えてくれる。「さすがはとバスのガイド」だった。インタビューの最後に、吉塚さんが「いまワクワク、ドキドキしながら挑んでいる」という話題を教えてくれた。

吉塚:2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、はとバスは動き出しています。はとバス社内に『オリンピック委員会』を設置し、月に1度、会議を重ねています。わたしもその委員会の一員。

オリパラの競技を学びながら、競技場とその周辺の情報を集めたり、競技場と競技場を結ぶコースを確認したりと。インバウンドの利用者数もいま以上に増えていくので、英語のほか、今後は世界各地のことばも学びたいですね。

《レスポンス編集部》

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