フランス発のラグジュアリーブランド「DS」から、いよいよフラッグシップモデルとなるクロスオーバーSUV『DS 7 クロスバック』が登場する。日本でも東京モーターショーでお披露目され、2018年7月頃のデリバリー開始を計画している。これに先駆け、フランス・パリではDS 7 クロスバックの国際試乗会を開催。試乗会では、車両の説明のみならず、DSブランドについてのさまざまなプレゼンテーションも行われた。
DSが目指すもの、そしてDS 7 クロスバックの使命とは。モータージャーナリスト森口将之氏が現地を取材した。
フレンチラグジュアリーのノウハウを自動車として表現
DSオートモビルでは、DS 7 クロスバックをニュージェネレーションDSの第一弾と位置付けている。2014年のDSブランド独立後に生み出された初めての車種だからだ。ゆえにこのようなプレゼンテーションを行ったのだろう。
新たな一歩を踏み出したDSブランドのマニフェストについて、プロダクトマネージャーは次のように説明した。
「1950~60年代のクラシックDS、これをベースに開発されたグランドツアラーSM。他社の例を挙げるなら、高級車ファセル・ヴェガ、そして超音速旅客機コンコルド。こうしたフレンチラグジュアリーのノウハウを自動車工業製品として体現することを目指しました」
最上級車種として送り出したDS 7 クロスバックのライバルは、アウディ『Q3』、BMW『X1』、レンジローバー『イヴォーク』、ボルボ『XC40』などと伝え聞くが、ボディサイズやインテリアの仕立てを見た限りでは、アウディでは『Q5』、BMWでは『X3』などに近いポジショニングではないかと思った。
内外装フィニッシュ(DSでは“インスピレーション”と呼ぶ)の名称は「バスティーユ」、「パフォーマンスライン」、「リヴォリ」、「オペラ」、そして後述するプラグインハイブリッドモデルとともに導入される「フォーブール」となる(※)。パリに訪れたことがある人なら、広場や通りの名前であることが分かろう。他のプレミアムブランドでは真似できない、DSならではのネーミングだ。
特に差別化が顕著なのはインテリアだ。デザイナーが次のように語った。
「シート表皮はバスティーユが樹脂でコーティングしたファブリック、パフォーマンスラインはアルカンタラ、リヴォリとオペラは仕立て違いのレザーにしています。さらに快適装備では、フランスのプレミアムオーディオブランドとして知られるフォーカルの14スピーカーシステムも特筆できるでしょう」
プラグインハイブリッドという新たな個性
すべて直列4気筒となるDS 7 クロスバックのエンジンは、1.6Lガソリンターボ(225/180ps)、2Lディーゼルターボ(180ps)と1.5Lディーゼルターボ(130ps)がある。130ps仕様が6速MTとなるほかはすべて、DSブランド初となる8速ATが組み合わせられる(※)。
これらはすべて前輪駆動だが、前述したように2019年半ばに4WDのプラグインハイブリッド「E-Tense」が用意される。こちらは200psのガソリンターボを基本として前後輪に80kWのモーターをそれぞれ組み合わせる。このE-Tenseについては、プロトタイプに特設の周回路で乗ることができたが、その前に担当エンジニアから次のような説明があった。
「システムトータルの出力は300ps、CO2排出量は40g/kmです。充電時間は普通で4時間。急速で1時間40分。ZEV(ゼロエミッション)、HEV(ハイブリッド)、スポーツ、4WDの4つのドライブモードを用意しており、ZEVモードで50kmの走行が可能です。車両重量はガソリン車より250kg重くなっています」
ドライブした印象を簡単に記せば、300psという数字を実感するほど加速は強烈である一方、ZEVモードは当然ながら静かかつ滑らかであり、DS 7 クロスバックに新たな個性を与える存在ではないかと思えた。
1年に1車種、新型車がデビュー
最後に、DSブランドの今後についても言及した。
「2019年以降、1年に1車種の新型車をデビューさせ、2025年にはラインナップの35%を電動化していく予定です。内訳はSUVが3車種、残りが3車種となるでしょう」
既存のDSはシトロエンの販売店で扱うことも多かったが、DS 7 クロスバックについては日本でも設置が進む「DSストア」あるいは「DSサロン」のみでの販売となる。将来はすべてのDSが専門店での販売になる予定で、日本を含めてネットワークの整備が急務であることも付け加えていた。
※グレード名、エンジンラインアップ等は欧州仕様であり、日本仕様は未定。