【池原照雄の単眼複眼】EVが少ないとお思いでしょうが…トヨタの電動化“正直ビジョン”

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記者会見後に握手するトヨタ自動車の豊田社長とパナソニックの津賀社長
記者会見後に握手するトヨタ自動車の豊田社長とパナソニックの津賀社長 全 4 枚 拡大写真

実現性重視の慎重な姿を描く

トヨタ自動車が2017年暮れに、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など電動車の中期的な展開ビジョンを発表した。

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電動化のキーデバイスであるバッテリー(2次電池)でパナソニックとの事業戦略の合意を待ったこともあり、続々と計画を打ち上げる世界のライバル社には、遅れを取った公表となった。しかも、注目されやすいEVについての展開は、トヨタらしく慎重な姿を描いた。大向こうを唸らせるより、確実にやり遂げるという“正直ビジョン”なのである。

トヨタは12月13日に豊田章男社長がパナソニックの津賀一宏社長と共同で記者会見し、同社との車載用電池の協業強化の検討を発表。それを受けるかたちで、翌週の18日には寺師茂樹副社長が2030年に至るまでの電動車事業に関する記者会見を開き、以下の内容を骨子とする普及ビジョンなどを公表した。

トヨタの電動車普及ビジョン

◎2030年にグローバル販売の電動車を550万台以上(全販売の50%以上)とし、うち100万台以上をEVとFCV(燃料電池車)のゼロエミッション車に
◎2025年ごろまでにエンジン車のみの車種はゼロに
◎EVは2020年以降導入を加速し20年代前半にグローバルで10車種以上に。FCVも商品拡充
◎HVはハイパワー型や1モーターの簡易型など商品拡充。PHV(プラグインHV)は20年代に商品拡充

550万台は想像をはるかに超える異次元の世界

1997年に初代『プリウス』の量産販売を開始したトヨタは、言うまでもなくHVなどによる電動化の先駆者であり17年にグローバルで販売した電動車(HV、PHVおよびFCV)は約150万台で、同年までの累計販売は約1100万台に及ぶ。16年の統計だとグローバルで販売されたEVを含む電動車は約323万台であり、トヨタは4割強のシェアをもつトップメーカーだ。

今回公表した30年に550万台以上という電動車の数量は現状の3.7倍に相当する。18年を起点に10年余りをかけてというわけだから、ステディなプランに映る。さらに、EVに限定して見れば、25年までに「50車種以上」を投入し、「年300万台」の販売という腰だめ的な大計画を掲げるライバルの独VW(フォクスワーゲン)との差は余りにも大きい。

だが、寺師副社長は会見で、「電動車で年間550万台というのは、想像をはるかに超える異次元の世界であり、(実現には)異次元の構えが必要」と述べ、EVを含めていかにハードルが高いかを強調した。足元の年150万台という電動車販売は、初代プリウスの発売から20年をかけて到達したのであり、今度はその4倍近い数量を10年余りで目指すことにもなるからだ。

EVはプリウスの50倍もの電池を使う

電動化では、普及のキーデバイスである電池の量的確保や技術進化が最大の課題となっており、これは衆目の一致するところである。とりわけ大量の電池を必要とするEVについて、寺師氏は分かりやすい数字を引用していた。国産EVの代表選手である日産自動車の『リーフ』(=他社市販EVと表現)の電池容量は40kWhであり、最量販HVであるプリウス(0.75kWh)の「約50倍の容量が必要」というものだった。

EVにそれだけの電池を積んでも長い距離を走るのは苦手で、両者のフル充電あるいは燃料満タンからの航続距離には3倍ほどの開きがある。供給能力、性能(とくにエネルギー密度)、コスト、リチウムなどの資源確保やリサイクルといった電池に山積する難題は、そのままEV普及の課題でもあるのだ。トヨタは、パナソニックとの「車載用角形電池」を中心に協業拡大を進める一方、外部研究機関などと安全性能も高い「全固体電池」の開発にも注力し、20年代前半の実用化を目指している。

また、昨年9月にはEVの車体骨格など基盤技術開発のため、マツダ、デンソーとともに設立した「EV C.A.スピリット社」は、EV用の最適な電池を開発するうえでも重要なパートナーになる。寺師氏は、こうした電池を取り巻く開発が強化されたことについて、「すでに技術蓄積のあるモーター、インバーターに加え、電池という電動車のキーファクターのピースがすべて埋まった。『電池を制するものは電動車を制する』という態勢がようやく整った」と、新年からの攻勢を宣言する。豊田社長も年初、記者団の取材に「(電動車の)フルラインメーカーというトヨタの強みをより示していくのが今年の勝負どころ」と、電動化への注力を強調した。

EVの投入計画に関して見れば、VWとの彼我の差は余りにも大きい。だが、どちらが実現性の高いビジョンだったのか―大ざっぱな“腰だめビジョン”と、“正直ビジョン”のそれぞれの帰趨は、そう遠くないうちに見え始めてくるだろう。

《池原照雄》

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