【スズキ クロスビー 試乗】「大きなハスラー」を求めるユーザーがどれほどいるのか…中村孝仁

試乗記 国産車
スズキ クロスビー
スズキ クロスビー 全 14 枚 拡大写真

発表会の時にも社長自ら「ちゃんと名前があるのだから…」と、軽自動車『ハスラー』との差別化を盛んに訴えていたが、これ、どう見ても僕には大型ハスラーにしか見えない。

【画像全14枚】

ただ…である。それがちゃんと成立する商品としてしっかりした成り立ちさえ持っていればそれでよいわけで、その点『クロスビー』は立派に及第点を与えられる。そもそも似てるとか似てないという話は、受け手、即ちユーザー側が感じることであって、いくら送り手、つまりメーカー側が名前があるから違うクルマだと叫んだところで、否、似てるでしょ…と言われればそれまでの話だと思うから、この話はここで終わり。

それよりもスズキのデザイン陣が意識していたのは、ハスラーの時からハマーだったのではないかと感じる。ほぼ直立したウィンドーや、そもそもハスラー時代のエンブレムなんかもハマーを感じてしまうわけである。そして気に入っているのはあの重厚長大なハマーのデザインを、思いっきり軽く作り上げた点。これで気軽に使えるハマー風が完成した。各ウィンドーを立てたことで、室内空間はきわめて広く感じられる。それに視界が良い。フロントウィンドーがドライバー席の近くにあって、新しいクルマなのにレトロな雰囲気を醸し出しているところも(例えばVW『ビートル』やローバー『ミニ』のような)気に入っているポイントである。

そもそも、このクルマがクロスオーバーSUVでございます、と言われた時もえぇ~?という印象だったが、ハマーを念頭に置けばそれもそうだなという結論になる。そして何よりこのセグメントのライバル(そもそもライバルなんているのかと思うが)と比較した時も、どれにも似ていないという強みがあるようにも感じるわけである。

最近つくづく思うことは、自動車に求められているのは性能ではなくて、安全性だったり機能性だったりばかりなんじゃない?ということ。それが証拠というわけではないが、広報資料を見渡しても全20ページのうち動力性能に関する記述はたったの1ページだけ。あとは安心安全に5ページ、デザインと機能性及び空間に11ページといった具合である。

数少ない動力性能の話をすると、K10C型と称する1リットル3気筒ターボエンジンにISGを組み合わせたいわゆるマイルドハイブリッド。同じK10Cを搭載するモデルは『バレーノ』や『スイフト』などがあるが、ハイブリッド仕様になったのはこれが初めてのことである。従来の『ソリオ』や『イグニス』はNAのK12Cと組み合わされていたが、さすがにターボになると瞬発力が違う。いわゆるビュンビュン系と称しても良い軽快感に溢れ、パワーこそ低いのだがスイフトの走りを連想させる動きの良さを見せる。「ハーテクト」(スズキの新プラットフォーム)による直進性の良さも最近のスズキの特徴。まあ、この腰高なクルマをコーナーで攻めたところでナンボのもんじゃと思うから、一般ユーザーが使う走りの性能としては十分満足の行くレベルだと思う。

そもそもデザインなどは既に出尽くした感があって、何を見てもああ、あれね…という連想が付いて回る。インテリアもしかり。勿論それでいいと思う。ダッシュの丸パイプを基調に横方向のワイド感を強調したデザインは、初代フィアット『パンダ』を思い出した。センターに並ぶタンブラースイッチのデザインもミニなんかに一脈通じる。そしてメータークラスターに坂を上るクロスビーの姿があるのはまさに、ウィンドーやライトにそれと同じ姿を描いたジープそのものだ。でも、悪くない。それなりにクロスビーのデザインとして昇華されていると感じた。それに機能性が高い。例えばラゲッジスペースにはFF車の場合、ベラボーに深いアンダ―トレーがあって、何とベビーカーが縦に積めるという(このあたりに反応してしまう自分の環境が何とも情けない気もするが)。

問題は1リットルエンジンを積む小型車として、クロスビーに何を求めるかである。ハスラーで事足りるんじゃない?と思うユーザー以上に小型車が欲しいと思うユーザーがいない限り、このコンセプトはそのスタイリングからして成立しない。確かに冒頭に書いた通り単純に商品としては及第点なのだが、大きなハスラーを求めるユーザーがどれほどいるのか。そしてスズキがそこをどう見極めたのか、改めて聞いてみたい気もする。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 次期トヨタ『GRスープラ』はハンマーヘッド顔に!? 450ps級ハイブリッドで2027年登場の可能性
  2. ホンダ23車種、ガソリンが漏れるおそれ…6月掲載のリコール記事まとめ
  3. 初代ホンダ NSXベースのスーパーカー『Tensei(転生)』、北米販売体制が決定
  4. トヨタ『ライズ』次期型はRAV4デザインか⁉…6月のスクープ記事ベスト5
  5. ホンダ23車種・3364台をリコール 低圧燃料ポンプ交換作業に不備
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. ETASとエレクトロビット、ADAS向け統合ソフトウェア基盤を発表…人とくるまのテクノロジー展 2026
  2. ボッシュがなぜ「しろくまくん」を買収したのか? “熱とAI”が変える、SDV時代の勝算
  3. BMW工場にヒューマノイド「Figure 03」導入…フィジカルAIで全身協調制御
  4. BYD12万人の技術力と日本市場への本気度、補助金逆風下「ラッコ」の戦略とは…BYD Auto Japan 東福寺厚樹 代表取締役社長[インタビュー]
  5. バックミラーは「銀座4丁目」だった…電子ミラー最大手「ジェンテックス」が握る車内センシングの主導権
ランキングをもっと見る