バッテリージャパン(二次電池展)の会場内にジェイテクトのロゴを見つけた。バッテリーとはイメージが結び付かない気がするも、ブースに行ってみるとバッテリーセルらしきモノがある。
リチウムポリマーバッテリーにも似たモノの正体はリチウムイオンキャパシタ。ジェイテクトが独自開発した、これまでにないキャパシターだ。しかし、どうしてジェイテクトが自社開発したのだろう。
「最初はバッテリーやキャパシターのメーカーさんに相談したんですが、自動車メーカーの要求する温度帯が広すぎて、「そんなモノできる訳ない!」と相手にしてもらえなかったんですよ。そこでイチから自社で開発することになったんです」と説明員。
自動車メーカーが要求する温度帯は、マイナス40度からプラス85度という実に幅広いもの。厳寒地での使用やエンジンルーム内に置くことを考えれば、理解できる数字だがリチウムイオンバッテリーやリチウムイオンキャパシタの温度帯は、下はマイナス40度だが、上限は60度。一般的な電気二重層キャパシタでも65度までが作動を保証する温度だ。
ジェイテクトが自社開発してまでリチウムイオンキャパシタを開発したのは、EPSのポテンシャルを高めるためだった。従来のEPSは、もっとも軸力が大きいラックパラレル式でもトヨタ・ランドクルーザークラスの大型乗用車やアメリカンなSUTの据え切りには対応できない。どうして大型車のEPSが必要なのか、それはADASや自動運転のためにはEPS化しなくては不可能だからだ。
そこで、大きなモーターを採用したラックパラレル式を開発すると共に、補助電源としてキャパシタを搭載することを考えたのだ。
「一番負荷の大きい据え切り時には、12Vの車両電源に加えて、1つのセルで3Vの電圧をもつキャパシタを2つ使って18Vとして電流も増やすことで大きな軸力を発生させるシステムを開発しました」
それが、展示されていた大型モーターを搭載したラックパラレル式EPSとキャパシタ内蔵電源だったのだ。
しかも、このリチウムイオンキャパシタ、ムービーでは水が沸騰するビーカーの中に沈めても、安定して作動する。つまり100度までは耐熱性があるということだ。さすがに85度を超えると、電圧は若干落とす制限をしなければならないようだが、それでも凄い耐熱性だ。この温度までは断熱や冷却が不要、ということなのだから。
同社としては、ここまで良いモノが出来てしまった以上、EPSの補助電源だけに終わらせるつもりはないようだ。例えばこれは、回生充電に優れたマイルドハイブリッドの電源としても、最適なモノになりそうだ。現在は試作ラインのみだが、来年度中には量産ラインを稼働させる方針である。