独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は3月2日、札幌駅北海道新幹線ホームについての詳細な検討内容を公表した。
札幌駅(札幌市北区)の新幹線ホームは、2012年に現在の1・2番線ホームを転用する計画が認可されているが、JR北海道が在来線の運行に支障を来たすことを理由に、西案や地下案、東案(大東=おおひがし=案)といった代替案を提示するなどして、先行きが不透明な状況が続いていた。
このため、国土交通省(国)、鉄道・運輸機構、北海道、札幌市、JR北海道の5者は、ホーム位置を検討する「北海道新幹線建設促進北海道・札幌市調整会議」を非公開で開催してきた。
■差額負担があれば、大東案も視野に
2月9日に行なわれた会議では、1・2番線ホームを転用した場合の在来線への影響を抑える、いわゆる「認可見直し案」の検討結果が報告されているが、これによると、函館本線発寒中央駅(札幌市西区)に待避線を2線新設、信号設備を改良することで、1日約650本が発着している在来線列車の減少を1~10本程度にまで抑えることができるとしており、国と鉄道・運輸機構は「札幌駅の整備に関しては、認可案が成立することが確認された」としている。
工事費は、認可見直し案が約570億円、大東案が約940億円、地下案が約1600億円と試算されていたが、国と鉄道・運輸機構は「地域の活性化等の観点から、他の案が望ましいとして、認可案の工事費との差額を負担するのであれば、国及び鉄道・運輸機構としては、その案を採用することも可能と考える」としたため、JR北海道は差額を負担する意向を示している。
なお、地下案は認可見直し案と比較して3倍もの工事費を要することから、2月9日の段階では検討の対象から外されており、JR北海道が提示している大東案について、技術的な観点などからの精査を行ない、認可見直し案、大東案のいずれかの決定を、2017年度末までに行なうとした。
■大東案では新幹線・在来線ホームを跨線橋でつなぐ
その後、3月2日に行なわれた会議では、両案についての具体的な旅客利便性が検討されている。
これによると、認可見直し案では、西1丁目の再開発エリアに新幹線改札口を新設。在来線への乗換えは既存のコンコースを活用するとしている。
一方の大東案は、西側から入ってくる新幹線が、現在の1番線を通過し、東側のホームへ入る構造となっている。
認可見直し案が島式ホーム1面2線であるのに対して、大東案では相対式の2面2線となり、西1丁目の再開発エリアに新幹線改札口と在来線改札口を併設。新幹線用ホームと在来線ホームとの間には、乗換え跨線橋を新設するとしている。
この場合、既存コンコースを通らずに乗り換えることができるほか、新幹線の到着ホームと発車ホームを分離することができるという。
ただし、大東案では、新幹線構造物と立体駐車場の隔離問題、線路に付随する保守用・待避用通路の幅の問題、乗換え跨線橋や在来線連絡通路に関する構造の問題、乗換え跨線橋と在来線の既設架線ビームとの位置問題が孕んでおり、これらが技術的な検討課題に挙げられている。
■大東案に対し北海道知事は前向き、札幌市長は慎重姿勢か?
2月9日の検討結果は、内々に北海道や札幌市にも示されていた模様で、北海道の高橋はるみ知事は、2月21日に行なわれた記者会見で「どちらかというとやはり『東案その2』(注・大東案のこと)というのは私は個人的には良いかなと、記者会見の場で申し上げようかなと思いました」と述べており、大東案に対して好意的とも取れる発言をしている。
一方、札幌市の秋元克広市長は、2月15日に行なわれた記者会見で「認可計画ですと、ホームが手狭ですとか、改札を出た後、在来線の乗客と輻輳(ふくそう)するというような問題もあるというふうに伺っていますので、その辺のいいところ悪いところといいますか、長所、短所をきちんとお伺いした上で、またあらためて4者、5者で判断をしていくということになるのかなというふうに思います」と述べており、依然として慎重姿勢を崩していなかった。
ただ、札幌市の場合は、2026年の招致を目指している冬季オリンピックとの絡みで、札幌駅の拡充を図りたい意向もあるようで、JR北海道からは貴賓室を造るスペースを生み出せる大東案のよさをアピールされている模様だ。