【トヨタ ハイラックス 試乗】古臭さや乗り心地の悪さよりも、楽しさが上回る…内田俊一

試乗記 国産車
トヨタ ハイラックス
トヨタ ハイラックス 全 24 枚 拡大写真

トヨタ『ハイラックス』の名前を聞いて、懐かしく思う方も多いだろう。2004年まで日本で販売されていた、ピックアップトラックのハイラックスが復活した。筆者もその名を懐かしく思う一人なので、700kmほど試乗に引っ張り出してみた。

走り出す前に、簡単にスペックの復習をしておこう。搭載されるエンジンは2GD-FTVと呼ばれる2.4リットルターボディーゼルエンジンで、最高出力は150ps/3400rpm、最大トルクは400Nm/1600~2000rpm。そこに6速ATとパートタイム4WDが組み合わされる。

当時よりはるかに大きくなったボディは、アメリカやアジア圏への輸出を考慮され、サイズは全長5335mm、全幅1855mm、全幅1800mmと、特に全長の長さが際立っている。

なお、ハイラックスは1ナンバー登録である。

◆乗り味は昔のまま

サイドステップに足をかけ、Aピラーにあるアシストグリップをつかみながら、“よっこらしょ”とドライバーズシートによじ登ると、そこからの見晴らしは良好だ。スイッチ類も使いやすく、おおよそどこにあるかが直感的に判断出来る。エンジンをかけるべくスターターボタンを押すと、少し長めのクランキングの後、ガラガラガラとディーゼル特有の音とともに目覚めた。

ゆっくりと街中を走り始めると、懐かしさがこみあげてきた。その乗り味は『ハイラックスサーフ』とそっくりなのだ。もちろんそのころよりはるかにパワフルになり、音も静かになった。それでもステアリングを切ったフィーリングや、路面からの突き上げが腰に響くあたりは全く当時を連想させるものだった。

そんな郷愁は置いておいて、冷静に観察をしていくと、まずエンジンはトルクフルで十分使いやすく、シフトアップは2500rpmくらいでスムーズに変速される。ただし、シフトレバーが助手席寄りにあることは気に入らない。日本での年間販売台数は2000台と公表されているので、右ハンドル用に作りなおすコストを考えると躊躇することもわからないではない。しかし、生産拠点がどこであれ(ハイラックスはタイ生産)、あくまでも日本のトヨタを名乗るクルマであることを踏まえると、きちんと日本での使い勝手は重視してほしい。

◆全長は気をつけて

さて、前述したボディサイズだが、全長はさすがに気になるものの、車幅は意外につかみやすい。特にハイラックスの場合は左フェンダーにキノコ状の補助確認装置が備えられているので、それが車幅確認にも役立っているのだ。

その全長だが、前進する限りはバックミラーや後ろを振り返らない限り気にならない。しかし、駐車などの後退時は予想以上に長く感じる。特に狭いコインパーキングなどへの駐車では注意が必要だ。

乗り心地は決して良いとはいえないが、ピックアップトラックとしては上々の部類だ。ただし、シートの出来はあまりよくない。長く座ると座面形状が悪く、尾てい骨が痛くなり、さらに、腰回りのホールドもあまりよくないので、3時間ほど乗っていると腰もだるくなってしまった。

◆リニアで素直なドライビング

ワインディングを責めるようなクルマではないことはわかっているが、それでもちょっとしたキャンプやアウトドアレジャーで出かけることもあろうかと、伊豆の山間部を走らせてみた。街中でも感じたのだが、電動パワーステアリングやフライバイワイヤのアクセルなど電気仕掛けがあまり使われていないため、全ての運転感覚がリニアで素直なことだ。アクセルもブレーキもほぼ思った通りの制御が出来る。ただし、ブレーキに関しては2tという車重は十分考えておく必要はある。また、ステアリングはタイヤの影響もあり若干鈍い印象で、ステアリングを切ってからワンテンポ遅れてコーナリングを開始するイメージであった。

高速道路での乗り心地も街中と大差なく、突き上げ感はあるが、100km/hで1500rpmを少し切るくらいの回転なのでエンジン音がそれほど高まることはないことから、快適といえば快適であった。また、比較的ロードノイズも、風切り音も大きくはない。

さらに、高い全高が大きなメリットとなり、見晴らしが良く非常に運転はしやすい。ハンドリングは 少し鈍いことを除けば、直進安定性も良く、横風もそれほど影響は受けなかった。

最後に燃費だが、一般道や市街地では10km/リットル程度、高速では15km/リットルを記録。渋滞するとアイドルストップ等がないことから悪化しがちだが、流れればたちまち回復するので、効率のいいエンジンといえよう。

ジャーナリスティックな視点で見ると、古臭さや乗り心地の悪さなど欠点を挙げることはたやすい。しかし、このクルマに乗っていると、実際には行けなくても、荷台を使ってどこかへ出かけたくなる、そういう気持ちにさせてくれるのだ。クルマにとって必要なワクワク感や楽しさ、保有することで夢を広げてくれる、そういう要素をこのハイラックスは持ち合わせていた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

内田俊一(うちだしゅんいち)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラと同じくルノー10。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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