トータルデザインの動物園列車がついに「終着」…『旭山動物園号』が11年の歴史に幕

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ラストラン前日の3月24日、旭川行き下り列車の通過時に札幌市内の豊平川河川敷で行なわれた見送りイベント。橋梁を渡る『旭山動物園号』の先頭車は「草原のサバンナ号」。
ラストラン前日の3月24日、旭川行き下り列車の通過時に札幌市内の豊平川河川敷で行なわれた見送りイベント。橋梁を渡る『旭山動物園号』の先頭車は「草原のサバンナ号」。 全 8 枚 拡大写真

およそ11年間、旭川市旭山動物園(旭山動物園)へのアクセス列車として、札幌~旭川間で運行されてきたJR北海道の『旭山動物園号』が、3月25日を最後に運行を終了した。

■動物をテーマにした派手な内外装で人気を博した11年

『旭山動物園号』は、旭山動物園のブレイクとJR北海道の発足20周年にちなんで、2007年4月28日から運行を開始した。

1981年製のキハ183系特急型気動車4両に、元旭山動物園の飼育員で絵本作家のあべ弘士氏がデザインした、ホッキョクグマ、ライオン、チンパンジー、ペンギンのペインティングを施した4色のカラフルな列車として登場。2008年4月28日の運行からは、オオカミのペインティング車も加わった5両編成となった。

車内には、座席に動物のぬいぐるみを置いた「ハグハグチェア」と呼ばれる記念撮影スペースや、子供たちが遊ぶことができるフリースペース、授乳室などを設置。座席に動物のイラストを描いたカバーを付けて「どうぶつシート」にするなど、あべ氏がトータルで動物園列車のムードを高めるデザインを施し、人気を集めていた。その結果、乗車人員は運行開始から2年あまりで10万人を達成。そのさらに2年後には20万人を達成している。

こうした人気を受けて、2013年には内外装ともに「動物のすみか」をテーマに、「草原のサバンナ号」「熱帯のジャングル号」「北海道の大地号」「鳥たちの大空号」「極寒の銀世界号」の5両編成にリニューアルし、同年7月13日から運行されているが、これがキハ183系『旭山動物園号』最後の姿となった。

昨年は、キハ183系の老朽化が深刻化したため、7月1日から札幌~旭川間の特急『ライラック』で運用している789系電車0番台による『ライラック旭山動物園号』の運行を開始した。これにより、キハ183系の『旭山動物園号』は本来の運用から外れ、富良野方面への臨時特急に使われることが多くなっていた。

今年に入ってからは、3月4日にツアー列車として運行され、3月24・25日に一般営業列車としてのラストラン運行を迎えていた。

■スラントノーズのキハ183形は2両が保存の運びに

営業列車としてのラストランとなった3月25日は、旭川駅で札幌行き上り列車発車の際に、旭山動物園の園長を迎えての出発式が開催されたが、札幌市内では、3月24日に通過する旭川行き下り列車を見送るイベントが豊平川河川敷で開催された。

このイベントに参加した、札幌市白石区で古書店を営む小林望さんは、数人の子供たちが列車に向かって熱心にお別れの旗を振っているシーンを見ながら「見送りの子供たちの記憶の中で、いきいきと走り続けてくれるよう願ってやみません」と話していた。

『旭山動物園号』の運行終了により、初期型のキハ183系は札幌・旭川~網走間の特急『オホーツク』『大雪』で6月頃まで残るキロハ182形を除いて、すべて引退した。

初期型キハ183系を象徴していた「スラントノーズ」と呼ばれる先頭車・キハ183形も姿を消したが、今年1月1日から開始されたキハ183形を安平(あびら)町で保存するためのインターネット募金(クラウドファンディング)は順調に資金調達が進み、1月29日には早くも当初目標の610万円に到達。さらにもう1両を保存するための1100万円も3月20日に到達しており、事実上、2両が保存される運びとなった。

さらに「キハ183」に掛けた1830万円を目標に3月30日まで募金が続けられており、3月26日時点で1189万5000円が集まっている。

小林さんもこの報に「183系初期車(スラントノーズ)は、古き佳き国鉄車両を引退に追い込む損な役回りから、一転して新型車両に追われる立場となりましたが、国鉄末期からJR初期の近代化を牽引した存在として、後世に残るのは鉄道ファンとしても嬉しく、末永く保存されることを望みます」と話し、喜びを噛みしめていた。

なお、『旭山動物園号』のキハ183系は、3月31日に旭川駅で最後のお披露目が行なわれることになっており、このための回送列車の運行が最後の本線走行となる見込みだ。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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