音楽は何で聴く? ソースユニット大研究…クラリオン・システム

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クラリオン Full Digital Sound
クラリオン Full Digital Sound 全 1 枚 拡大写真

クルマの中で音楽を楽しもうとするときの、“音楽再生機器”について考察している当短期集中連載。その最終回となる当回では、『クラリオン・システム』について考えていく。「クラリオン」は他社にはない特別なシステムを持っている。そしてその“ソースユニット”とは…。

■「“デジタル信号”のままでスピーカーを駆動できる」ことの“凄さ”とは…。

「クラリオン」ならではの特別なカーオーディオシステムというのはズバリ、『Full Digital Sound(以下、FDS)』である。

まずは、これが何であるのか、できるだけ簡単に説明してみたい。

通常のオーディオシステムは、CDなどに収録されたデジタルデータを、システムの中でアナログ信号に変換する。そうしないことには、スピーカーを駆動できないからだ。

しかしながら「クラリオン」の『FDS』では、音楽信号がデジタル信号のままスピーカーに送られ、アナログ信号に変換せずともスピーカーを駆動できる。そこが最大の特長だ。

ただ、そう言われても“凄さ”が伝わりにくいかもしれないので、もう1歩踏み込んで解説する。

ところでスピーカーは、実に“ローテク”な工業製品である。発明された約100年前から現在に至るまで、基本的な仕組みがほとんど変わっていないのだ。磁気回路に電気を送り、“フレミングの左手の法則”に従って電気信号を動きに変え、スピーカーの振動板を動かし空気を震わせて音を伝える。メカニズム自体は、至ってシンプルなのである。

なお、スピーカーで履行されている工程は、音を録音するときの工程の真逆の工程である。マイクが音(空気の振動)を拾ってそれを電気信号に変えるという作業の逆工程を踏むことで、電気信号を動きへと戻していくのである。言うなれば、例えば食品を“凍らせて”、“解凍する”ことと似ている。“凍らせる”ことと“解凍する”ことも、真逆の工程だ。

しかしながら、凍らせたものを解凍しようとしたときに、そのモノが別の何かに変わっていたらは、解凍したときに元通りには戻らない。音でも同様だ。凍らせて出来上がったものは“アナログ信号”だ。しかしそれが“デジタル信号”に置き換わったままでは、元通りに解凍できないのである。ところが『FDS』では、スピーカーに送り込まれる信号がデジタルのままであっても、振動板を駆動できるメカニズムを持っている。不可能が可能になったのだ。そこに“凄さ”の真髄があるのだ。

■“フルデジタル”を実現できたことで、さまざまなメリットが発生!

不可能が可能になったことで、『FDS』では以下のようなメリットがもたらされることと相成った。音質面では、「デジタル信号をアナログに戻すという工程が不要となり、当工程における信号の劣化があり得なくなったこと」、「デジタル信号はアナログ信号に比べて、伝送中にノイズの影響を受けにくいこと」などがメリットだ。

音以外では以下のような利点が得られる。「パワーアンプを必要としないので、外部パワーアンプを用いるシステムと比べて省電力であること」、「パワーアンプを設置する必要がないので省スペースであること」などだ。

さて、話を“ソースユニット”に戻したい。『FDS』は“フルシステム”であるのだが、システム中に敢えて“ソースユニット”を持っていない。“ソースユニット”を持たないことも、特長の1つとしているのである。

もしも“ソースユニット”も含めた“フルシステム”であったなら、メインユニット交換が前提となる。しかし『FDS』は“ソースユニット”を持たないことで、その前提から解き放たれることができている。

そして、自身に“ソースユニット”がない代わりに、さまざまな“ソースユニット”と連携できるようになっている。ハイレベルインプット、RCA入力、そしてデジタル入力も3系統備えられている(コアキシャル、オプティカル、USB)。ここまで多彩に入力端子が備えられているユニットは少ない。“ソースユニット”は持っていないが、むしろ楽しみ方の幅は広い、というわけなのだ。

■クラリオンのAVナビゲーション『NXV977D』を組み合わせると、利点がさらに伸長する。

といいつつも、『FDS』には1つ、組み合わせるべきベストな“ソースユニット”が存在している。それは、同社からリリースされているAV一体型カーナビゲーション、『NXV977D』である。当機は、9型という大画面を利して、表示を4分割できるというスペシャルな特長を携えている。しかも、表示方法を自在に、スムーズに切り替え可能で、画面は高画質。

その上で『FDS』と組み合わせるとさらなる利点も発揮する。利点は2つある。1つは、音楽信号をデジタルのまま『FDS』に送り込めること、もう1つは『FDS』のコマンダーとしても機能すること。結果、オール車載機での、“ハイレゾ音源”までもを再生可能な“完全デジタルシステム”が完成でき、それをスムーズにコントロールできるようになる。『NXV977D』を組み合わせることで『FDS』のメリットがさらに伸長する、というわけなのだ。

なお、『NXV977D』は現在、デジタル出力を有する国内唯一のAV一体型カーナビゲーションである。“ハイレゾ音源”を再生可能なAV一体型ナビは増えてきたが、それをデジタルのまま出力できるのは、当機だけなのだ。

この特長が活きてくるのは、ハイエンドカーオーディオシステムを構築している場合だ。ハイエンドシステムにおいては、高度な“DSP”を用いることが一般的になっている。“DSP”を用いて信号をデジタル制御すると、クルマ特有の音響的な不利を克服できるからだ。そして高度な“DSP”では、音楽信号をデジタルのままで取り込んだほうが合理的に信号制御を実行できる。であるので、“ハイレゾ音源”もデジタルのままで取り込みたいのだが…。

しかしながら、『NXV977D』の登場以前には、それを行える車載機が存在していなかった。なので『FDS』においても、“DAP”が多用されているのだが、“DAP”を使うと高音質は得られやすくなるものの、操作性に関しては難点が出てくる。車載機ではないので、運転中の操作がしにくいのだ。

しかし『NXV977D』を使えば、“ハイレゾ音源”もハイクオリティにハイエンドシステムに取り込め、しかも操作性が落ちない。『NXV977D』は上級システムにおける“ソースユニット”としても、独特の存在感を発揮しているのだ。

『NXV977D』も『FDS』も、これならではの特長が際立ったユニットであり、システムだ。先進のカーオーディオシステムを組もうと思ったら、これらに注目して損はない。

さて、これまで計9回にわたり“ソースユニット”についてあれこれと考察してきたが、参考にしていただけただろうか。今や、クルマの中で音楽を聴くための“再生機器”は、さまざまなものが選択可能だ。機能面、操作面、予算面、システム発展性等々、さまざまなファクターを考慮して、自分にとってベストな“ソースユニット”を選び出していただきたい。“ソースユニット”を見直すことで、カーオーディオライフがさらに快適化する可能性は、十二分にある。

音楽は何で聴く? “ソースユニット”大研究! 第9回『クラリオン・システム』編

《太田祥三》

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