ドゥカティ パニガーレーV4、クランク逆回転と不等間隔爆発のヒミツとは

モーターサイクル 新型車
ドゥカティ パニガーレーV4
ドゥカティ パニガーレーV4 全 17 枚 拡大写真

ドゥカティ『パニガーレーV4』は、4気筒エンジンを搭載する史上初の量産型ドゥカティ。「デスモセディチ・ストラダーレ」と呼ばれる強力パワーユニットは、モトGPマシン用のエンジンから直接派生したもので、最高出力214馬力を発揮する。パワー/ウェイトレシオは、1.1ps/kgという驚異的な数値だ。

また、車体の動きを検知するIMU(イナーシャル・メジャーメント・ユニット)は6軸対応の最新式で、最新世代のエレクトロニクス・パッケージとなっている。

注目は「カウンター・ローテーティング(逆回転)・クランクシャフト」だ。エンジン・クランクシャフトの回転が進行方向ではなく、リヤホイールに向かって逆回転しているのだ。

『パニガーレーV4』の日本での発売のタイミングに合わせ、ドゥカティジャパンが5月28日に都内にて開いた「メディアワークショップ」。車体については、同社アフターセールス・ダイレクター森 大樹夫氏によって詳しく説明された。

◆クランクシャフトの回転が逆…!? その理由は

クランクシャフトが進行方向に回転することによるジャイロ効果が、車体の安定性を生み出すと考えられてきましたが、そのメリットを捨ててでも、重量による慣性でライダーが制御できない領域を少なくしようという新しい考え方、それが「カウンター・ローテーティング(逆回転)・クランクシャフト」です。

機械工学的に言えば、エンジンは前進方向に回転させた方が効率が良いのは間違いありません。というのは、モーターサイクルのトランスミッションはクランクケースの中に収まっていて、クランクシャフト、トランスミッション2本、合計3本の軸で回っていますから、クランクシャフトが前転すればドライブスプロケットが付いているトランスミッションも前転するので、構成的にいちばんシンプルに軽く小さくできます。

しかし、アイドラギヤというものをひとつ間に入れることで、逆回転するクランクシャフトの駆動力を最終的にはトランスミッションのカウンターシャフトに至るまでに前進回転に転換しました。

アイドラギヤを入れることで若干の出力損失があるのですが、それよりもライダーがよりアクセルを早く、よりワイドに開けられるというメリットが得られます。ドゥカティの場合、2015年からモトGPマシンで逆回転クランクを使っていまして、それと同じものが今回の「デスモセディチ・ストラダーレ」エンジンに採用されたのです。

◆70度のクランクピンオフセットでトラクション増大

クランクシャフトが70度の位相で一体化されています。90度ではない、180度ではない、70度位相で結合されていることで、結果的に点火タイミングが0度、90度、290度、380度、最終的に720度に戻ってくるという不等間隔な爆発となり、よりリヤタイヤにトラクションのかかるエンジンの特性を生み出すことを実現しました。

その結果、V4エンジンでありながらエキゾーストマフラーから聞こえるサウンドは、2気筒のパニガーレに乗っている錯覚を起こすようなものになっています。

等間隔で爆発しているエンジンよりもダイナミックな、ライダーが生き物を、馬を走らせるような言葉に置き換えることもありますけれども、そういった感覚が得られるのです。

◆公道のためにストロークを伸ばし、排気量は1103ccに

エンジンが車体の構成部品として重要な役割を果たしています。42度後方にエンジンを回転させて搭載することで、エンジンの重い部分がフロントホイールに近づいて、前輪タイヤに対する荷重を上げることを実現しました。また高出力のオートバイなので、スイングアームを長くし、トラクションをより安定して発揮させています。

ドゥカティはずっとL型、つまり90度のシリンダー挟み角というレイアウトを続けていて、それは4気筒になっても変わりません。90度にするメリットは、物理的に1次振動をキャンセルすることができるので、バランサーシャフトといった余分なものを省くことができます。

レーシングエンジン直系ということで、4気筒といいながら実際のエンジンのコンパクトさは、従来の2気筒と比較しても全長と全高に関してはよりコンパクトになっていて、重量はわずか2.2kg増に過ぎません。

ボア×ストロークは81mm×53.5mm。81mmのボア径は、1000ccのデスモセディチGPエンジンと同じサイズです。そして、ストリートバイクとして必要なエンジンキャラクターを実現するために、ストロークが53.5mmに伸ばされ、排気量を1103ccとしています。

◆もの凄い速いエンジンだが、扱いやすい

「バリアブル・インテーク(可変吸気)システム(VIS)」は、Vバンクの真ん中にサーボモーターを置いて、そこにスライドレールを入れることによってファンネルの位置がコンピュータのアルゴリズムによって上下動します。インジェクターはツイン、トップフィードとローフィードの2つがあり、必要な馬力とエンジン回転数に応じて燃料の噴射する量をコンピュータが調整していくのです。

馬力を安定させて発生させるという目的のために、燃料の回路はフロントバンクとリアバンク独立させてポンプで圧送させて、それぞれの回路にはポンピングによる脈動を抑えるためのフューエルプレッシャーダンパーという小さな部品を取り付けていて、馬力があってもの凄い速いエンジンなんですが、ライダーが予測しながら運転できる、より滑らかな性格を機械的な構造をもって実現しています。

◆日本へのデリバリー開始!

『パニガーレーV4』のデスモセディチ・ストラダーレ・エンジンは、こうしたハイパフォーマンスを実現しつつ、ユーザーのランニングコストも配慮したことで長いメインテナンスサイクルをも達成。バルブクリアランスの点検・調整は2万4000km毎に設定している。

究極のスーパースポーツを、ついに我々が一般公道やサーキットで楽しめてしまうのだ。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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