【ブリヂストン POTENZA S007A 試乗】ハイパワー化する車にどう立ち向かうか?ブリヂストンが出した答えとは…斎藤聡が試乗

試乗記 国産車
ブリヂストン POTENZA S007A 試乗会
ブリヂストン POTENZA S007A 試乗会 全 18 枚 拡大写真

◆世界的ハイパフォーマンスカーを唸らせた、あのポテンザS001が進化を遂げた
クルマの高性能化に伴って、タイヤも高性能化、大径化が進んできた。2007年には16、17インチが主流だったタイヤが、2017年からは18インチ以上に主流が変わっている。車両重量も増し、パワーはさらにハイパワー化している。ポテンザS007Aはそんな背景から生まれたプレミアム・スポーツタイヤだ。

先代モデルとなるS001から8年振りのフルモデルチェンジとなるポテンザS007A。S001と比べ、ドライ性能をさらに進化させながら優れたウェット性能は維持している、というのが特徴だ。

◆細部にまでハイパフォーマンス性を高めるための工夫がされたトレッドデザイン
トレッドデザインは縦溝主体のリブデザインで、4本の太い縦溝と、3本の太いリブ(ブロック列)、剛性の高そうな左右のショルダーブロックという構成。世界的なプレミアム・ハイパフォーマンスタイヤのトレンドに乗ったデザインとなっている。そういう意味では一見するとよく見るデザインに見えなくもないが、溝深さとリブの深さを工夫してリブ剛性を高めたり、センターリブに横溝を付けないことでパターン剛性も高めている。さらにリブのエッジ部分の角を丸めることで、リブの接地面圧を均一化したマルチラウンドブロックを採用するなど、細部にまでハイパフォーマンス性を高めるための工夫がなされている。

トレッドデザインばかりでなく、ケース設計も一新している。タイヤの断面形状であるタイヤプロファイルは、S001はフラットなスクエアなプロファイルだったが、S007Aは丸みを帯びたラウンドプロファイルを採用。センターリブに接地圧をかけ、しっかり仕事をさせるプロファイルとなっている。またそのためのワイドリブデザインでもある。

タイヤのタガの役割を果たすキャッププライには、高剛性ハンドリングシートと呼ばれるベルトを採用。これはナイロンとアラミドを縒って作られたもので、低中速域での柔軟性と高速域での剛性の両立を図ったもの。またビード部には、アラミド性の補強シートを巻くことで、横剛性とねじり剛性を強化。コンパウンドは、グリップ性能と耐摩耗性を高めるため高分子量ポリマー(≒ゴム)と磨耗力向上剤を駆使した専用コンパウンドを開発。コンフォート系のタイヤとは一線を画する高剛性設計となっている。

◆路面の様子を正確に伝えてくれる手応え明瞭な感覚
試乗した印象は、しっかりダンピングが効いた張りのあるプレミアム・スポーツタイヤだと感じた。乗り心地は硬さがあって、剛性の高さを感じる。ただし尖った鋭い突き上げはなく、角の丸まったマイルドなもの。しかもダンピング(縦バネ)が効いているので、振動が尾を引かずスーッと収まってくれるので歯切れのよい乗り味になっている。

ハンドルの手応えからするとセンターリブがしっかり路面に押し付けられており、路面の様子を正確に伝えてくれる。手応えが明瞭で微舵応答を良くしている。

平らな接地面を持つS001は、直進付近の手応えが毎々で、ハンドルを切り出すと、わりと唐突に曲がる力で立ち上がる感触があったが、S007Aは連続した操舵感が得られているのでスムーズに旋回に入ることができる。またそれがクルマの動きを滑らかにするので、ジェントルな身のこなしを作り出してもくれる。

高速道路100km/hくらいの巡航だと、低速で感じたケースの硬い感触がスッと消えて、路面からのショックがマイルドな心地良い乗り心地となる。と同時に、レーンチェンジではリヤタイヤの応答の良さが表れており、これが落ち着きのある安定感にもつながっている。設計の意図通り、S007Aはプレミアムセダン(サルーン)向けのプレミアムタイヤに仕上がっていると思う。

◆先代とは明らかに違う旋回スピード
ウェットは、S001と同等ということであったが、ウェットハンドリング路を走ると、グリップ性能は明らかにS007Aのほうが優れていた。S001はやや接地感が薄く、手応えも少なめ。ただし限界がそれほど高く無い分、滑り脱しも穏やかでコントロールはしやすい。ただリアルワールドでは滑りやすいこと自体が不安要素ではある。

一方S007Aは、ゴムを強く路面に押し付けて作り出す粘着系のグリップ感が何割か混ざっており、独特の安心感があるのが印象的だった。グリップの絶対値自体もいくらかS007Aのほうが高いようで、旋回スピードにも差が表れている。ただし、ピークグリップが高い分、滑り出しは相応に速いので、その点は多少注意が必要かもしれない。

というわけでウェット性能も同等という説明だったが実際に試乗してみるとS007Aのほうがウェット路面での走りやすさは格上だった。

まとめると、S007Aのキーポイントとなっているのはラウンドプロファイルだろうと思う。別に特別は形状というわけではないが、ラウンドプロファイルを起点にして操縦性や乗り心地を作り出している。センターリブにしっかり接地面圧がかかるように設計し、リブ剛性を高めることで初期応答性を良くしている。また高剛性ケースにすることで正確度の高い操縦性を作り出している。ポテンザの名前をかざすのにふさわしい操縦性のいいタイヤを作るため、トレッドデザイン、ケース設計ともに細部に至るまで力を入れて作り込まれたのがポテンザS007Aといいうわけだ。
斎藤聡氏(ブリヂストン  POTENZA S007A 試乗会)

斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

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