「3輪ブームの予感」ヤマハの牙城崩すか、ADIVA本格参入…その実力は

モーターサイクル 新型車
ADIVA(アディバ)の3輪モビリティ「AD1 200」
ADIVA(アディバ)の3輪モビリティ「AD1 200」 全 36 枚 拡大写真

◆トリシティが広げた3輪の魅力

【画像全36枚】

最近3輪バイクが盛り上がってきている。その証拠に街でも3輪バイクをよく見かけるようになってきた。ここで言う3輪とは、前輪に2つのホイールを持ち、傾いてコーナリングするタイプだ。以前から3輪タイプが無かった訳ではないが、これを一気にブームへと押し上げた立役者は間違いなくヤマハの『トリシティ』シリーズだろう。

LMW(リーニング・マルチ・ホイール)と名付けられた新時代のモビリティとして『トリシティ125』が登場したのが2014年。フロント2輪による圧倒的な安心感により、今まで2輪を敬遠していた層にも受け入れられ3輪スクーターとしての地位を確立。続く2017年には『トリシティ155』がリリースされ、高速道路を使ったロングライドにも対応するパワーと装備でさらにファン層を拡大した。
ヤマハのLMW「トリシティ」
ヤマハでは今後は大型スポーツモデルのセグメントにもLMWを投入する予定で、その第一弾として『NIKEN(ナイケン)』がすでに欧州ではデビューしている。というように3輪バイク市場は今後ますます盛り上がっていく予感アリなのだ。

そして、ヤマハの独壇場にも見えた3輪バイク市場に割って入りそうな勢いを感じさせるのが今回紹介するイタリア製の3輪スクーター「ADIVA(アディバ)」である。以前からマイナーながら少数が輸入されていたが、今春から本社を日本に構えることになり本格的な国内投入に期待が寄せられている。東京・赤坂にあるADIVA本社を訪れてみた。

◆最新型は200ccのフロント2輪タイプ
右のモデルは元祖屋根付きスクーターの「ベネリ・アディバ」
ADIVAのストーリーは、イタリア人の若き発明家であり創業者のニコラ・ポッジオ氏の夢から始まった。それはバイクの楽しさと手軽さ、クルマの安全性と快適性を併せ持った、天候に左右されることがないモビリティの開発だった。

同氏は90年代初頭にそのコンセプトを着想し、2001年にボディ各部のパーツを必要に応じて脱着可能な「モジュラープロテクションシステム」を採用した全天候型2輪スクーターをベネリと共同開発。その後、開閉式ルーフの採用やリヤ2輪の3輪スクーターなどを経て、現在のフロント2輪タイプの3輪スクーターを主力とするラインナップを展開している。

日本に導入されている現行モデルとしては、水冷4サイクル単気筒190ccエンジンを搭載する『AD1 200』と、同じく400ccエンジン搭載の『AD3 400』があるが、今回は特にアジア向けに開発されたというコンパクトサイズの最新モデル、AD1にフォーカスしてみた。

◆ハンドリングはFFの4輪的
特徴的な前2輪。乗り味はクルマに近い
ADIVAがユニークなのは発想の原点が「バイクではない」ことだ。例えば前述のトリシティは前輪のサスペンションが片持ちテレスコピック方式で、シート下をトランクルームとして活用するなど、外観も含めて2輪メーカーらしいプロダクトになっている。対するADIVAの場合、フロント懸架部分は4輪のダブルウィッシュボーンから着想を得た独自の機構が採用されている。

「インディペンデント・クワトロ・ウィッシュボーン・サスペンション」と呼ばれるもので、前から見るとまさに4輪のスポーツカーのような構造。操舵系と緩衝装置がそれぞれ独立していて、4輪と同じように制動時にピッチングモーションが少ないのが特徴だ。

コーナリング時は通常の2輪のように車体を傾けて曲がっていくし、そこに段差があれば左右の車輪がそれぞれ別々に路面の凹凸をトレースしていくのはトリシティと同じだが、そのフィーリングはだいぶ異なる。排気量の違いもあるが、車重もあるのでAD1のほうがドッシリとしたハンドリングだ。コーナー進入でもフロントがあまり沈み込まないし、フロントブレーキをけっこう強くかけたままでも曲がっていける。トリシティの2輪的な軽快さに比べると、ややフロントが重く4輪のFF車のような感じかも。その分、安定感はバツグンなのだが、切り替えしなどではやはりルーフやトランクの影響でトップヘビーな感じは否めない。Uターンなども旋回半径は大きめだ。
脱着可能なルーフがADIVAの特徴だ
また、ルーフもしっかりした頑丈な作りで、フロントスクリーンにはなんとウインドウォッシャー液も出てくる本格的なワイパーが2本も装備されている。そして、晴れた日には簡単に取り外せるルーフを折り畳んで後方のトランクルームに収納すればオープントップに早変わり。一方でシート下にはほとんど小物ぐらいしか入らないが、その代わりシート高を下げて乗り降りしやすさのメリットを優先している。荷物を積みたければ半端なことせずに大容量トランクへどっさり入れてくれ、と言わんばかりだ。

つまり、ADIVAは元から3輪バイクではなく、便利で楽しく実用的な「モビリティ」を作りたいという発想から生まれている。そのコンセプトを追求した結果がこのカタチだったというわけだ。

もうひとつのトピックとしては、エンジンにプジョー製ユニットが使われていることだろう。

エンジンカバーには「プジョー」のライオンマークが誇らしげに刻まれている。プジョーと言えばフランスの4輪メーカーとして有名だが、実は現存する世界最古の2輪メーカーであることはあまり知られていない。

資料によれば、最初のモーターサイクルが1898年パリ・モーターショーで発表されたというからから驚きだ。ADIVAも以前は台湾のキムコ製エンジンが使われていたが、現行モデルにはプジョー製が搭載されている。最高出力14kW(19ps)の水冷ユニットは低中速トルクを生かした重厚な加速感が魅力で、パリッとした鼓動感とともに存在を主張するサウンドが心地よい。

◆人々の熱い視線を感じる優越感

現在のADIVAはまさに多国籍企業だ。前述のように本社機能は日本に置きながら、デザイン開発は創業以来のイタリアで行い、プジョーからエンジンの供給を受けて生産は台湾その他のアジア各国で行っている。日本のヘッドクォーターで品質管理を行うことで“ジャパンクオリティ”を徹底させるのが狙いだ。

ブランド物のスーツを着てビジネス街を颯爽と走る姿も絵になる、ハイセンスなデザインと上質感漂うディテールも大きな魅力。街行く人々が振り返って熱い眼差しを向けてくる優越感はADIVAならではだろう。洒落心が分かっている大人にぜひおすすめしたい都市型モビリティだ。

ADIVA(アディバ)の3輪モビリティ「AD1 200」(左)とヤマハのLMW「トリシティ」(右)

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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