【トヨタ クラウン 試乗】デザインは女性に歩み寄ってくれたのに…岩貞るみこ

試乗記 国産車
トヨタ クラウン 新型
トヨタ クラウン 新型 全 8 枚 拡大写真

『クラウン』は、男性イメージである。おそらくこれまで、これっぽっちも女性なんてイメージせずに車両づくりも宣伝もしてきたと思われ(していたとしても、微塵も感じられず)、クラウンと言われても相手にされていない身としては、なんだかなあな状況が続いていた。

しかし、今回はちょっと違う。このデザイン。これならちょっと乗ってもいいかも?と、わずかながらに期待がふくらむのだ。

今まで「走りによってキャラ分け」していたグレード展開も廃止し、モード切り替えスイッチで対応したあたりも、すっきりする。心の奥に澱のようにたまっていた「どんだけ男性の好みを細分化して対応しているのよ」という、相手にされてこなかったひがみが洗い流された気分だ。

走りに重点を置き、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットを走りこんで磨かれたという乗り心地は、納得である。走りの良さは、気合などいれずに低速でふわーんとした気分で走っているときにも十分に感じられる。

ハイブリッドはモーターとの組み合わせで、走り出しが軽快なのはもちろんだが、顕著なのは足のよさ。カーブを曲がりながら、右側のタイヤだけ凸凹のある路面を走るときによくわかるのだが、サスペンションがしなやかに動いて衝撃を吸収し、シートまで伝わってこない。いや、多少は伝わるものの、頭がゆらされることがなく視点がぶれにくいのである。これは、乗りやすい。

ただ、残念なのは、インテリアである。

1)サイドミラーが合わせにくい
ドラポジをとった位置から、私の体格では、サイドミラーのスイッチに手が届かず、ミラーを見ながらの調整ができない。

2)ドリンクホルダーの「ふた」が重い
ふた状になった部分を押し込んで使うのだが、これがとんでもなく重い。手で押し込むときは、手首を痛めそうなくらい重いし、ペットボトルで押し込もうものなら、ペットボトルを握りつぶしそうだ(い〇はす、とか柔らかいヤツね)。これ、本気で女性に乗ってほしいとはとても思えない。やはりクラウンは、男性ユーザーしか眼中にないのか……。

3)カーナビの二画面化の意味がない
画面が二つあるものの、同じものしか表示できない。多少、見やすくなる反面、操作性が最悪で、運転中の作業量を増やしてどうすると画面をたたき割りたくなる。よくこれで、天下のトヨタが販売の許可を出したものだと思う。

せっかくデザインが女性に歩み寄ってくれたというのに、ちょっとがっかり。クラウンの購買層女性は、これまでの大和なでしこがよしとされていた方々から、バブル時期に青春を謳歌していた超肉食女子世代に移り変わりつつある。ゆえに、評価基準がすごく我儘で厳しいことをお忘れなく。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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