非公開ボートレーサー養成所に中高生が潜入、超過酷で繊細な世界を体感

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ボートレーサー養成所 入所試験体験セミナー(福岡県柳川市大和町、7月20日)
ボートレーサー養成所 入所試験体験セミナー(福岡県柳川市大和町、7月20日) 全 24 枚 拡大写真
「15歳未経験から目指せるプロアスリート、なんて他にあるか?」「平均年収1600万円」「スポーツで食っていく」---そんな言葉が踊る資料を手に、27人の中学生や高校生たちが、学科試験や技能測定、レース用ボート試乗に挑んだ。

福岡県柳川市大和町。おだやかな有明湾をのぞむ干拓地に、凄まじいエンジン音がとどろく。ここは日本モーターボート競走会のボートレーサー養成所。プロのボートレーサーが必ず入所する最初の関門だ。

ここで7月20日、ボートレーサー養成所 入所試験体験セミナーが開かれ、27人の中学生・高校生らが集結。関東地方からかけつけた人もいた。彼らは、学科試験や体力テスト、ペアボート試乗などを半日かけて体験していった。

「ボートレーサーへの道は、野球やサッカーなど、ほかのスポーツに比べ、広く開かれている。チャレンジできる基本的な条件、15歳以上30歳未満、身長175センチ以下などさえクリアしていれば、経験不問。学歴、職歴も関係ない。もちろん、女性も平等にチャレンジできる」(日本モーターボート競走会)


この日、27人のボートレーサー志願者(セミナー受講者)のなかには、5人の女子の姿もあった。彼女たちは、男子たちにまじり、握力や垂直跳び、上体そらしなどの数字を測っていく。

測定員は、「本番では、いい結果が出るように、がんばってください」と伝えながら、試験通過のコツを伝授。将来のボートレーサーたちは真剣にそのアドバイスを聞き「ありがとうございました!」と礼して次へ移っていく。会場(体育館)の壁には、「礼と節」という笹川良一の書……。

試験体験会場には、地元福岡出身の小野真歩選手(登録番号4770)や、羽野直也選手(4831)がかけつけ、将来のボートレーサーにこうアドバイス。


「いま思い返せば、充実した1年間だったと思います。きついこともありましたけど、同期のみんなと過ごす毎日のなかで、訓練のぜんぶが楽しかったと思います」(小野選手)

「養成所時代にいっしょに過ごした同期たちが、いま強くなってる。1年間は正直、辛かった。楽しい記憶といえば、2時間だけの休み時間。お菓子を食べるときが至福のひとときでした。それ以外は、自分の時間がない。でも、遊びにきているわけじゃないから。覚悟してほしい」(羽野選手)

また、セミナー受講者たちから「動体視力を鍛えるためには?」と聞かれ、羽野選手は「まず目をいろいろ動かすこと。指を目で追いかけるトレーニングをやるだけでぜんぜん違う。日常ではたとえば、電車に乗ったら、車窓を通り過ぎる数字をパッと読み取るような習慣をつける。日ごろから意識してみて」と伝えていた。


午前の後半は、全寮制のボートレーサー養成所の施設を見てまわる。中央フロアには、フジKBモーターや、キヌタモーター、ケーニッヒモーター、ヤマト60型モーターなど歴代のエンジンがずらり。

中学生や高校生は、こうした歴代エンジンには目もくれず、1年間共同生活をおくる風呂場や相部屋、洗濯室などを興味深くみていく。そこへ、「失礼します!」と汗びっしょりの養成員たちが、セミナー受講者たちの脇を小走りですり抜ける。

丸坊主の男子養成員、ショートカットの女子養成員が、午前の訓練を終えて汗を拭きながら食堂へと入っていく。そんな養成員たちの過酷そうな動きを目の当たりにしながら、同じ食事を体感する。

気になったのは、養成員のほとんどが、白米を少し残している点。「体力的に厳しい現場が重なるけど、減量や体重調整などで、食事を制限する養成員もいる」と同所スタッフは教えてくれた。


午後は、処置判断、運動調整力、手腕、動体視力の各4検査を体験。処置判断検査は、ハンドルをにぎりながら、指定通りに左右へ舵を切る基礎力が問われる。

指示通りにハンドルが切れないと、ブーッとブザーが鳴る。長年ハンドルをにぎるクルマ好きの記者も、ブーッ、ブブーッが鳴りっぱなし。セミナー受講者の中高生たちに笑われるレベルだった。

こうした機材を使う試験を体験したあと、彼らはいよいよ水辺へと移る。ボートレース用のモーターボートは、重量約120kg、総排気量約400cc水冷2サイクルエンジンを積み、最高速度80km/hに達する小型軽量高速マシン。そんな高速ボートにいよいよ試乗する時間がやってきた。

酷暑のなか防水スーツを着させられ、クラっとするほど過酷な環境なのだが、なぜかセミナー受講者たちの顔には笑みがこぼれている。

ペアボート試乗は、現役選手が操船。その前に立ち、未体験の水上格闘技を体感する。


将来のボートレーサーを期待される、5人の女子たちは、陸へ上がって汗を吹きながら笑顔。女子たちは福岡や兵庫、京都のほか、東京からも。東京の2人は、大学4年生で「たまたまここで出会った」という。

どちらもスポーツ女子で、ホッケーや野球を大学で経験。「親がボートレース好きで、小学生のころからボートレース選手になりたいと思っていた」「小柄な身長を活かして稼げる仕事ならば、ボートレーサーがいいと思って受講」などと話していた。

また、京都からの20歳の女子は、「もともと小さいころから空手で鍛えていた。空手の先輩がプロのボートレーサーに転向して、わたしも挑戦したくなった。命にかかわるレース、観客がお金をかけてみてくれるレース、そこに挑戦したくなった」と語っていた。


彼らがボートレーサー養成所に入所すると、3か月の基礎訓練、判別試験や能力別訓練、進級試験、選手招聘訓練、修了試験などの技術応用練習、資格検定試験などを経て修了記念競走で門出。B2級(平均年収500万円)でプロデビューする。日本モーターボート競走会は、彼らにこんなメッセージを投げかける。

「プロのボートレーサーの平均年収は1600万円。トップレーサーになると2億円。ボートレーサー養成所の入所試験は、1周1マーク。いまこそが、人生のターニングポイントだ」

次回のボートレーサー入所試験体験セミナーは、8月17日開催。インターネット公式ページなどで募集している。

《大野雅人》

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