【スバル フォレスター 新型試乗】エンジンはかなり頑張ったe-BOXER…齋藤聡

試乗記 国産車
スバル・フォレスター新型
スバル・フォレスター新型 全 16 枚 拡大写真

5代目となる新型『フォレスター』が発売された。クロスオーバーSUVの先駆けとして登場したフォレスターのデビューは1997年だから、だいぶ昔の話。当時は乗用車でもなくSUVでもない新しいカテゴリーのクルマだったので、このクルマをどう評価したらいいのだろう? という気分もなくはなかったのだが、『レガシィ』、『インプレッサ』に続くスバル渾身の新型車であり、なにより4WDによる圧倒的な走破性と、乗用車感覚で乗れる運転のしやすさが大きな説得力を持っていた。わりとすんなりユーザーに受け入れられ、すぐに人気を博したのを覚えている。

あれから20年。いまや世界的なコンパクトSUVブームであり、フォレスターはその真っただ中でモデルチェンジを迎えたというわけだ。

より滑らかな走行が可能に

スバルは、2025年まで見据えて開発した世界に通用するプラットフォーム(≒骨格のベース)であるスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)を2016年に発表して、まずはインプレッサに採用。続いて『XV』に使い、フォレスターが第3弾となる。

先代フォレスターは「実証、全方位SUV」がキャッチフレーズで、ちょうどSUVの形をしながらFFといった車もたくさん出てきたこのカテゴリーに、“スバルはSUVの性能で勝負します”と宣戦布告したクルマだった。

5代目となる新型は「Trust in FORESTER」~どこにでも行ける、どんな場所にでも行ける~というのが開発のベースになっているのだそうだ。

搭載するエンジンは水平対向4気筒で、2.5リットル直噴ガソリンと2.0リットル直噴ガソリン+モーターのe-BOXER(ハイブリッド)。いずれもCVTが組み合わされている。駆動方式はもちろん4WDだ。ちなみに最低地上高は220mmで、先代を踏襲。4WDの走破性にこだわるスバルのこだわりでもある。

エンジンについては、基本的には先代からのキャリーオーバーだが、2.5Lはオイルポンプの静粛性を高めたり、フロントデフの形状を変更してオイルの攪拌抵抗を低減を図った。さらにトルクコンバーター・ダンパーのバネを柔軟にして、より滑らかな走行が可能になるよう工夫するなど、快適性向上に力を入れている。加えてCVTチェーンをよりピッチの細かいものにし変速比を大きくできようにすることで、エンジンを効率よく使えるようにするなど、走行性能の面でも改善が図られている。

ハイブリッドも、システム、カタログ上のモーター出力(10kw/65Nm)共にXVと同じだが、リチウムイオンバッテリーに換えたことで電圧が100.8Vから118.4Vに上がっており、実際には出力も若干アップしているという。

タイヤの接地性の良さはSGPの美点

まず試乗したのは2.0Lのハイブリッドエンジンを搭載するe-BOXERから。

その乗り味は一言でいって俊敏。軽やかというよりもキレのいい身のこなしといったほうが近いと思う。大げさに言うとクルマが曲がろうと身構えている感じで、ハンドルを切り出した瞬間「待ってました!」 とばかりにクルマが曲がり出す。過剰ではないけれど、印象的な操縦感覚だ。

新しいプラットフォームとそのポテンシャルを引き出すハンドリングチューンで、新生フォレスターの新しい乗り味と言われればなるほど、と納得できる。ただ、これまでフォレスターに乗ってきたユーザーが買い替えようと思って乗ったら、ちょっと違和感があるかもしれない。

この操縦性については、ブレーキを左右輪個別にかけることで旋回性を高めるアクティブ・トルク・ベクタリングも影響しているのだろうと思う。とくに一度ハンドルを切って素早く少し戻し、さらに切り足す操作をした時、かなり鋭くノーズがインを向こうとする動きが出る。

この手のデバイスは曲がらないクルマを曲げるようにするときに有効だが、オンロードで走る限りあまり必要性を感じない。旋回中のイン側のタイヤの接地感がしっかりと伝わり、4つのタイヤが効率よく仕事をしているのがわかるからだ。

それこそがアクティブ・トルク・ベクタリングの効果だというのであれば仕方ないが、新型プラットフォームであるSGPを使ったインプレッサにしても、XVにしても、やはり同様にイン側のタイヤをしっかり使って曲がっている感覚があり、操縦性の良さ、タイヤの接地性の良さはこのプラットフォームの生まれながらの美点であると思う。まあ、これがフォレスターの新しい操縦性だといわれれば、それはそれでよいのだが、個人的にはもう少し落ち着いた操縦性のほうが好みだ。

2.5L並の力強い加速感

エンジンはどうかというと、これはかなり頑張ったと思う。カタログ上のスペックはほぼ同じだが、バッテリーがニッケル水素からリチウムイオンに変わったことで、公称電圧が100.8Vから118.4Vに上がりバッテリー容量も554Whから568Whへ若干上がっている。その結果、実際にはモーター出力もわずかだが上がっているのだという。

このバッテリー+モーターユニットをより引き出すためSI-Driveの特性も変更されている。Sモードのアクセルを踏み込んだ瞬間のモータートルクの立ち上がりが強く出るようにマッピングされていて、2.5L並の力強い加速感が得られるようになっている。

実感できるのはカーブからの立ち上がりでの力強さ。上り坂だったりするとさらに力強さがわかりやすい。アクセルを踏み込んだ瞬間ググッと出てくるモーターならではの力感がクルマを軽々と加速させてくれる。高速道路で80km/hからさらに加速しようとすると、低中速域の力感と比べやや物足りない印象が出てきてしまうが、それでも実用加速は十分。

居並ぶライバルに囲まれながらモデルチェンジしたフォレスターだが、スタイリッシュ…とは思わないけれど、タフネスなSUVのたたずまいと、俊敏な操縦性と、違和感の少ないハイブリッドの走りが印象的だった。

齋藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

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