公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は8月2日、「超電導き電システム」による送電試験を国内で初めて実施したことを明らかにした。
電車や電気機関車など、走行に電気を必要とする車両へ電力を供給することを「き電」、架線へ電力を送る電線のことを「き電線」と呼ばれる。
現在、き電線には銅線またはアルミ線が使われているが、これらは送電の際の電気抵抗によって電気エネルギーが失なわれる特性がある。国土交通省が定める「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」では、そのことを考慮して「電車線の電圧は、列車の適正な運行を確保するため十分な値に保たれなければならない」と規定しており、き電方式が直流1500Vの場合は最低電圧を1000Vに維持する必要がある。
そのため直流電化の場合は、電圧維持のために変電所の数を増やす必要があったが、超電導き電システムでは、ある種の金属や合金の温度を非常に低い温度まで下げると電気抵抗がゼロになるという「超電導」現象を応用したケーブルを使用することで、き電における電気エネルギーの損失を抑制。変電所問題の解決を期待できるという。
JR東日本の協力により行なわれた今回の試験では、超電導き電システムを日野土木実験所(東京都日野市)に設置。中央本線の日野変電所から豊田方面へ延びる、およそ408mの既設き電線に、液体窒素を冷媒とする冷却機構により超電導状態を保持した超電導き電ケーブルを接続した。
終電後、豊田車両センター(東京都日野市)に留置している10両編成のE233系10本へ送電したところ、送電システムの起点と終点の電圧がほぼ一致し、従来のき電で見られた9.41Vの電圧降下を0.02V以下まで抑制、電力損失量が約7kW減少したことが確認されたという。
この試験を受けて鉄道総研では、実用化に向けた取組みとして、試験列車による走行試験や超電導き電システムの延長、き電ケーブルの超電導状態を維持するための冷却能力向上を図りたいとしている。