レストアはお客様の要望に応える…アストンマーティンワークスが日本展開[インタビュー]

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アストンマーティン DB6 Mk2ヴォランテ
アストンマーティン DB6 Mk2ヴォランテ 全 8 枚 拡大写真

アストンマーティンジャパンは、ヘリテージカーの祭典であるオートモビルカウンシル2018に出展。最新モデル『DBSスーパーレッジェーラ』とともに、本国のアストンマーティンワークスでフルレストアされた『DB6 Mk2ヴォランテ』を展示した。

今後は日本市場でもヘリテージカーに力を入れるということで、ワークスから担当者が来日。そこで現在の活動状況等の話を聞いた。

■オリジナルにこだわりつつ、お客様の要望にも応える

----:105年もの歴史を持つアストンマーティンですから、当然のことながら過去の名車たちをメンテナンスする部署があります。それがアストンマーティンワークスで、今回日本でも更なる活動を推し進めるそうですね。そこで、まずは本国での活動状況を簡単に教えてください。

アストンマーティンワークスヘリテージディレクターのジュリアン・レン氏(以下敬称略):はい、いまお話があった通り、我々のクルマのレストアとともに一般的な修理受付がメインとなっています。

----:では、具体的なレストア作業に関してはどこまで行ってもらえ、また、その基本はどういうものなのしょう。

レン:基本はオリジナルに戻すことです。シャーシなどにたとえ手が加えられていたとしても元の状態に戻すということがレストアについての考え方です。

一方、お客様の要望で、何かしら特別にコンバージョンしたいということがあれば、できる限りお応えするようにしています。例えばオートマチックをマニュアルトランスミッションに変更をしたいなどの要望があればお応えします。そのうえで、我々とお客様の双方で所有する、レストレーションに関する全てを網羅したファイルにそのことを記載し残すようにしています。

つまり、その資料を見れば、それ以降のお客様がそのクルマを購入したとしても、レストアのときにコンバージョンしたものがどういうものだったのかが一目瞭然にわかるようになっているのです。

そうすることで、何がオリジナルで何がノンオリジナルかということがわかり、次のユーザーが再びオリジナルに戻したいときに、どこに手を加えればいいかが明確にわかるようになっているのです。

■新たに作ることも……。

----:では、少し極端な例を挙げさせてください。現在『DB4GT』を所有しているユーザーが、アストンマーティンワークスに持ち込んで『DB4GTザガート』を作ってほしいという要望があったとすると、それは叶えられるのでしょうか。

レン:とても難しい質問です(笑)。DB4GTをDB4GTザガートにすることは多分ワークスではできません。その理由はザガードとの契約関係があるからです。ただし、技術的にはレプリカとして作るということはできます。

例えば現在我々は、『DB4GTコンティニュエーション』という復刻版のようなクルマを作っています。DB4GTは本来100台作られる予定で計画されていましたが、諸々の条件から、結果として75台でストップしてしまったのです。そこで現在再び残りの25台の生産が始まったのです。

----:なぜいま、再びこのDB4GTをコンティニュエーションとして作ったのですか。

レン:ひとつは復刻版として25台生産し予定通り100台で完成させたかったということです。また、現在我々にはそれが実現できる資金があるからです。まさに経済的な理由でもあるのです。

■戦前車も受け入れ可能

----:レストアに関しては戦前車も可能でしょうか。

レン:ワークスでは歴代のDBシリーズのレストアは非常に多いですが、戦前車もケースバイケースではありますが請け負っています。

----:戦前車のフレームナンバーやエンジンナンバー、出荷状況などのレジストレーションデータは所有されていますか。

レン:全てはないもののいくつかのクルマについては所有しおり、ある程度はわかります。100年以上の歴史がありますのでその間に生産された全てのクルマの記録を把握するのはなかなか難しいですね。

我々の工場も戦後、ニューポートパグネルに移転するなどがあり、そこできちんと引き継がれているかどうかということもありますから。

■ディーラーで受け入れ、その後ワークスと相談

----:さて、日本でのアストンマーティンワークスの活動についてお尋ねします。現在はどのような状況なのでしょう。

レン:現在日本のディーラーは新車だけではなくヘリテージの問い合わせがあったときに、ヘリテージのクルマの販売も可能になっています。これはワークスとディーラーとの連携によって購入後のサービスや販売のプロセスも含め、全て協力して行うという体制が確立されているということです。

当然売って終わりということはなく、販売した後が重要です。販売後のオーナーシップを最大限楽しんでもらえるようなサービスを提供していきたいと考えていますし、アストンマーティンの特別なクラブに入会したような気分になってもらえるようなサービスを提供していきたいですね。

----:現在アストンマーティンのヘリテージ車両を所有している人が、修理をしたいと思ったときにはそれぞれのディーラーへ行けばいいのでしょうか。そしてそこからディーラーとワークスとの間で部品やノウハウを享受ながら修理、あるいはレストアを進めていくのでしょうか。

レン:そうです。ただし方法に関してはそれぞれのクルマやお客様の要望によって変わってくるでしょう。モデルによってスペシャリストが変わってきますので、ディーラーとワークスの間で相談をして、どういう方法がベストかを話し合い、場合によってはワークスからテクニシャンを日本へ派遣し修理をするか、あるいはクルマを送り返して修理をするのかなどケースバイケースで対応していきます。

『DB7』であれば日本のディーラーのテクニシャンの中に経験者はいますので、部品を本国から取り寄せることで日本でも修理ができるかもしれません。しかしDB6以前のクルマの場合はワークスから派遣するか、送り返すかということになると思います。

実は先ほどヘリテージオーナーが来場し、クルマをレストアしてほしいという要望がありました。その方と様々な面について相談をしながら、日本にワークスからテクニシャンを派遣し、ディーラーと連携しながら進める方法も提案したのですが、お客様の要望はワークスに送り返して、そこでレストアをしてほしいというこだわりを持っていました。このように様々なこだわりがありますので、お客様とひとつひとつ相談しながら、その要望にお応えしていきます。

また、クルマの価値という意味では、レストアが終わった後で、アストンマーティンワークスのスタンプがサービスブックに押されます。そうするとアストンマーティンお墨付きのサービスを受けたクルマということにもなりますので、それ相応の価値につながるとも思います。

----:今後、アストンマーティンワークスとしてはどのような活動や展開を考えていますか。

レン:基本的に我々が対象にするアストンマーティンはおよそ1万3100台のヘリテージカーです。具体的にはゲンドンで生産される前、つまり、『DB9』以前のクルマたちです。そのクルマたちを流通させてビジネスとして続けていく。そうすることで、現存率95%を維持しつつ、お客様たちのアストンマーティンライフを楽しんでもらえる環境作りをしていきます。その結果我々のビジネスも成り立っていくと考えています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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