【メルセデスベンツ CLS 新型試乗】メルセデスの技術革新は留まるところを知らない…中村孝仁

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ CLS450 4マチック
メルセデスベンツ CLS450 4マチック 全 20 枚 拡大写真

これ以上ないほどスムーズな直6


エンジンのスターターボタンを押すと、シュルン…と反響の大きなはずの地下駐車場でも、まるで周囲に音をまき散らさずに、楚々としたしとやかさを持ってエンジンがかかる。このところ、エンジンをかけると、これでもかと言わんばかりにファンファーレでも鳴らすようなクルマが多い中で、これは一服の清涼剤だ。

エンジンの成り立ちは、M256直6ユニットに、ツインスクロールターボと48VのISGを組み合わせたもので、すでに『Sクラス』でも体験済みだが、今回はその良さをさらに体感しようと、あらゆる感覚を研ぎ澄ませて試乗してみた。

直6のエンジンフィールはやはり格別である。元々最高のバランスを持つエンジン形式であるために、極めてスムーズで、この点は乗り比べてみなくてもV6より優れていることはすぐにわかる。

長く直6が市場から消えていた(BMWは例外)理由は、エンジンの長さが安全面で不利になることによるもので、今回メルセデスが採用したM256は、補器類を回すベルトがすべて排除され、電動化を実現したからエンジン長をぐっと抑えられ、元々吸気と排気をエンジン左右で分けられるために、排ガス処理にも有利ということで、復活してきたものだ。

そして、元々バランスが良くてスムーズなエンジンを、ISGによって始動時にもさらにスムーズさを加えているため、内燃機関でこれ以上スムーズな成り立ちのエンジンは考えられないと言っても過言でないほど、スムーズになっているのである。

イタ車のようなハイセンスなスタイリング


アイドリングストップも、エンジン停止は停車の直前。そして始動はブレーキを離した瞬間に行われるのだが、ISGの助けがあって見事なほどスムーズな再スタートを実現している。とまあ、メカニズム的には前出のSクラスと同じだから、CLSで語るべきは、本来新しいデザイン言語によって作られたというそのエクステリアデザインなのかもしれない。

今回で3代目となったCLSは、そのクーペ風デザインの4ドアセダンの先駆けともいえるモデルで、フォーマルなセダンをいかにパーソナルに使えるかを追求したモデルである。3代目はフロントがリバーススラントしたデザインが特徴で、その角度は5度。空力の影響からか、リバーススラントは長く消えていたが、再びこのスタイルも復活しそうだ。

フォルム全体も均整がとれていて、後ろから見るとまるでイタ車でも見ている感覚に陥るほどドイツ車にして珍しいハイセンスなスタイリングを持っている(個人的主観)。

新FRプラットフォームの恩恵


過去2世代と構造的に大きく異なるのは、従来はその時代の『Eクラス』とプラットフォームをシェアしていたが、新たにMRAと名付けられたFR用プラットフォームに一本化されているため、Eクラスのみならず、Sクラスやさらに『Cクラス』もこのMRAを使うことになる。というわけでメルセデスはFR用とFWD用、それに『Gクラス』のようないくつかの例外的モデルを除けば、パッセンジャーモデルのプラットフォームはこの二つに一本化されていくことになる、というわけだ。

高速の料金所から、軽く右足に力を込めてみる。直進安定性も、落ち着いた車両の挙動も申し分ない。抜群の加速性能を味わったところで、すぐにACCをセット。あとは半自動で、ドライバーはいわゆる監視役に徹していれば、クルマは何事もないかのように、前の車にピタリと追従してくれる。前車のブレーキに対する対応も過去乗ったどのメーカーのクルマよりも優れており、渋滞最後尾に付くときなども、最後はちゃんとブレーキを抜きながら停車してくれる実力は、他では味わえない。

また、エアボディコントロールを装備する足回りは、ダンパーを瞬時に微調整して乗り心地を確保してくれるシステムだが、こいつが上手く機能しているようで、外乱に対しても実にうまく制御してくれる。

エアコンが快適なことは当たり前だが、静粛性、スムーズさ、乗り心地、さらには居住空間の快適性まで含め、このところメルセデスの技術革新は留まるところを知らない。ただし、FRもしくはAWD車に今のところ限定しておきたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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