水素ロータリーは凍結、EVは3種類となる…マツダ技術説明会詳細

マツダのいうマルチxEVとは?

BEVは独自開発車を2020年に投入

EV化は3つのプラットフォームで臨む

マツダコネクトはライドシェアによるつながりも実現

G-Vectering ContolはEVとの相性もよい

REレンジエクステンダーを搭載したデミオBEV(2013年、マツダ技術説明会)
REレンジエクステンダーを搭載したデミオBEV(2013年、マツダ技術説明会)全 9 枚

マツダは10月2日、関係者や報道陣向けに技術説明会を開催した。技術関連の説明ながら丸本明CEO、藤原清志代表取締役副社長が直接語るというものだった。断片的には既報がでているが、マツダの包括的な戦略をみる上で重要な発言もあった。

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マツダは、世界屈指の内燃機関技術を持っていながら、昨今の電動化ブーム、脱ディーゼルブームによって、非常に微妙な市場ポジションでグローバルでのプレゼンスを発揮する必要に迫られている。難しいかじ取りになるはずだが、その戦略の方向性について発表内容から探ってみたい。

マツダのいうマルチxEVとは?

自動車メーカーの戦略を考える上で、現在避けて通れないのは電動化を含む次世代パワートレインの議論だ。マツダはWell to Wheel(燃料採掘から車両走行まで)の考え方でCO2削減に臨む。2030年には企業平均でCO2の排出量を50%削減(2010年比)し、2050年までには90%削減(同前)するという。
丸本明社長兼CEO丸本明社長兼CEO
内燃機関だけではこの目標は不可能にもみえるが、丸本CEOは2030年にはマツダのすべてのクルマをxEV化(EV、PHEV、HV、FCVの総称)するという。うち95%は内燃機関を伴う電動化車両で、残りの5%をEV(バッテリーEV:BEV)とする。内燃機関を伴う電動化車両については、ロータリーエンジンをベースにした、シリーズハイブリッド、PHEV、レンジエクステンダーで対応する。マツダでは、この3つのパワートレイン構成を「マルチxEV」と呼んでいる。

パラレルハイブリッドを除外した場合、コンパクトでモーターと同軸上に配置しやすいロータリーエンジンはレシプロエンジンより有利だ。加えて、静粛性、低振動性は、レンジエクステンダーとしてもベストなエンジンとなる。シリーズハイブリッドからレンジエクステンダーまで、エンジン、バッテリー、燃料タンクのサイズ、容量を最適に組み合わせる。

さらに、ロータリーエンジンは燃料も選ばない。水素、LPG、CNG、ガソリンと、国や地域の法規制、資源、発電事情に応じて燃料を切り替えることができる。マルチxEVのマルチのもうひとつの意味だ。
藤原清志代表取締役副社長執行役員藤原清志代表取締役副社長執行役員
ただし、藤原副社長によれば「マツダは水素ロータリーの開発は凍結している。Well to Wheelで考えたとき、水素生成や水素供給インフラの劇的な変化がないかぎり、燃料電池は水素生成の段階でトータルのCO2削減とならない。水素はカーボンフリーではない」からだと説明する。

BEVは独自開発車を2020年に投入

BEVについての言及もあった。前述のようにマツダは2030年の時点でもBEV(バッテリーEV、ピュアEV)は生産量の5%程度を見込んでいる。この5%にはBEVとレンジエクステンダーも含まれるそうだが、内訳までは公表しなかった。製品を出さないうちには予測する数字は持っていても公にはできないのだろう。

マツダはBEVをどのように開発するのだろうか。トヨタ、スバル、スズキ、ダイハツ、デンソーらとのアライアンスであるEV C.A.Spiritが進めているEV基盤のEVになるのだろうか。EV C.A.Spritでは、2020年までに共通基盤技術の開発を完了させ、各社の商品開発が始まるとしている。しかし、マツダは最初に市場投入されるBEVは、マツダが独自に開発、商品化を進めているもので、2020年をメドに発売を計画しているという。
2020年には独自開発のBEVを投入2020年には独自開発のBEVを投入
マツダはロータリーエンジンを搭載したレンジエクステンダー車両(デミオ)を2013年に発表している。これに搭載されたエンジンは330ccという小型のもの。ボンネット内にはモーター、インバーター、制御装置、そしてEVとして普通に走行できるバッテリーも搭載されたもの。このときからEV開発をしていたとすれば、2020年独自開発のEVの市場投入は不思議ではない。

EV化は3つのプラットフォームで臨む

おそらく、マツダのBEVとレンジエクステンダーの違いは発電機の有無だけで、設計や構造は同じEVをベースとするものと思われる。

技術説明会では、じつはもうひとつのEVについても言及された。それは中国市場向けのEVだ。マツダは中国でのNEV規制、法規の元では、自社の技術は使えないと判断している。これは、マツダのEVでは中国NEV規制をクリアできないということではない。調達部品の規制や外資規制によって、独自技術と独自コンポーネントのBEVが現地で売ることができないからだ。マツダの中国EV戦略は、現地企業との合弁という形になり、EVコンポーネントも中国企業のものがメインとなる可能性が高い。
REレンジエクステンダーREレンジエクステンダー
マツダは、独自開発のBEV、それにレンジエクステンダーを搭載したEV、中国で作るEVの3種類になると考えられる。なお、EV C.A.Spritでは商品化のための基盤技術開発は行うが、その成果となる技術を使ったEVを生産するかどうかは現時点では未定とのことだ(マツダ広報)。

マツダコネクトはライドシェアによるつながりも実現

コネクテッド戦略について、マツダコネクトの各サービスや機能は従来どおりだという。インフォテインメントサービスや走行データ・車両データの分析基盤、それを車両開発やカスタマーサポートに生かすしくみは変えず、進化させていく方針だ。

技術説明会で強調されたのは、オンラインでもオフラインでも人のつながりを考えたコネクティビティという点だ。具体的には、シェアリングによる地域交通や交通弱者を考えたコネクテッドカーだ。10月から広島県でライドシェアの実証実験を始めるといい、単なるIVIや車両サポートだけのコネクテッドとしないことを差別化ポイントとしていく。

CSRとしては意義は高いが、ビジネスとしてどうなのだろうかという疑問も湧く。これからの地域社会を考えると、ライドシェアや配車ロジスティクス向けのコネクテッド機能のニーズは高まる可能性はある。また、新興国での同様なニーズにも応えられるかもしれない。

じつは新しいマツダコネクトは、トヨタのT-Connectの基盤を利用しているマツダ独自のテレマティクスサービスだ。今後もこの関係は維持されるが、インフラはトヨタでも実装されるサービスや機能はマツダ独自のものだ。ユーザーから見れば、マツダのコネクテッドサービスにしか見えないもので、クラウドリソースにT-Connectの基盤が利用されているだけだ。トヨタのモビリティ構想でも、プラットフォームを解放するだけで、パートナーにT-Connectのサービス、アカウントを強制的に利用させるものではない。

G-Vectering ContolはEVとの相性もよい

マツダのロータリーエンジンへのこだわりは健在である。SKYACTIVについても、さらに熱効率を改善させるGen2(第2世代)の開発も続けているといい、ディーゼルのGen2も出る(藤原副社長)と明言した。逆風が吹くヨーロッパでもウィーンの学会では、多くの研究者がディーゼルエンジンに関する発表を行っていたそうだ。
マツダの技術ロードマップマツダの技術ロードマップ
その一方で、EV開発、レンジエクステンダー、中国を含むグローバルを考えた戦略を考えている。質疑応答でもなかなか明確な答えてくれなかったものもあるが、プランがあるがゆえにまだ発表できない明言できないという状況であると信じたい。その中、ロータリーレンジエクステンダーは、いかにもマツダらしいEVとなりえるもので、グローバルでも付加価値が高いクルマになりそうだ。

とくにG-Vectering Contol(GVC)は、EVではアクセルオフの回生時にもベクタリング制御が可能だという。デミオクラスのコンパクトなEVに専用のGVCが加わるなら、加速性能やワインディングでの走行を想像するだけでワクワクする。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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