【ボルボ V90クロスカントリー 試乗】乗り味、存在感、使い勝手、味わい深いボルボだ…中村孝仁

スタイルに活きる新プラットフォームの恩恵

「退屈なボルボ」はもういない

味わい深いクロスカントリー

ボルボ V90クロスカントリー
ボルボ V90クロスカントリー全 20 枚

スタイルに活きる新プラットフォームの恩恵

ボルボのフラッグシップモデル「90シリーズ」には、セダン、ワゴン、SUV、それにワゴンとSUVを融合させたような「クロスカントリー」と多彩に揃う。今回試乗したのは、その最後の『V90クロスカントリー』で、新たに追加設定されたディーゼルユニットを搭載するモデルである。

この90シリーズ以降、ボルボは新時代に突入し、すべてのプラットフォームを新しくした。即ち、90シリーズと、その下に位置する「60シリーズ」にはSPAと呼ばれる大型用プラットフォーム。そしてコンパクトな「40シリーズ」用としては、CMAと呼ばれる小型専用のプラットフォームを新規開発し、順次投入している。90シリーズに関してはラインナップが出揃っているが、60シリーズや40シリーズについては、今後まだ展開が続く。これまで登場したすべてのクルマは、非常に好評を持って市場に迎えられている。だから今後出てくるであろうボルボ各モデルは、注目度が高いというわけだ。
ボルボ V90クロスカントリーボルボ V90クロスカントリー
良くなった、あるいは好評である大きな理由は、まずはスタイル。新たなデザイン・ランゲージで作られたモデル群は、どれも非常にスタイリッシュである。特にAピラーの付け根からフロントアクスル中心までの距離を伸ばして、FWD(前輪駆動車)でありながら、それを感じさせないデザインが大きな特徴で、同時にこれはプラットフォーム側の特徴ともなっている。エンジンはすべて直列4気筒の2リットル。この部分は少々面白みに欠けるのだが、ボルボのスケール感からすれば、それでよいのかもしれない。

「退屈なボルボ」はもういない

かつてボルボは「ボーリングカー」、即ち「退屈なクルマ」と言う良からぬレッテルを貼られた時代もあった。それは運動性能が凡庸で、乗っていても楽しくない、ハンドリングが面白くない等々から来たもので、主としてその発端となったのはイギリス市場である。しかし、それも新たなSPAは解消してくれた。というよりも、それを解消してさらにボルボらしい独特な乗り味を作り上げたと言っても良いと思う。それは、一言で言ってしまうと「許容」あるいは「寛容」という言葉で代弁できる気がする。

運動性能にまつわる諸性能を高めていくと、どうしてもクルマは鋭さを増して、ミスが許されない神経質なクルマになりがち。最近は安全デバイスが発達して、そうしたヒューマンエラーに対しても対応してくれるようになったが、それでもそうしたクルマに乗ると、どうしてもドライバーは気を張って乗らざるを得ない。その点ボルボは、その部分が実にマイルドに仕上がっている。
ボルボ V90クロスカントリーボルボ V90クロスカントリー
勿論、今は参戦していないが、かつてはツーリングカーレースに出てチャンピオンになるだけの潜在的ポテンシャルを秘めながら、敢えてその部分を表に出さずに仕上げているという印象で、いざとなれば十分に高いポテンシャルを発揮した走りも可能なのだが、普段はゆったりと大人しく、快適に走れるクルマがボルボ…という風に僕は理解する。

V90の味付けはその典型だ。サスペンションの動きはとてもしなやかで、乗り心地は至ってスムーズで快適。移動に徹する高速区間はACCに任せてドライバーの疲労を最小限とし、目的地付近の景色を眺めながらのワインディングは正確なステアリングを自ら操り、ドライブを愉しむ。そうした使い方がこのクルマには非常に向いている。

味わい深いクロスカントリー

ボルボ V90クロスカントリーボルボ V90クロスカントリー
D4の2リットルディーゼルは、既に他のボルボ各モデルにも搭載されているものだが、最近は小型モデル群やさらにはつい最近デビューした『V60』にもその設定がなくなり、ボルボ内では徐々にディーゼルをやめていく方向に舵を切ってしまった。その背景には今後やってくるかもしれない、ディーゼル規制のさらなる強化への懸念があるのだろう。

もっともそれは、欧州やアメリカ市場の話。勿論その規制は日本にも適用されるのだが、日本市場は欧州やアメリカと違って、軽油の値段がガソリンと比較して極端に安い。だから、ディーゼルを好むユーザーは潜在的に多いと思うし、まだディーゼル市場そのものがこれから発展して行く矢先だっただけに残念だ。それにガソリン車と比較して圧倒的にトルクフルな走りは、一度味わってしまうとやめられない魔性のものがある。

クロスカントリーというセグメントは、ボルボがまだ本格的にSUVに進出しなかった時代の折衷案型モデルとして登場したものだったが、すっかり人気が定着して、ボルボレンジでは下から上まですべてのラインナップにその設定がある。車高が少し高く、敢えて無塗装のホイールオープニングの加飾を施した少しワイルドなデザインだが、使い勝手はまさにワゴンそのもの。当然重心はSUVよりも低く、運動性能は高い。

SUVの背の高さは時としてクルマを如何にも大きく見せるが、クロスカントリーレベルの背の高さはそれほど威圧感もなく、個人的にはちょうど良いと思っている。乗り味、存在感、使い勝手、まさしく一番味わい深いボルボだと思う。
ボルボ V90クロスカントリーボルボ V90クロスカントリー
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 軽オープンスポーツカー、2代目ダイハツ『コペン』が誕生!!
  2. ランドローバーが『ベイビーディフェンダー』発売ってほんと? これが市販デザインだ!
  3. 「さすが俺達の日産技術陣!」日産の新型EVセダン『N7』にSNS反応、「カッコ良すぎないか」などデザイン評価
  4. ヤマハの125ccスクーター『NMAX 125 Tech MAX』が世界的デザイン賞、ヤマハとしては14年連続受賞
  5. ゴミ回収箱に人が入ることは予見不能
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
  2. “走る巨大バッテリー”の実力! BEV+家電は悪天候でも快適に遊べる組み合わせだった
  3. BYDが「軽EV」の日本導入を正式発表、2026年後半に
  4. EVシフトの大減速、COP消滅の危機…2024年を振り返りこの先を考える 【池田直渡の着眼大局】
  5. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
ランキングをもっと見る