「日本メーカーが国内外で成長するためのソリューションを提供」BASF ランクマー・ダルヴァ氏【インタビュー】

BASF アジア太平洋地区プレジデント ランクマー・タルヴァ氏
BASF アジア太平洋地区プレジデント ランクマー・タルヴァ氏全 4 枚

BASFのアジア太平洋地区プレジデントに7月に就任したランクマー・ダルヴァ氏はレスポンスの単独インタビューに応じ、「持続可能な将来のために化学でいい関係を作る」ことを自らのミッションとした上で、「そのためにはイノベーションが必要となり、日本はイノベーションの柱となる国になる」との認識を示した。

密接な協業の中でソリューションを提供


---:自動車業界が100年に1度ともいわれる大変革期に直面している中、BASFはどのように自動車業界をサポートしていこうと考えていますか。

ダルヴァ氏(以下:敬称略):世界の自動車業界は危機的な状況でもあるし、また非常に変化の時を迎えている。BASFとしては、この危機的な状況をチャレンジとして活用しようと捉えている。このチャレンジの中に好機があると考えている。それは課題に直面すると人は何とかそれを乗り越えようとする性質があるからだ。そのような中でBASFは顧客およびパートナーと緊密に協業しながらソリューションを提供しようとしている。

---:具体的にはどのようなソリューションで自動車業界にアプローチしていきますか。

ダルヴァ:まず電動車両に関するチャレンジとしてはバッテリー材料がある。BASFはバッテリー材料で様々なポートフォリオを扱っており、そのひとつとして正極材がある。

また塗料に関して我々は、横浜・戸塚にある拠点を通じて日本の完成車メーカーに対していろいろなサポートを行っている。我々のチームは、近赤外線を透過するベースコートと反射するフィラーを開発した。この塗料を使うと夏場の車内温度を20度ほど低くすることができる。従ってエアコンに使うエネルギーの節減にもつながる。

このほか軽量化のためのエンジニアリング・プラスチック。これはBASF独自の原料を使ってパートナー企業とともに造っているものだが、これをシャシーやさまざまな部品に使用することで自動車を軽量化することができる。

---:3つのソリューションは、すでに日本の完成車メーカーに納入実績がありますか。

ダルヴァ:一部についてはすでに市場で使われているし、他のものに関しては承認に向けての段階にある。

他社に対する3つのアドバンテージ


---:BASFのソリューションが持つ、競合他社に対してのアドバンテージは?

ダルヴァ:まずは我々はグローバルであり、かつローカルでもあるということ。我々は世界4地域、アジア、ヨーロッパ、北米、南米のそれぞれにプレゼンスがありグローバルな視点を持っている。それと同時にそこで働く人たちは、その地元の人たちだ。グローバルな視点とネットワークを持ちながら、その国その国のローカルな知見を持っている。それによって例えば日本の完成車メーカーや、その他の顧客が何を必要としているのかを理解し、提供することができる。こうした能力を持っている会社は世界でも少ないと思っている。

2つめに挙げられるのが、非常に広範なポートフォリオを持っているということ。我々は自動車関連では塗料を始め、エンジニアリング・プラスチック、バッテリー材料、エンジン冷却液・ブレーキ液なども扱っている。我々ほど非常に広範なポートフォリオを持って事業を行っているところは他にないだろう。

最後のアドバンテージとしてはチームだ。会社を差別化するというのは製品そのものではなくて、人がその製品を使うことで差別化することができる。つまり製品があっても、それをどうやって正しく適用するのかということをわかっている人がいなければ何にもならない。技術力があって適用の仕方をわかっている人がいなければ意味がない。我々には非常に優秀なエキスパートがいて、彼らが自動車業界の様々な顧客に対してお手伝いをしている。一番肝心なのは製品ではなく人だ。

グローバルなプレゼンスとローカルでの知見、製品ポートフォリオ、そして優秀な人材が競合他社に対するアドバンテージだと考えている。

---:3つあるアドバンテージのうち、チームに関してはどのように優秀な人材を揃えているのでしょうか。

ダルヴァ: BASFはヘッドハンティングという手法はあまり行っていない。我々の採用の仕方は、それぞれの国において優秀な大学から人材を採用している。さらに若手を本社など海外に派遣してトレーニングを行う研修プログラムがある。我々は現地現物を大事にしているので、例えば日本の製品や日本の完成車メーカー、文化を学ぶために日本でトレーニングを受けたり、韓国やドイツでもトレーニングを受けることもできる。その国の文化を学ぶことができるのが我々の成功の源だと思う。

日本はイノベーションの柱となる国


----:グローバルであるがローカルの知見も併せ持っているのがBASFの強みのひとつということですが、ダルヴァ氏が担当するアジア太平洋地域はBASFにとって、どういう役割を担っていますか。

ダルヴァ:アジア太平洋地域は今や化学品領域で世界最大のマーケットになっている。そのアジア太平洋地域でBASFは化学品領域で最大の投資を行っている会社でもある。2017年までの過去20年間にBASFはアジア太平洋地域で130億ユーロの投資を行ってきた。またさらに今後5年間で27億ユーロを投資する計画がある。我々はローカルマーケットに拠点を置き、さらにそこで生産し、また技術サポートを行うことが必要と考えている。マーケットで我々が必要とされている時には我々のプレゼンスも拡大している。

----:そのアジア太平洋地域のプレジデントとしてのミッションは?

ダルヴァ:持続可能な将来のために化学でいい関係を作り、顧客との良好な関係を構築していくこと。すなわち我々は化学品業界において、顧客とともに持続可能なソリューションを造っていくことが目標となる。そのためにはイノベーションが必要。そして日本はイノベーションに関して柱になる国だと考えている。

----:BASFジャパンの役割について教えてください。

ダルヴァ:まずは日本の顧客に対するプレゼンスを高めること。日本の自動車メーカーは全世界の自動車生産の約30%を占めている。しかし日本国内で生産されている台数は1000万台に満たない。残りの部分はアジア諸国、欧州、北米、南米で生産されている。そういう意味でBASFジャパンのチームは日本の顧客を日本のみならず日本国外でもサポートするという非常に重要な役割を担っている。

そのために、北米でも電池材料事業の協業を行う戸田工業のようなパートナー企業のほか、京都大学や東京工業大学とも連携している。また尼崎研究開発センターに2013年にバッテリー材料研究所を開設したが、ここを拠点としていろいろなソリューションを提供したい。さらに横浜にはエンジニアリングプラスチック・イノベーションセンターとデザインファブリーク東京がある。革新性と研究開発拠点、その応用といったネットワークを通じて日本の完成車メーカー各社が日本だけでなく国外でも成長していくためのサポートを行う。また我々も日本国内のみならず、顧客とともに日本国外でも成長していこうと考えている。

《小松哲也》

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