【アバルト 124 スパイダー 試乗】ちょっとワルくてヤンチャな私でいたほうが似合うクルマ 今井優杏

アバルトの前ではお利口でいる必要はない

このクルマは文句なしにとってもセクシー

巧妙に“走り心”を煽られて…

気分はまるで女スパイ

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アバルト 124 スパイダー
アバルト 124 スパイダー全 35 枚

アバルトの前ではお利口でいる必要はない

年間200台ほどを試乗するこんな仕事に就いてもう10年ほどだっていうのに、アバルト124スパイダーに試乗の朝、私は多分、すこし緊張していた。

ただし、ガチガチの緊張っていうのとは、ちょっと違っていて、なんというか、どことなく高揚した心持ちだったのだ。

私はいつもより少し早起きして、身支度に時間をかけた。 秋らしい、ボルドー色のトップスを選んだのはアバルトの色気に負けないように。髪もしっかり巻いて、そして口唇にはジバンシイの新色のリップを乗せて。それはデートに向かう気持ちとまるで同じだった。ただ、デートでは相手にはなるべく「いい子」に見せたい、そんな下心が働くものだけど、アバルトに対してはもっと、真っ向正面から立ち向かいたくなっちゃうのが不思議。

アバルトの前ではお利口でいる必要はない、むしろちょっとワルくてヤンチャな私でいたほうが似合う気がするから。だから私はレザーのライダースジャケットをラフに羽織って、124スパイダーに乗り込んだ。

そう、アバルトってこんなふうに、乗る人の襟を正させる“何か”を持っていると思う。

このクルマは文句なしにとってもセクシー

アバルト 595 コンペティツィオーネアバルト 595 コンペティツィオーネ
サソリのエンブレムを従えて、1949年にイタリア・トリノに誕生して以降、フィアット車をスパルタンなレーシングスペックに作り上げてきたそのDNAの為せるワザなのかもしれない。

現在は「フィアット500」をベースに、スパルタンに鍛え上げられた「アバルト595」シリーズがMT、カブリオレ、ハイパワー版のコンペティツィオーネなどを多彩にラインナップしているのが印象的だけれど、ごく個人的には同じアバルトでも2シーターオープンモデルの124スパイダーを推したい。なぜって?このクルマ、文句なしにとってもセクシーだと、思いませんか?

アバルト 124 スパイダーアバルト 124 スパイダー

どこかクラシカルな雰囲気さえ漂わせるエクステリアは初代124スパイダーにオマージュを捧げたと言われているもの。インテリアも赤いステッチや立体的なスポーツシートなど、アバルトらしいクラフトマンシップに溢れていて、乗っているだけで誇らしい気持ちになる。こんなに所有欲を満たしてくれるクルマって、ほかにあまりないのでは?といつも思う。さらにすでに発売開始になった2019年モデルは、インフォテイメント系など使い心地が向上し、さらに魅力的を増している。

アバルト 124 スパイダーアバルト 124 スパイダー

巧妙に“走り心”を煽られて…

しかし、124スパイダーの魅力は、やっぱり走りにあった。それを思い出したのは、都内から千葉方面に走り出してすぐのことだった。

スターターボタンを押した瞬間に、アバルトらしい勇ましいエンジン音がガウン、と吼える。ナビを表示するメインディスプレイにサソリのマークが現れて、まるで「早く走りに行こうよ」と誘いかけてくるみたいだ。だから、つい呼応するように思わずアクセルを踏み込んだら、イタリア産1.4リッターマルチエアエンジンがぱっちりと目を覚まし、最高出力170HPを発揮しようと鎌首をもたげるんだから、姑息というかウワテというか。こんなに巧妙に“走り心”を煽られて、ソノ気にならないクルマ好きなんて存在しないんじゃないかな、とほくそ笑んだ。

アバルト 124 スパイダーアバルト 124 スパイダー
しかも今回の試乗車はMT。このトランスミッションが最高にスポーツ・フィーリング!ストロークが短く、コクコクとした確かな手応えが手にも感覚にも心地よくて、つい無駄にシフトのアップ&ダウンを繰り返してしまうほど。クラッチペダルのミートもかなり的確で、1.4リッターターボだからミートしてすぐのトルクは細いものの、ちょっと煽り気味にすればモタつきも早すぎもせず、カチっとギアが繋がるのも気持ちがいい。

そしてさすがアバルト、高回転域に入るあたりで見せるパワーが実に素晴らしい。伸びやかな加速がもたらす押し出しには、自然とニコニコしてしまうくらいに気持ちいい!

さらに124スパイダーのスポーツ・フィーリングを正確を決定付けているのがその軽さ!実重量もさることながら、身のこなしの軽やかさ、華麗にスッキリとした扱いやすさは感激モノ。その機敏な挙動は、レーンチェンジですら実感出来るほどだ。コーナリングは言わずもがな、クイクイと鼻先がコーナーの向こうに入り込んでいく感覚は、ちょっと他のクルマにはない。ビルシュタイン製のサスペンションが、実に良い仕事をしてくれている。

気分はまるで女スパイ

アバルト 124 スパイダーアバルト 124 スパイダー
さて、ふたたびインテリアに目を向けると、やはりステアリング・ホイールの中央に鎮座ましますサソリマークと目が合うことに触れないわけにはいかない。
走りのインフォメーションはもとより、このサソリが目に入ることこそまさにアバルトの妙味というか、ああ、私は今、この毒を味わっているんだなという実感を絶えずもたらしてくれるアイキャッチであることは間違いない。
ドライビングポジションは低く、フットボックスは浅めで、ドライバーはシートに座るだけで自然とフォーミュラ・ポジションを取ることになる。そんな視界に常にサソリが存在するんだから、気分はまるで女スパイだ。そう、この124スパイダー、どこかドライバーを酔わせる魅力に満ちているとも言える。

自分に酔ってくればルーフを開けたくなるのも当然ってワケで、今回の撮影では最低でも10回近く、オープン/クローズを繰り返したのだけど、124スパイダーのこのキャンバストップは、女スパイ(すっかりその気)の細腕でも面倒にならない軽さ&構造のシンプルさが感激レベル。屋根を開ける煩わしさを一切感じさせないのが素晴らしかった。コレ、慣れれば片手でオープン/クローズを出来るくらい。これだけ軽いルーフなら、いつでもどこでも気軽にオープントップを楽しみたくなること請け合いだ。

この日、最後に訪れたビーチでは、折しも燃えるようなサンセット・タイムの真っ最中。すかさずルーフを開けて、うっとりとフロントガラスの向こうの絶景を楽しんだのだった。ルーフと一緒に、心までオープンにして。

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今井優杏|モータージャーナリスト
レースクイーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリストに転向。WEB、自動車専門誌に寄稿する傍らモータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベント等でMCも務めている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

《今井 優杏》

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