スバルSTIの未来を平川社長が語る、「ファンと対話しながらクルマづくりをしていく」…インタビュー

STI(スバルテクニカインターナショナル)平川良夫社長
STI(スバルテクニカインターナショナル)平川良夫社長全 10 枚

スバルのモータースポーツ活動を統括する立場にあるSTI(スバルテクニカインターナショナル)は、昨年、創設から丸30年を迎えた。これを機にSTIは、スバルとともにクルマを愛する人たちのために特別な価値を提供するブランドになることを表明している。ニュルブルクリンク24時間レースやスーパーGT300などに果敢に挑み、過酷なレースフィールドで技術やノウハウを蓄積してきた。これを財産に、さらに研鑽を積んで技術レベルを高みへと導いている。

STIの知名度を高めたのは、モータースポーツでの活躍だけではない。独自のチューニングを施し、意のままの気持ちいい走りを実現したコンプリートカーも多くのファンを呼び込んだ。また、スバルの量産車の走りの領域を少し広げたSTIスポーツも仲間に加えた。優れた安全性と走りの愉しさを売りにしているスバルの、走りの愉しさの部分をさらに伸ばし、スポーツテイストを高めたカタログモデル、それがSTIスポーツだ。

安心と楽しさ、そして誇りを持って乗って、その過程でさまざまな経験を通して生活を豊かにするのがSTIの創設意義であり、存在目的である。1月11日に開幕した東京オートサロン2019の会場で、STIの平川良夫社長は「2019年は原点に立ち返る、スタートの年として心を新たにして取り組んでまいります。数多くある自動車ブランドのなかで、やっぱりスバルとSTIがいいよね、と言っていただけるよう努めてまいります」と述べている。

走りの本質を追求し、乗る人すべてに感動を提供するクルマづくり、これを目指しているのがスバルとSTIだ。深い絆で結ばれている両社は、設計哲学として「安心と愉しさ」を掲げた。これは市販車だけでなく、モータースポーツに挑んでいるマシンについても言えることである。

STIの平川良夫社長に、これからのSTIの方向性やグローバル展開について聞いた。

スバルとSTIの体温を感じてもらえる場を増やしたい

----:2018年、スバルは創設から100年を超え、STIも30年の節目を迎えました。ここ数年でSTIは大きく変わったように思います。STIのラインナップの裾野が広がり、ユーザー層も広がってきました。STIが目指しているクルマづくりとファンとの接し方について教えてください。

平川社長(以下敬称略):人肌を感じる生々しいところが大事なのではないかと考えています。これは私の意見ですが、生々しさがスバルらしさ、STIらしさなのではないかな、と思います。価値観を同じくする人が集まって、大切な時間を一緒に過ごす、愛されるクルマですね。作り手と使い手がひとつになって、同じ時間を共有し、過ごせるつながりが、今まさにスバルとSTIにとっては大事なことなのだと思います。

ご存じのように、この2年の間にスバルは品質問題などでお客さまに多大なご迷惑をかけてしまいました。今、お客さまが求めているのは、スバル、そしてSTIの体温を感じたい、ということだと思っています。この要求に、真正面から飾らないで取り組み、お客さまと触れ合っていける場を作っていきたいと思っています。今年からそのことに本腰を入れ、5年後、10年後、お客さまと一緒に、スバルSTIファミリーを作れたら、というのが私の願いです。

----:STIは、これまで日本の熱狂的なファンに支えられてきました。これからは日本に加え、グローバルな展開もあるということでしょうか?

平川:その第一弾として、3月10日に富士スピードウェイでスバルSTIファミリーが楽しめるイベントを開催します。運転するお父さんやお母さんだけでなく、子供さんや友だちも連れて来て楽しんでください。家族っていろいろな人がいた方が面白いし、大事なのです。純粋培養だともろいので、日本のお客さまだけでなく、アメリカやヨーロッパ、オーストラリア、ロシアなど、さまざまな国のお客さまでSTIファミリーを築いてもらいたいと思っています。お客さまが幹になってSTIファミリーを増やしていけたら嬉しいですね。

(オートサロンの直後にSTIコンプリートカーの最高峰「Sシリーズ」初となる北米市場向けモデル、「S209」が発表されている)

----:そういった視点で、今回のオートサロンにおけるスバルSTIブースを見てみると、今後の展開が面白くなってきますね。

平川:スバルもSTIも思いは同じなので、一緒になってディレクションを行いました。体温やぬくもりを感じてもらいたかったので、展示車の配列も変えています。これから先のコンセプトカーはモーターショーでいいと思うんです。それよりも、もしかしたら発売されるかもしれない、という身近に感じられるクルマを、オートサロンでは見やすいところに並べました。走り一辺倒ではなく、家族も楽しめるクルマに仕立てています。

モノの価値観というのが絆を深めていくんですね。これが大事ですね。新しいことに挑戦していかないとお客さまも応援してくれませんよね。作り手が一方的に押し付けるのではなく、お客さまとともに対話しながら、きちんとポジティブなスパイラルアップをしていこうと思っています。

スバルSTIブース(東京オートサロン2019)スバルSTIブース(東京オートサロン2019)

速いだけでなく、疲れない気持ちのいいクルマづくりを

----:これからはSTIの魅力である際立った部分を残したまま、より高いところを目指してほしいですね。走り一辺倒のクルマづくりでは、乗る人も限られてしまいますね。

平川:スバルSTI本来の良さを伸ばし、その上でクルマのトータルなクオリティを上げないといけないと思っています。速いだけでなく、ドライバーと同乗者が疲れない、気持ちいいクルマづくりですね。箱根の山岳路で楽しく走れ、しかも西湘バイパスの継ぎ目が心地よいと感じるクルマがあれば喜んでくれるでしょう。これがスバルとSTIの新たなコラボレーションで、お客さまの期待に応えられるテーマなんですね。STIのクルマは移動する手段だけではダメだと思います。走りのよさに加え、質感を高めることも大事です。実はインテリアの質感を高めるために、昨年から太いステッチが織れるようなミシンなども揃え始めました。

----:プラットフォームやパワートレインも大きく変わったから、これからのSTIは楽しみですね。

平川:スバルグローバルプラットフォーム(SGP)は車高の高いSUVのようなクルマにはより魅力的で、ベースがいいからSTIはさらに高みを目指すことができます。お客さまが、もうちょっと高い位置で競争していいよ、と言っている環境になったから、ヨーロッパ車の名門モデルと心地よい競争関係にあるところまで来られたと思っています。今回、ここに展示しているコンセプトカーも、お客さまが後押しし、反響が大きければ市販に向けたアプローチができるようになります。

----:最近のSTIは走りの質も大きくレベルアップしていますね。プラットフォームがよくなったこともあり、安心して走りを楽しめます。

平川:スポーツ選手と同じように、体幹を鍛えていくことが大事なんです。SGPを採用したこともあり、基本性能は高まっていますが、筋肉をつけるだけでなく体幹を鍛え、STIではさらに体幹を磨き上げ、スポーティで切れ味のいい状態にしています。また、お客さまが分かりやすい質の高さにまとめ上げました。この道を進んで突き進むことが、世界の自動車の正しい競争に参加できることになるんだと思います。STIのような小さな企業が競り勝っていく、販売台数以上の力をつけるためには、お客さまとの強いコラボレーションが大事なんです。ということで今年から、お客さまとのつながりにウエイトを置いて、開発などを進めていきます。これからのSTIの躍進に期待してください。

----:作り手のSTIと使い手であるお客さまが、共有できる誇りや言い合えるというところの幹が、もっと強く太く広げられればお客様も喜ぶし、支援していただけると思います。ありがとうございました。

スバル/STI(東京オートサロン2019)スバル/STI(東京オートサロン2019)

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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