【ホンダ インサイト 新型試乗】欧州プレミアムセダンに近いクオリティを感じられる…飯田裕子

ホンダ インサイト 新型
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2030年にモデルラインナップ中の3分の2に電動化技術を採用すると発表しているホンダが、1999年に初めて手掛けたハイブリッド車が『インサイト』だ。その3代目で挑戦したのは“クルマの本質価値の向上”。これはハイブリッド車だからといって単に燃費向上をはかるだけではなく、フィーリングにまでこだわった走行性能や乗る人すべてにとっての快適性、内外装のデザインやそれらをより魅力的に見せるためのクオリティコントロールにまで至る。

先代までのモデルをご存知の方は、この新型をご覧になって「これがインサイト?」と思われるかもしれない。が、ホンダのハイブリッドモデルのラインナップの拡充に加えパワートレイン(動力)の種類も増え、進化や変化をしている今、インサイトはあらゆる面でステップアップに臨んだと理解すると腑に落ちるのではないか。

上質なデザインと佇まいが魅力

インサイトの過去を遡ろう。“燃費スペシャル”とまで言われた初代は、空力を優先させたデザイン、アルミボディを採用するなどの軽量化への徹底ぶり、そこにホンダ初となるハイブリッドシステムを搭載した。2代目は実用性の向上やより選びやすい価格設定など、環境車の普及を担うモデルとして登場。そして最新となる3代目は本質的な価値を高く感じられる“質”の向上を目指す。

新型インサイトは正直に言って『アコード』の存在を脅かすほどデザイン性とその佇まいに上質な雰囲気が漂う。私が今回の試乗会に向かう途中で他の方が試乗中のインサイトとすれ違ったとき「カッコいいホンダ車がいるな」と目を奪われ、もちろんすぐにそれが新型インサイトだとわかったのだが、それくらいデザインの魅力が増した存在感を感じたのだ。

ボディの骨格部には『シビック』も採用するC/Dセグメント向けの最新プラットフォームを採用している。デザインやパッケージングにこだわったハイブリッドシステムは『オデッセイ』や『ステップワゴン』、『クラリティPHEV』にも採用されている2モーター式SPORTHYBRID i-MMD(ホンダには他に小型系モデルに1モーター式、『NSX』や『レジェンド』には3モーター式を採用)。組み合わされる1.5Lエンジンはインサイト用に最適化した。

また搭載方法も新しい。フロントノーズ長を抑えるべく12Vバッテリーをエンジンルームから室内のフロントコンソール下に、そして小型化が特徴のリチウムイオンバッテリーとECUなどを一体化したIPU(インテリジェントパワーユニット)をリヤシート下に配置。おかげで乗り心地が良くスペースも十分な後席は、背もたれを倒しトランクスルーを使ってラゲッジスペースを拡大することもできる。さらにそんなシートはステッチの均一ぶりにまでこだわるほど内装全体の質感向上を目指し開発が進められている。ぜひ実際にご覧になってみてほしい。

リニアな走りをEVのようなモデルで味わえる

1.5L i-MMDを搭載するインサイトの走行フィールは駐車スペースから一般道へと出る間の微速から滑らかにスッと走り出し、街中に出て改めて走り出すと、非常にスムーズで伸びやか、そして力強い。1.5Lエンジンは発電機として使うのがi-MMDの位置づけであり、これまでは燃費を優先し、エンジンのセッティングは高効率なところ=一番発電効率のいいところに合わせていたという。急加速したいと思ったときにエンジンの回転数を早く上げて燃費のいい、そして駆動用バッテリーから駆動モーターへ十分な力を発揮できる仕様になっていたのだ。が、アクセルを踏む量とエンジンの回転数にずれが生じ、感覚的にはアクセルを踏んでエンジンまわっているのに加速しないという違和感が多少なりともあった。

新型インサイトは走りの質を求めるべく、燃費の分を少し乗り心地や走り味に使い、走りのリニア感出すためにエンジン回転数をおさえているという。おかげでアクセルを踏んだ感覚とエンジンの回転の感覚に違和感なく、トルクのある一般的なガソリン車をドライブしている感覚に近い。いや、実際にはエンジンでつくる電力で電気モーターをまわして駆動=走る領域が多く、しかしエンジン音や振動、ロードノイズまで抑えられているからエンジンの存在は極めて薄い。つまり、ガソリン車のようなリニアな走りをEVのようなモデルで味わえると表現するのが新型インサイトには相応しいだろう。ちなみに航続距離は公表されなかったが、よりEVドライブにこだわりたいシーンではEVドライブモードも選べる。

高速走行はエンジンの得意領域を活かし、エンジンと車輪を直結しエンジンの力を使って走るが、パワーモニターを見ると一定走行時にはEVモードになっていたりもする。欲しいときに欲しいトルク=力を“リニア感”とともに得られる一方で、その切り替わりのシームレスぶりも特筆せずにはいられない。

そんなパワートレインが与えられたインサイトは欧州車のようなカッチリと剛性感のある足腰ぶりを運転席で楽しめる。高速のジャンクションのカーブで切り込んだハンドルにスッとボディがついてきてくれる感覚には楽しさのみならず安心感すら抱いたほどだ。先進の運転支援システムの装備にもぬかりはない。残念な点は快適性にも注目した後席にスマホ用ポケットがあるのに、充電ソケットが不採用だったことくらいだ。

新型インサイトは欧州プレミアムセダンに近いクオリティをクルマ全体で感じられると言っても言い過ぎではない。エレガントでダイナミック。なんだか80~90年代のインテリイメージのあるホンダとも印象が重なる。おわかりになる方々(世代)にだけに伝わる表現をお許しください(苦笑)。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

飯田裕子|自動車ジャーナリスト協会会員
現在の仕事を本格的に始めるきっかけは、OL時代に弟(レーサー:飯田章)と一緒に始めたレース。その後、女性にもわかりやすいCar & Lifeの紹介ができるジャーナリストを目指す。独自の視点は『人とクルマと生活』。ドライビングインストラクターとしての経験も10年以上。現在は雑誌、ラジオ、TV、シンポジウムのパネリストやトークショーなど、活動の場は多岐にわたる。

《飯田裕子》

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