ホンダが車いすレーサーといっしょに駆け抜けた時代、そして最新型車いすレーサー「翔」誕生とこれから

Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)
Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)全 14 枚

2020年7月24日に開催される東京オリンピック・パラリンピックまで、あと500日を切ろうとするタイミングで、ホンダは車いす陸上競技支援について公表。ホンダが車いすレースに本気で取り組むまでの道のりから、最新モデル、今後のビジョンについて、各幹部が語ってくれた。

【画像全14枚】

ホンダが車いすレースへと走りだすきっかけHondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)
車いすに乗った人たちだけによるマラソンの国際大会が世界で初めて開催されたのは1981年。開催地は、九州・大分だった。当時、42.195kmを車いすの選手が完走できるのか?という不確定要素が大きかったため、まずはハーフマラソンで実施。

この大会には、15か国117名の選手が出場。両脚ではなく、両腕の腕力で走るという姿は、人々に勇気、希望、感動を与え、さらにフルマラソンへと距離を拡大。健常者と同じく距離42.195km を駆け抜ける競技へと発展した。

ホンダが車いす競技に参戦するきっかけは、ホンダ創業者 本田宗一郎と中村裕医学博士が出逢ったことから。大分に生まれた中村博士は、1965年、障がい者の職業訓練校「太陽の家」を設立。本田宗一郎は、その「太陽の家」を訪れ、障がい者の人がいきいきと働いている姿を目の当たりにする。

本田は、彼らのいきいきと働く姿に感動し、「よし、やろう! 本田もこういう仕事をしなきゃ、ダメなんだ!」と奮起し、1981年、障がいのある人たちの社会的自立の促進という理念のもと、「ホンダ太陽」を設立した。

ホンダ太陽の情熱が、本田技術研究所の技術者を突き動かすHondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)
本田宗一郎の一念発起で設立されたホンダ太陽がいよいよ動きだす。前出の世界初開催となった第1回大分国際車いすマラソン(1981年)には、ホンダ太陽の従業員が個人的に参加。当初は会社の支援などなく、陸上競技用車いすの手配などはすべて自前で走り続けてきた。

こうしたホンダ太陽の社員たちの活動に、こんどは本田技術研究所の技術者たちが共感する。ホンダ太陽の従業員ら12名で、「車いすレーサー研究会」を発足。「世界一軽い陸上競技用車いすをつくること」を目標に掲げ、車いすレーサー開発・製造のノウハウがないまま、既製品を見よう見まねで製作。

本田技術研究所とホンダ太陽の「車いすレーサー研究会」は、車いすレーサーの試作車を、わずか1年で製作し、オールアルミ製の陸上競技用車いすをつくってしまった。

Honda R & D 太陽+本田技術研究所+八千代工業の3社で挑む時代へHondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)
1999年には、車いす陸上競技活動が、ホンダ太陽と Honda R & D 太陽の公式クラブに昇格。その名を「ホンダアスリートクラブ」とし、会社のバックアップを得た同チームは、その活動をさらに強化していく。

そして2000年、本田技術研究所の開発アイテムに陸上競技用車いすが追加される。「レースをやるからには徹底的にやり抜く」というホンダの“やる気”に火がつき、選手からのフィードバックを得ながら、ついに世界初のフルカーボンボディの陸上競技用車いすを完成させてしまった。

さらに2013年には、ホンダ『S660』などを製造する八千代工業が加わり、3社で車いすレーサーを製造するまでに発展。この3社で開発・製造した量産型車いすレーサーが、「極(きわみ)」だった。

最新型車いすレーサー「翔」の誕生Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)
ホンダ太陽にアスリートクラブが発足して20年。この20年という時間のなかで、「ホンダ太陽の『自らの手でつくりたい』という想い」「八千代工業のものづくりへのこだわり」「世界トップアスリートの妥協を許さない評価」「F1やホンダジェットで培った革新技術の投入」で、車いすレーサーの開発は加速。

当時の一般的な車いすレーサーが、アルミパイプを溶接してつくられていたなか、この市販車いすレーサー「極」は、軽量かつ高剛性のカーボンモノコックフレーム構造を世界初採用。走行安定性やコーナリング性能向上を目指し、理論的な構造設計だけでなく、実レースからのフィードバックで、製法やフレーム形態もトライアンドエラーを繰り返してきた。

そしてことし4月、ホンダから発売される最新モデルが、「翔」。この最新型車いすレーサー「翔」は、「勝利の笑顔をアスリートに届ける」をコンセプトに、さらなる高みを目指したモデル。

その最大の特徴は、「アスリートの闘志を掻き立てる斬新なデザインのウインドフレーム」「ステアリング周辺パーツをフレーム内に確認したビルトインダンパーステアリング」「素材と構造の最適化を図った超軽量・高剛性カーボンホイール」の3点。

とくにカーボンホイールは、Hondaサポート選手から高い評価を得、エレンスト選手などの強力な推進力もしっかり受け止めながら、軽快に前へと転がっていくという。

見える化、非破壊検査などでリードHondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)Hondaグループ車いす陸上競技支援発表(Hondaウエルカムプラザ青山/2月28日)
ホンダは今後、アスリートに対し技術面でのサポートも実施。たとえば、アスリートの能力を最大限に発揮させるべく、「車いすレーサーを漕ぐ力」を見える化にトライ。科学的なアプローチから、アスリートにフィードバックしていく。

また、安心安全な車いすレーサーを広めていくために、車いす陸上競技で初の非破壊検査をレース現場で展開していくという。

<登壇者>
本田技研工業 倉石誠司 代表取締役副社長
本田技研工業 尾高和浩 執行役員
本田技術研究所 R&DセンターX 竹中透 主席研究員
Hondaグループサポートアスリートほか

《レスポンス編集部》

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産『スカイライン』新型が12月公開へ! 開発期間を半減、“日産復活の象徴”はどうなる?
  2. ヤマハ『XSR900』を「USインターカラー」に変身! ワイズギア、外装セットを限定発売 価格は29万9200円
  3. フォルクスワーゲン、新型EV『ID.ティグアン』を世界初公開へ エンジン車のティグアンも併売
  4. コメリの洗車用「デカスギドライクロス」に“片面仕様”登場! 絞りやすさと吸水力を両立
  5. BMW 3シリーズ 新型、9月30日デビューへ…第8世代は内燃エンジン全車がハイブリッドに
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【全文PDFプレカン】日産自動車 長期ビジョン発表会
  2. タイ矢崎電線のアルミ新工場がタイに完成、生産量3倍に増強…送配電網・自動車向けに対応
  3. [Key Person Interview]圧倒的な地の利を活かすラストワンマイルの担い手…駅レンタカーシステム代表取締役社長小堀明夫氏
  4. インド国産化の進め方、事業の核の築き方【インド・新自動車大国の素顔】
  5. 【セミナー見逃し配信】※プレミアム・法人会員限定 欧州自動車産業の次の一手、欧州の現場で何が起きているのか~EV減速局面・SDV/AIへの移行・中国勢の浸透~
ランキングをもっと見る