「やっぱり女性は運転が苦手?」聞くのも取り下げるのも、なんだかなぁ【岩貞るみこの人道車医】

「やっぱり女性は運転が苦手?」というアンケートが物議を醸したが…(写真はイメージ)
「やっぱり女性は運転が苦手?」というアンケートが物議を醸したが…(写真はイメージ)全 1 枚

【やっぱり女性は運転が苦手?】トヨタがツイッターで投げかけたアンケートを、謝罪して取り下げる事態になった。

アンケートの内容は、「女性ドライバーの皆様へ質問です。やっぱりクルマの運転って苦手ですか?」というもの。

回答は、以下の四択。
「とても苦手。」
「すこし苦手。」
「どちらでもない。」
「得意です!」

意気揚々と「得意です!」と答えられなければ、「どちらでもない」を選ばざるを得ない四択の作り方にも問題があるけれど、それより人々がひっかかったのは、問題文にある「やっぱり」の一言である。

「やっぱり」は正しく使われている?

「やっぱり」という言葉は、すでに想定していることに対して、想定とおなじ結果であるときに使う。要するにこの質問をしたトヨタは、「女性は運転が苦手」を前提に質問しているというわけだ。ちょっとその想定ってどうなのよとなり、「最初から女性は下手だと決めつけるな」「男性だって下手な人はいる」などという意見が出たのである。

こうした意見が出るのはわかるけれど、謝罪して取り下げるようなことなのかとも思う。最近、みんな、ちょっとつつかれたら簡単に引き下がりすぎだよね。

そもそもこの「やっぱり」という言葉。多くの人がひっかかって食いついたけれど、平成から新元号になろうとしている現代において、そんなに正しい意味で使われていないんじゃないかと思う。

「やっぱさー」と、会話のさいしょになにげなくつけちゃう言葉というか。「でもさー」とか「あのさー」みたいな? (「さー」とつくのは、私が横浜出身だからである。)ゆえに、「やっぱり」で、そこまで反感をもって食いつかなくても……というのが、私の意見だ。

技術者の方々が「女性は運転が苦手」と思ってしまうのもわかる

しかし、その一方で、トヨタの人、特に、技術者の方々が「女性は運転が苦手」と思っていることは確かだとも思う。試乗会などでお目にかかる開発者の人からは、「女性は運転が……」とか、「うちの妻も……」という声は、も・の・す・ご・く、よく聞く。もっとも、トヨタに限ったことではなく、ほぼすべてのメーカーから発せられているのだが。

たしかにね、クルマと日々向き合って、クルマのことばっかり考えて、下手したら、テストドライバーだったりする開発の人たちに比べたら、そりゃ“その人たちの妻”は運転が下手でしょうよ。

それに、“その人たちの妻”は、「私は運転が得意」と、わざわざ言わないと思う。ダンナのプロ意識を尊重する賢さもあるけれど、「得意」と言わないほうが、なにかとケアしてもらえて、甘えられるので楽だからだ。いやーん、運転苦手~と言っていれば、長距離でも運転かわらなくていいとか、車検やメンテもすべて手を出さなくていいとか?(あくまでも想像です。)

得意だと言われなければ、得意ではないと思うのは当然な話で、結果として、トヨタを含む開発者は、家人は運転が得意ではない=女性は運転が得意ではない、となる。家人=女性という強引な主語の持っていきかたはどうかと思うけれど。

思っているならわざわざ聞かなくても

今回のアンケート、わざわざ謝罪して取り下げるのも、なんだかなあと思う。だけど、これだけ女性が社会進出して、クルマも乗り回している時代に、敢えてこのテのアンケートをすること自体、どうなんだろう。そもそも、女性は運転が苦手と思っているなら、わざわざ聞かなくてもいいんじゃないの?

だったらさ。クルマの運転くらいできなくちゃかっこ悪いと、がんじがらめになっている男性陣に対して、「実は苦手ですか?」と、そっと本音を聞くアンケートにしてあげればよかったのに。

そしたら、結果次第では、なんだ、自分だけじゃなく、こんなに運転が苦手だっていう人がいるんだ、自分だけじゃなかったんだ!と、呪縛から解放される人が続出したかもしれないのに。

アンケートって、なんのためにやるの? 結果をどう読み解いて、どう活かすの?(←ここが一番大事。みんな、自分たちの都合のいいように読み解くから)

せっかくやるんだったら、意味のあるものにしたらいいのにね。 

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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