【MaaS】フィンランドのMaaSが成功した理由…フィンランド大使館 田中浩一氏[インタビュー]

【MaaS】フィンランドのMaaSが成功した理由…フィンランド大使館 田中浩一氏[インタビュー]
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3月29日に開催予定の「【MaaSセミナー】フィンランド・スイスのMaaS/MWC・SXSW2019から今後のモビリティーを読む」セミナー(主催:イード)で、フィンランド大使館 商務部 上席商務官 田中浩一氏が、フィンランドにおけるMaaSの位置づけや政策、現状と今後について講演する。

フィンランドといえば、「MaaS Global」の成功が世界中で取り上げられMaaS先進国という位置づけにある。その背景にはどんな取り組みがあったのだろうか。なぜMaaS Globalが成功したのだろうか。フィンランドのMaaS戦略について聞いた。

●都市計画の中から生まれたMaaS
―フィンランドはヘルシンキ市における取組がMaaSの象徴的な成功事例として海外に認知されています。フィンランドにとって、MaaSはどのような位置づけにあるものなのでしょうか。

田中氏(以下同):フィンランドでは、MaaSを都市計画の指標のひとつとしてとらえています。具体的には、移動や輸送といった都市機能です。もともとは、2012年ごろに、政府の都市計画の中で、都市機能や要素、課題を可視化できないかという取り組みがありました。詳細はセミナーでもお話しますが、都市がかかえる課題や経済基盤、都市計画を縦軸に、人や社会、実行環境を横軸としたマトリックスを作りました。この都市計画のうち、交通や輸送にかかわる要素を抜き出したものが、いまで言うMaaSに相当する概念だと思っています。

都市計画において、防災、エネルギー、環境、景観などの問題を考える必要があります。交通や輸送もそのひとつです。交通の実行環境や課題解決を考えるとき、従来、それをけん引するのは道路建設、鉄道敷設といったものでした。21世紀に入り、EV、自動運転、あるいはITSといった新しい要素が生まれ、デジタルやデータがイネーブラーになってきています。

●移動の8割が自動車に依存している現状の課題
―なるほど。MaaSとは、車両技術や交通機関、道路・鉄道インフラではなく、それらを統合的に可視化できるデータがプラットフォームという考え方ですね。都市計画のうち交通問題から生まれたMaaSでは、具体的にどんな問題を解決しようとしていたのでしょうか。

ひとつは自動車が関連するさまざまな社会問題です。渋滞、事故、環境汚染の問題、それと連動する経済損失や対応コストです。フィンランドにおいても、自動車によるこれらの問題は無視できるものではありませんでした。

ある調査によれば、フィンランドでは移動のおよそ80%が自動車です。公共交通を使った移動はおよそ11%です。日本に比べると公共交通の整備が足りない面もあるかもしれませんが、80%は多すぎないだろうか。もっと車以外の移動を増やすべきではないのか。公共交通を充実させる必要があるのではないか。という議論がありました。

都市部では渋滞や環境問題。地方では高齢者や交通弱者の生活や移動の問題。これらの課題解決です。

―その課題は日本でも同じですね。課題分析を始めたとき、Uberなどはフィンランドに進出していたのでしょうか。

当時、Uberなどのライドシェアは違法でした。試験的に導入してみたのですが、半年を待たず違法という判断が下りました。しかし、コンセプトは生かせないかという意見はありました。

たとえば、地方や過疎地域では、自治体や地方公共団体のサービスとしてライドシェアが応用ができないかと考え、地域のタクシー会社に学童の送迎、高齢者や障害者の送迎、地域の足のサービスを委託する事業を進めました。ただし、学童送迎の車両に高齢者は乗せられないといった制限がかけられるので、あまり効率がよくないという問題もありました。

―ヘルシンキ市の取り組みもこのころからでしょうか。

はい。地域の取り組みと並行して都市部の取り組みを行われました。2014年、2015年ごろ、運輸通信省のバックアップで実証実験などを開始しました。この実験にかかわったのが、のちのMaaS Globalです。

取り組み当初は、行政側がある程度イニシアティブをとり、道筋を作りました。しかし、専門家が豊富というわけでもなかったので、外部の協力を仰ぎ検討委員会を組織しました。このとき、委員会のオピニオンリーダーだった人物が現在のMaaS GlobalのCEOです。検討委員会でも、ヘルシンキの取り組みはビジネスベースで考え、最終的には採算がとれることを目指しました。

●データ中心のMaaSではオープンプラットフォームが重要
―さきほど運輸通信省という言葉がでました。運輸と通信というまさにMaaSを意識したような省庁ですが。

もともとは国内の郵便を管轄する省でした。郵便の配送、配達は物理的な輸送が伴いますので、通信と運輸を扱っています。MaaSを見越して作られたわけではありません。確かに、通信はデジタルになりMaaSとの親和性は高いといえるでしょう。2018年にフィンランドでは交通法が改正されましたが、ねらいはMaaS発展のためです。それまで、交通に関して、人の輸送、貨物の輸送、鉄道、道路など、別々の法律で運用されていました。改正により、これらはひとつの法律の枠組みにまとめられました。

また、この改正では、デジタル技術を使ったプラットフォームを作ることが明文化されました。データもオープンデータとして公開、共有できるしくみも必要としています。当然、データは汎用的でマシンリーダブルでなければならないという規定があります。

―行政の支援もあって進められているわけですが、フィンランドにおいてMaaSのプレーヤーとはどんな企業、組織なのでしょうか。

現在、フィンランドではUberやLyftのようなサービスは合法になっています。また、MaaSオペレーターに国籍や外資かどうかの規制はありません。国内に法人が登録されており、サービスに問題がなければどの企業もMaaSオペレーター、事業者になれます。実際には、スタートアップがMaaSオペレーターを担うことが多いようです。

●フィンランドMaaSを主導するスタートアップ
―スタートアップなどの参入に、既存業界や産業からの抵抗はなかったのでしょうか。

まったくなかったわけではありませんが、彼らにはデジタル技術やデータ活用において知見も深く、サービス創出の力を持っています。インフラこそ持っていませんが、既存産業がMaaSのコンセプトを自前で用意するコストや手間を考えたら、スタートアップでも、そこと組むほうが合理的と判断する企業が多いのです。そのための土壌として、スタートアップ文化が根付いていたというのもあります。

MaaSへの取り組みは、政府としても補助金でななく、ビジネスとして事業を自立させることが重要だと思っています。現状、都市部でのサブスクリプションモデルが成功していますが、ヘルシンキ以外での適用など課題はあると思っています。

―本日はお時間いただきありがとうございました。

3月29日に開催予定の「【MaaSセミナー】フィンランド・スイスのMaaS/MWC・SXSW2019から今後のモビリティーを読む」セミナー(主催:イード)はこちら。

《中尾真二》

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