「NDが100点満点とは思ってない」…マツダ開発担当が語る、ロードスターの過去現在未来と広島のものづくり

「広島に息づくものづくり」をテーマにしたロードスタートークショー
「広島に息づくものづくり」をテーマにしたロードスタートークショー全 30 枚

初代NAから現行NDまで、マツダ『ロードスター』に脈々と受け継がれるマツダイズムのヒントがみえたような気がする。場所はマツダの本拠地 広島ではなく、東京のど真ん中。歴代ロードスターに囲まれてファンの前に現れたのは、ロードスター開発担当主査 中山雅氏だ。

マツダは3月25日、東京ミッドタウン日比谷で「広島に息づくものづくり」をテーマにしたロードスタートークショーを開催。観覧者を募ったところ、設定席数の10倍を超える応募があり、平日にもかかわらず、生粋のマツダ党が集結した。

登壇したのは、ロードスター開発担当主査兼チーフデザイナーの中山雅氏をはじめ、デザイン本部ブランドスタイル統括部の田中秀昭 主幹、そしてマツダと同じ広島で誕生し生産を行うシューズメーカー、スピングルカンパニー 企画部の田上秀一氏。同社は“究極の履き心地を追求したシューズブランド”として職人のハンドメイドで製品を仕上げる「スピングルムーブ」を展開している。「異業種と共有することで、違った視点でロードスターを見つめられる」というトーク展開に、来場者は前のめりで聞き入った。

マツダに根づく「人間中心のものづくり」

このトークショーの口火を切ったのは中山氏。開口一番、マツダ党を前にして切り出したキーワードは、マツダの根付く「人間中心のものづくり」。中山氏と田中氏からは、こんな“マツダイズム エッセンス”が飛び出した。

「ロードスターの設計基本は、ホイールベースの間で、乗員をどこに座らせるか。マツダはよく『軸を通す』という言葉を使うけど、ドライバーをなるべく中心において、回頭性を高めるという基本がある」(中山氏)。

「ペダルとステアリングとドライバーの背骨をまっすぐにあわせる。すべてそういう考え方でつくれば、きっと楽しいクルマがつくれるはずだという意気込みが、マツダにはある」(田中氏)。

その軸感を端的にしめすアイテムが、室内からみえるAピラーのあしらい。「Aピラーの先に(機能的には要らないパーツだけど)内装カラーと同じアイテムを入れる。これが、ボディのフェンダーピークに結びつく。こういうのもマツダの軸感の表れ」という。

「ロードスターは歴代どれも、ドア内側はやわらかい」

トークショーで最初に笑いが出たのは、「マツダのTL、BL、WLっていうワード、知ってる人いますか?」という質問に、参加者2人が手を上げたところ。「あ、ちょっとナイショにしてくださいね。これから解説するので(笑)」と田中氏。

マツダでは、設計段階での3D軸を、いままで数学で習ってきたX軸Y軸Z軸ではなく、TL・BL・WLというらしい。「X軸はTL、トランスバースライン。Y軸はBL、バトックライン。Z軸はWL、ウオーターライン」。

ここに、広島県府中市で“made in JAPAN”にこだわり、「究極の履き心地を追求したシューズメーカー」として息づくスピングルカンパニー開発担当の田上秀一氏が同じ思いを重ねる。「マツダが描く人間中心と同じく、わたしたちのつくる靴は身体の一部」。

「ロードスターに共通するのは、『まとう』というイメージ。シートの設計でもそう。人間にどれだけ近づけるか。ロードスターは小さいクルマなので、すべての部品が人間に近いつくり。開発当初からのコンセプトである、よりアフォーダブルにつくる必要があるけど、なるべくやわらかくつくっていこうという目標があった」(中山氏)。

中山氏はその端的な例として「ロードスターは歴代どれも、ドア内側はやわらかくつくって、インパネはカッチカチ。これは初代からそう」と伝えていた。

「メーカーとユーザの関係を大事にする」2社に共通するもの

メーカーとユーザの関係をなによりも大事にするマツダとスピングルカンパニーに共通する端的な例は、“リペア”だ。

「国産ハンドメイド スニーカー」として全国から注目されるスピングルは、「ソールの修理ができるとうれしい」というユーザの声に応えるべく、リペアをはじめた。そこには「国産ハンドメイド スニーカー」としての誇りと意地に裏付けされる「長く使ってもらいたい」という思いが込められている。

この思いは、マツダも同じ。マツダは2017年末、「NAロードスターレストアサービス」を立ち上げ、初代ロードスターを愛するユーザにむけて、「メーカーとして確実にレストアする」ことを約束した。

「海外の著名なスポーツカーメーカーと同じように、リペアなどに正面から向き合いたかった。事業として成り立つためには、プライスもそれなりにかかるが、部品を復刻して、きちんとレストアして、ユーザが思い描くNAにきちっと戻して届けましょうと」(中山氏)。

継承と進化「NDが100点満点とは思ってない」

広島からメイドインジャパンを世界に発信し続ける、マツダとスピングルカンパニー。スピングル田上氏が、「自社のバルカナイズ製法を進化させていきつつ、ほかの製法との組み合わせで、これまでにない国産シューズを追求していく」というと、マツダ中山氏は、こう追いかける。

「スピングルさんと同じように、われわれもクルマづくりの考え方は変えない。ロードスターについては、現行NDが100点満点とは思ってない。もっともっと、理想のロードスターを追求していきたい」。

そんな中山氏の意思表示に、ファンが質問する。「次のロードスター、フルモデルチェンジはどんなイメージがあるのか」と。

「フルモデルチェンジしなければ生きていけない時代がくる。時代の要請に応えられるように、がんばります。フルモデルチェンジのタイミングは、適切な時期に」(中山氏)。

倍率10倍、抽選で選ばれた参加者たちは、中山氏の直球的なトークと返答に拍手。そして彼はこう続ける。

「異業種とコラボすることで、マツダやロードスターに対する新しい気づきや発見、新しい角度からの見え方や切り口がみえたりする。今後もいろいろと、垣根をこえたコラボレーションで、新しい境地を共有していきたい」。

《レスポンス編集部》

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