2005年に日立建機が発表した双腕重機=『アスタコ』は、2本の腕を持つ重機だ。人間の腕のように左右で異なる動きができるため、これまで複数台の重機で行なっていた作業を1台で行える。
トークセッション「常識をうちやぶれ! 双腕重機の世界」では、日立建機で双腕重機シリーズの開発にたずさわった技術者の小俣貴之さんが、双腕重機にしかない技術や、アニメに着想を得たという発想などを語った。またデモンストレーションでは繊細で難しい作業を行なった。
トークセッションで小俣さんは、アスタコの開発の発端を、「重機がもっと器用になることを求められた」とする。たとえばガンダムのように、アニメに出てくる手が2本あるロボットなら器用なことができる。双腕なら、折り曲げる、両手で持つ、持ちながら切るといったことが可能だ。

小俣さんによると、開発を始めて最初に問題になったのは操作方法だった。従来の油圧ショベルは、オペレーターが両手を使って1本のアームを操作する。操作しやすいが2本のアームをもつアスタコには数が足りない。アスタコの開発以前、片腕1本でアームを操作するマスタースレイブ方式を開発しており、これは人間(マスター)の腕の動きをトレースして機械(スレイブ)の腕が動く。これは操作方法がとてもわかりやすいのだが、オペレーターが疲れるものだったという。
アスタコでは双方の利点を取り入れた。左のレバーで左アームを操作、右のレバーで右アームを操作することにし、それぞれにジョイスティックを水平に取り付けた。前後動、左右動、ねじり、レバーの全体回転で、アームを操作する。

小型タイプは東京消防庁で評価され、試験運用ののち、改良型が2011年に正式導入された。トラックに載せられるサイズで機動性に優れるいっぽう、これより小さいとガレキを片付ける能力が不足する、ジャストサイズだという。
大型タイプは、先行改良型が2011年の3月8日に発表された。3日後に東日本大震災が発生、被災地で活躍したという。日立建機の施設も被災し、運輸にも困難があったため、現地投入は5月だった。右と左のアームで違う作業ができるアスタコは重宝したという。たとえばガレキはたいてい絡みあっているので、ガレキをつかむ、切るが一台でできる。また解体現場で素材を分別できるので、ガレキを一時置き場に移動する必要も減った。市販モデルは2012年に登場している。

小俣さんによると、アスタコの開発では、アイデアの発想でロボットアニメの影響が大きかったという。「そういう想いで入社する人は多いと思う」。たとえばアスタコ初期型のドアは、キャビン前面にあり、上ヒンジで開いた。「ロボットの操縦席のドアはこういうものですよね(笑)」。しかし実用化にあたっては、安全のために普通のキャビン側面のドアになった。「開発者は断腸の思い、泣く泣く変更しました」。ただ、実際の開発では、やはりユーザーの意見やフィードバックが大きいという。

「目撃せよ! 双腕重機の世界」は3月31日13時00分~14時30分にも開催。参加費は無料、科学未来館の入館料も不要だ。定員は100名、事前申込不要。トークセッションは小学3年生以上を対象としているが、だれでも参加できる。また実演のみの参加も可能だが、観覧場所はトークセッション参加者を優先に案内する。主催は日本科学未来館、読売新聞社、フジテレビジョン、BS日テレ。また「『工事中!』~立ち入り禁止!? 重機の現場~」は5月19日まで開催している。
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— レスポンス (@responsejp) 2019年3月30日