二輪メーカー自ら「カスタムバイク」をアピールする理由

ホンダ・スイスが開催したカスタムコンテストで優勝した「HONDA CB1000R-adical」
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ここ数年、ヨーロッパでは二輪車メーカーが主導するカスタムプロジェクトやカスタムコンテストが人気を呼んでいる。ここで紹介するホンダの最新スポーツネイキッドバイク『CB1000R』ベースのカスタムマシンは、そのコンテストから生まれた最新のカスタムバイクだ。

世界的なカスタムバイクコンテストのトレンド


始まりは2013年、ヤマハ・モーター・ヨーロッパのカスタムプロジェクト「Yard Built(ヤード・ビルド)」だ。同社がラインナップしていた『SR』や『XJR』といったスタンダードなスタイルのネイキッドマシンをまとめた“ヘリテイジカテゴリー”のモデルをベースに、世界中のカスタムビルダーとタッグを組み、次々とカスタムバイクを発表。

カスタムという手法を使い、ヤマハ・モデルのデザインおよびパフォーマンスの拡張性をアピールした。そのプロジェクトは現在も続き、XSRシリーズを中心とした新しいスポーツヘリテイジカテゴリーを造り、またカスタムのベースはスポーツネイキッドモデルである『MT』シリーズにまで広がっている。そしてその成功にBMWやトライアンフ、モトグッツィやドゥカティが続き、個性的なカスタムバイクが数多く発表されている。

当初このトレンドに、ヤマハ以外の日本車メーカーは慎重な態度を示していた。しかしドイツやイタリア、フランスではスズキやカワサキが、のちにカスタムビルダーと共同で複数のカスタムバイクを発表。唯一、ホンダだけが傍観していた。

しかし2016年にイタリア・ミラノで開催されたモーターサイクルショーEICMA(エイクマ)で、イタリア・ローマにあるホンダのデザインR&Dセンターが、カスタムバイクさながらのデザインコンセプトバイクを発表。以来、多様な車種のコンセプトモデルも登場。同時に、カスタムビルダーや欧州のホンダディーラーがカスタムしたバイクがさまざまなイベントのホンダブースに展示された。

圧倒的「いいね!」を獲得した「ホンダ CB1000R-adical」


冒頭で紹介したホンダCB1000Rベースのカスタムマシンは、スイスのモーターサイクルショー「SWISS-MOTO(スイス・モト)」において、ホンダ・スイスが開催したカスタムコンテストで優勝した車両だ。

このコンテストはスイス中のホンダディーラーが制作したCB1000Rベースのカスタムマシンの写真を、ホンダ・スイスのFacebookページにアップ。それぞれの車両の「いいね!」 数で順位を決めるというものだ。10台がエントリーし、上位5台がSWISS-MOTOのホンダブースに展示された。そして『HONDA CB1000R-adical』と名付けられたこの車両は、会場でも圧倒的いいね!数を稼いで勝利した。

車両制作を担当したのは2人のチーム。欧州と日本をベースに自動車をはじめとするさまざまなプロダクトデザイン、さらにはカスタムバイクのデザインを行っている「Gannet Design(ガネット・デザイン)」のUlfert Janssen(ウルファート・イェンセン)。そして元MotoGPのレーシングメカニックであり、スイスでホンダディーラー兼カスタムバイクビルダーとして活動する「Fuhrer Moto(フューラー・モト)」のStefan Fuhrer(ステファン・フューラー)だ。ウルファートのデザインスタジオと、ステファンのワークショップは100mほどしか離れておらず、2人はこれまでもカスタムバイクを手掛けてきたという。

このHONDA CB1000R-adicalは、フレームやエンジンといった車両の基本コンポーネントに変更を加えることなく、ややリラックスしたポジションを造り上げていたバーハンドルを、オリジナルで製作した低く幅が広いセパレートハンドルに変更。ライディングポジションをよりスポーティなものとした。さらには軽量で高剛性なカーボンセラミック素材を使ったフロントフォークや高性能なリアサスペンション、そして軽量なカーボン素材の前後ホイールに変更することで、車体の運動性能も高められている。


またエンジン下のアンダーカウルや、シート後端のシートカウルを新たに製作することで、外装類が少なくキャラクター付けが難しいネイキッドモデルのボディバランスを再構築。スタイリング面においても、スポーティさを増した。そしてこのカスタムバイクを印象づけるカモフラージュのペイントは7層に塗り重ねることで、外装類に不思議な立体感を生み出している。

メーカー自らカスタムバイクをアピールする理由

カスタムバイクとは、パーソナライズだ。車体をカスタムするカスタムビルダーや、そのバイクを所有するオーナーの個人的な嗜好が大きく反映される。したがってメーカーはかつて、カスタムの世界には踏み入らず、その“個人的な嗜好”を分析し、次期モデルの開発に活かしてきた。しかし近年は、メーカーが積極的に各モデルの拡張性をアピールし、発表した各モデルが“個人的な嗜好”に近づけられる可能性を秘めているとアピールしている。

そういった視点でヨーロッパのカスタムバイクシーンを眺めると、開発者が各モデルに込めた秘めた思いも透けて見えてくる。

《河野正士》

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