「Mobility 3.0」とは? 世界最大のコンサルティング会社、アクセンチュアが予測

アクセンチュアが開いた『「Mobility 3.0」時代の覇権シナリオ』と題したプレゼンテーション
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世界最大の経営コンサルティング会社であるアクセンチュアは5月27日、「『Mobility 3.0』時代の覇権シナリオ」と題したプレゼンテーションを開催。100年に一度と言われる変革期にある自動車業界において、覇者となり得るための条件は何か、同社としての展望を説明した。

CASEは新たなビジネスチャンスをもたらす

今、自動車業界でもっとも注目されているキーワードの一つが『CASE(ケース)』だ。これは2016年10月のパリモーターショーで独ダイムラーのディター・ツェッチェCEOが発表した中長期戦略の中で用いたもので、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取った造語である。100年続いた自動車産業はこれを契機に大きな変革期を迎え、今後はこの流れが加速していくというもの。アクセンチュアはこのCASE時代のモビリティサービスを同社ならではの視点で示したのだ。

それによると、CASE時代ではバスやトラムなどの公共交通機関はシャトル型へとスタイルを変え、レンタカーはカーシェアに、タクシーはライドシェアが当たり前となる。そして、カーシェアやライドシェアはやがて自動運転タクシーとして定着していく。また、物流の分野では、幹線物流/宅配物流は一手の範囲で移動型店舗やオフィスへと役割が分担されるようになっていくと予測する。モビリティサービスの将来は自動運転によって収束に向かう

さらに自動運転が進むことで企業は事業展開がしやすくなり、これが利益を生み出すモビリティサービスへと発展していく、そのきっかけにつながる。これによって影響を受けるのは自動車関連業界だけにとどまらず、通信、ハイテク、金融、電力など多くの業界にまで及び、それらの分野で新たなビジネスモデルが数多く生まれてくるとアクセンチュアは予測しているのだ。

特に説明で強調されたのが、従来なら自動車は免許保持者だけが対象だったのに、新たなモビリティサービスでは“移動弱者”と言われてきた免許不保持者を含む70億人までも対象となることだ。現状で免許保持者は10億人にとどまり、単純に考えればマーケットは7倍にまで広がる。つまり、マーケットが広がれば異業種からの参入があっても市場は十分に成立するというのだ。アクセンチュアが示す『Mobility 3.0』で描く5つのイメージ

CASE時代の主導権を握る「GAS」

では、どのような企業がその覇者になり得るのか。その具体的なシナリオとしてアクセンチュアが示したのが『Mobility 3.0』である。そこで描いているイメージは以下の5点だ。

●ハンドルのない車と交通事故のない社会……都市部の移動の多くがロボットタクシー/バスに大幅にシフト。人の介入がなくなることで事故率は激減。
●移動の必要のない新たなライフスタイル……デリバリーサービスや仮想現実の発達により単純な移動が減少し、移住による新たな経済圏が誕生。
●不動産化ビジネス化するモビリティ……車両のモジュール化により外装/内装を、店舗やサービスなどに合わせて用途別にカスタマイズする移動式不動産型モビリティの普及。
●渋滞から解放されたメガロポリス……すべての交通手段を中央管理。従来が激減し、駐車場や店舗跡の都市開発が加速。
●無料モビリティサービスの普及……自動化による移動コストの低下により無料移動サービスが普及、背景には広告や送客効果がある。

これらがもたらされることで、CASEはその牽引力が掛け算で効いてくるという。すでに電子化やコネクテッド化などによってメリットが生まれていることは、現状の自動車関連ビジネスでも見ることはできる。今後はさらに自動化が進むことで、重層的パラダイムシフトでマーケットはより拡大していくというわけだ。自動運転によって、CASEは掛け算で効いてくる

こうした中、その主導権を握るとアクセンチュアが見ているのがITジャイアント企業である「GAS(グーグル、アマゾン、ソフトバンク)」だ。プレゼンテーションではそのうちのグーグルとソフトバンクの戦略にスポットを当てて解説が行われた。

米アルファベットのモビリティ戦略は大きく3つに分けられるグーグルは今、2015年に新たに設立した持ち株会社「アルファベット」の傘下にあるが、そのアルファベットが進めるモビリティ戦略は以下の3つ。(1)グーグルによる「“車載システム”視点」、(2)ウェイモによる「“移動サービス”視点」、(3)サイドウォーク・ラボによる「“都市づくり”視点」。それぞれが独自に戦略を練ることで、各分野での強みを発揮するというものだ。アクセンチュアでは「グーグルで獲得した膨大な顧客データ基盤を移動サービスと都市づくりへの伸びゆく手をさらに伸ばそうとしている」と説明する。

ソフトバンクはライドシェアを核に顧客データ基板の獲得に動いているそして、ソフトバンクは近年、欧米のウーバー、東南アジアのグラブ、中国のディディ(滴滴出行)、インドのオラなど、世界中のライドシェアプレイヤーとの提携を積極的に進めてきた。この提携は単にタクシー代わりの事業を目的としているだけではないとアクセンチュアは説明する。その根底には、この4社が抱える膨大なドライバーを通じて豊富な顧客基盤データを獲得することにあるという。これは、車両やサービスへのニーズを把握できることにつながり、それはソフトバンクが充電インフラやメンテナンス、保険、広告/送客まで含むビジネスチャンスを優位に進めていくものと見ているのだ。

難局を乗り切るために必要なのは“未来を描く力”

5Gの商用化によってもたらされるメリットも説明された。それによると、5Gには高速・大容量、低遅延、多接続という特徴があるが、その効果によってモビリティへの期待は一層高まっていくという。海外では5Gの商用化が既定路線となっており、今年のMWC2019では年内にも商用化をスタートさせようとしている国が相次いだのは記憶に新しい。日本はやや出遅れてしまっている感はあるものの、その特徴を活かした実証実験が通信各社によって盛んに行われているところで、今後はさらなるユースケースの広がりと、実ビジネスでの利用が大きなチャレンジになるとした。

他にも金融面では走行状況を把握しやすくなることで、ローンや保険などのリスクマネジメントも効果を発揮するだろうし、それらはユーザーにとってもメリットをもたらすやず。そういった対応が安全運転にもつながっていくというわけだ。また、電気自動車(EV)のバッテリーを利活用することで、EVそのものを“動く蓄電池”として捉えることが可能になる。これは再生エネルギーの課題を解決する重要なキーポイントになっていくとアクセンチュアは説明する。

つまり、『Mobility 3.0』によってもたらされる「破壊的イノベーション」の影響は極めて大きく、「こうした状況に対して適切な戦略を立案することで難局は乗り切れる」というわけだ。プレゼンでは「日本企業が兼ね備えるべきは“未来を描く力”に加え、“しがらみ”に囚われない戦略が断行できる組織とオペレーション体制にある」として最後を締めくくった。

《会田肇》

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