アンチ派にこそ注目してほしい、メルセデス・ベンツ Aクラス 新型…静かでエコなディーゼルモデルに試乗

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メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)
メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)全 48 枚

メルセデス・ベンツをどう思う? そんな問いかけをしたら、多くの人は高級、安全、伝統と答えるだろう。しかしその反面、権威主義的とか、保守的とか、親戚のオジサンが乗っているとか、そんなイメージでメルセデスを捉えている人も案外多い。しかし僕は、そんなアンチ派にこそ新型『Aクラス』に注目して欲しいと思っている。

理に叶ったデザインと革新的な先進機能

まずは外観。Aクラスのデザインはとても若々しい。両端にシャープなヘッドライトを埋め込んだフロントは、いかにもよく走りそうな面構えをしている。サイドに回ると、短い前後オーバーハングや大径タイヤ、美しいルーフラインがスピード感を伝えてくる。と同時にドッシリとした安定感をも伝えてくるのは、ドアパネルの面積に対しサイドウィンドウの面積を小さめにとっている効果だ。こうしたスポーティネスの表現においてAクラスはライバルたちを一歩リードしている。それでいて室内が決して狭苦しくないのは実に巧みな設計だと思う。もう一点、デザイン面で注目したいのがCピラーの位置と形。ルーフから降りてきたCピラーの視覚的重量感をリアタイヤがしっかり受け止めている。太さ、角度、面の張り、位置など、すべてが計算され尽くした造形は見事というしかない。ある一定の角度から見たときだけでなく、どこから眺めても違和感がなく、すっと腑に落ち、理屈抜きでかっこいいと思えるのは、Aクラスが理に叶ったデザインを身に纏っていて、それが人間が本能的にもつ審美眼にアピールするからだ。

メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)

そんな高度なデザイン力に華を添えるのが、ひと目でメルセデス・ベンツだとわかる強いアイデンティティだ。最近、多くのクルマが大きく口を開けたグリルを採用している。たしかにアイデンティティのアピールには効果的だが、メルセデスのデザイナーはそういう安易な方法ではなく、もっと本質的な部分で「らしさ」を表現する方法にチャレンジしている。試しに写真のグリル部を指で隠してみて欲しい。それでもきちんとメルセデスに見えるはずだ。なぜか? それは、彼らが過去の自社製品に常に最上級の敬意を払っているからに他ならない。もちろん、技術の進化やトレンドの変化によって求められるデザインは変化する。しかし、彼らは過去を否定するのではなく、130年以上にわたる過去を採り入れ、消化しながら進化させている。この連続性が、他のどのクルマにも似ていない「メルセデスらしさ」を生みだしている理由だ。

一方、クラッシャブル構造のボディやABS、SRSエアバッグ、ESP(横滑り防止装置)など、いまでは当たり前になっている数々の安全技術をいち早く採用するなど、メルセデス・ベンツは常に最新技術を自社製品に与え続けてきた。当然、新型Aクラスにも最新の安全装備が用意されている。

だが、革新へのチャレンジは安全装備にとどまらない。「ハイ、メルセデス」でお馴染みの「MBUX」はその代表例だ。音声認識率はさすがにiPhoneやAndroidに及ばないものの、イライラさせられるようなことはないし、何よりクルマと一体化しているのが最大のアドバンテージだ。たとえば「暑い」と言えばエアコンの温度を下げてくれるし、「アンビエントライト イエロー」と言えば、車内間接照明の色を黄色に変更してくれる。スマホではクルマに直結した機能のコントロールできない。機能が多いだけに納車直後から100%の機能を使いこなすことはできないだろうが、スマホ世代なら使い込むうちに便利さをジワジワ実感し、慣れたらこれはもう手放せないなと思うようになるのではないか。

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コックピットも斬新だ。横長の液晶ディスプレーを継ぎ目なく2枚並べたメーター周りはまるで未来からやってきたクルマのよう。しかし冷たい印象はなく、きちんと寛げる空間に仕上がっている。質感へのこだわりも素晴らしく、センターコンソール周りの美しいピアノブラック仕上げ、精巧なスイッチ類、『Sクラス』を彷彿とさせる存在感のあるエアコン吹き出し口など、この価格帯のクルマとしては文句なしにトップクラスの出来映えだ。

トータルの静粛性はガソリンモデルと遜色ないレベル

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今回試乗したのは新たに加わった「A 200 d」。最新の2リットル"超"クリーンディーゼルエンジンを搭載したモデルだ。「A 180」の1.4Lガソリンターボに対し出力、トルクともにリード。とくに最大トルクは1.6倍に達し、しかもそれを1460rpmというアイドリングに毛が生えたような低回転域から発生する。

スタートボタンを押してエンジンをかける。耳を澄ませば遠くの方からかすかにディーゼルらしい音が聞こえてくるが、言われなければディーゼルだと気付かない人も多いのではないか。加速時巡航時を含め、トータルの静粛性はA 180と遜色ないレベルに達している。

停止状態からアクセルを軽く踏み込むと、8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のクラッチが滑らかに繋がってボディを力強く押し出す。DCTは効率の高さと素早い変速が特徴だが、反面、極低速域でスムースさに欠ける挙動を示す傾向がある。その点、A 200 dのDCTはクラッチ制御が巧みで、発進時はもちろん、駐車時に必要な微妙なアクセル操作に忠実に反応してくれるのが嬉しい。

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街中で周囲の流れに乗って走るような状況では、アクセルを深く踏みこむ必要はない。感覚的には、ペダルに乗せている右足にわずかに力を入れるだけ、で思い通りに加速していく。当然、エンジン回転数は常に低く抑えられ、持ち前の静粛性がさらに際立つ。高速道路に入っても印象は変わらない。交通量の多い都市高速を走っているとき、ふとメーターを見ると回転数はわずか1250rpm! しかも、そこからアクセルを軽く踏み込むと即座に分厚いトルクが沸き上がり、ハイギアをキープしたままグーーッと加速していく。なるほど燃費がいいわけである。60~80km/hで巡航していると、車載の平均燃費計は25km/Lを超え、26,27、28と上昇していった。

Sクラスと同等の先進安全装備が車内空間も充実させる

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A 200 dにはSクラスと同等の先進安全装備が用意されている。ひとつひとつ説明していたら収まりきらないので割愛するが、日常的にもっとも使うのが「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」だ。これを自動車専用道路で起動させると先行車追従が始まり、渋滞時を含め、アクセルとブレーキのコントロールが基本的に不要になる。加えて、アクティブステアリングアシストが意図しない車線逸脱を防ぎ、アクティブレーンチェンジングアシストが安全な車線変更をサポートする。自動運転ではないから常にドライバーが主体となって監視を続ける必要はあるが、安全性を高めるだけでなく、長距離ドライブ時の疲労防止にも大いに役立ってくれるシステムだ。実際、撮影場所の千葉へと向かう車内では同行したスタッフと四方山話に花が咲いた。優れた静粛性、余裕の動力性能、よく練り込まれた先進安全装備など、ドライバーをリラックスさせ、会話を途切れさせない能力のおかげだ。

そんななか、唯一予想外の反応を示したのがMBUXだ。会話の中の「メルセデス」という言葉に反応して「何を行いますか?」と聞いてきた。オーナーになったらそうそう使う言葉ではないと思うが、もし気になるなら会話ではメルセデスの代わりにベンツとかAクラスとか独自に付けたニックネームとかを使うといいかもしれない。そうそう、MBUXや安全装備はオプション扱いだが、ほとんどのオーナーが選択しているとのこと。利用するとオプションが50%オフになるプレオーダーメルセデスを上手に利用することをオススメする。

新鮮な驚きを覚える軽快な走り

メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)

高速道路を降り、山間部へと向かう。荒れた路面での乗り心地はちょっと固めだが、路面からのショックはきっちりと角が丸められているし、振動の収まりもいいから不快感はない。上りにさしかかるにつれカーブが増えてきた。こうしたシーンで前面に出てくるのがスポーティな身のこなしだ。コーナーへの進入ではステアリング操作に対し鼻先がスッと遅れなく素直に反応し、コーナーでは4本のタイヤがしっかり路面に接地している様子が伝わってくる。ちょっと分析的な表現になったが、要は気持ちよく、安心して山道を走れるということだ。また、意外な収穫だったのが、アクセルを積極的に踏んでいったときのエンジンの気持ちよさ。快音を響かせながら矢継ぎ早にシフトアップしていくフィーリングはスポーティとさえ表現できる。「最新のディーゼルはよく走る」という予備知識をもって乗ったとしても、軽快な吹け上がりと8速DCTの小気味よい切れ味には新鮮な驚きを覚えるに違いない。

このエンジンにはもうひとつ大きな特徴がある。世界トップのクリーン性能だ。2020年からスタートする、世界でもっとも厳しい欧州の排ガス規制を前倒しでクリアするべく、メルセデスはプチ化学プラントと言ってもいいほど手の込んだ排ガス浄化装置を与えてきた。具体的には、微粒子状物質を捉えるフィルターと、窒素酸化物を減らす酸化触媒&尿素SCRに加え、新たにアンモニアスリップ触媒を搭載。余剰なアンモニアをここで処理することで尿素を十分に噴射することができるようになり、結果として窒素酸化物の排出量を減らすことができた。他メーカーが起こした事案とはいえ、いわゆるディーゼルゲート事件を受けドイツではディーゼルエンジンへの逆風が強まっている。しかし、メルセデスは決してディーゼルを諦めていない。中途半端なことならしない。やるなら完璧を目指す。「最善か無か」という言葉で知られるこのフィロソフィーを余すところなく表現しているのがA 200 dの新型ディーゼルエンジンである。

ワインディングロードを気持ちよく走り、撮影を済ませ再び都内を目指す。エンジンを思い切り回した影響で一時は20km/L付近まで低下していた燃費だが、東京タワーが見えてくる頃には23km/Lに戻していた。軽油の価格を考えれば、ハイブリッドに勝るとも劣らない経済性の持ち主である。この走りにしてこの燃費は驚異的と言うしかない。そして何より、ロングドライブをこなした後でも疲れをほとんど感じなかったことが、A 200 dの実力をはっきりと示していた。

岡崎五朗氏岡崎五朗氏

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《岡崎五朗》

岡崎五朗

岡崎五朗:モータージャーナリスト / AJAJ理事 1966年東京生まれ。青山学院大学理工学部機械工学科在学中から執筆活動を始め、卒業と同時にフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始。1年間に試乗する車は150台以上。「生活を共にして気持ちが良いかどうか」が車を評価するうえでの最大の関心事項。ahead、engine、yahoo!ニュースなどに寄稿のほか、SNS等でも自動車関連情報を積極的に発信している。tvkテレビ神奈川の自動車情報番組「クルマでいこう!」MC。近著に「EV推進の罠」ワニブックス、「SDGsの不都合な真実」宝島社、がある。

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