【レクサス RC F 新型試乗】“普通に”超高速走行を楽しめる。そこに「F」の真髄あり…桂伸一

レクサス RC F 新型
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新生『RC F』の試乗は、富士スピードウエイの本コース、つまり高速サーキットを舞台にいきなり全開走行から始まった!! いや別に全開にする必要はないのだが、この平らな舗装の上を60km/hで走って“乗り味や静粛性がどうの…”と言っても、市街地とは明らかに条件が違い過ぎるので意味がない。

それよりも、いきなり全開走行を始めても、ドライバーの“気負い”をスンナリ受け流すRC Fの寛容さ、懐の深い安定、安心感は、従来からさらに進化している。富士を意味する「F」と付くモデルにとって、超高速コーナリングもある本コースは、慣れ親しんだ自分の庭を散歩するような気軽さなのだろう。

ともかく、何の癖もなく普通に操縦して速く楽しく超高速走行できる。

直進安定性の確かさは世界規準と言っていい

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エンジンは自然吸気5リットルV8を481ps/54.6kgmまで高め、8速ATを介して後輪を駆動するFR(フロントエンジン・リア駆動)レイアウト。いまや絶滅危惧種に違いない大排気量ユニットと純粋なFRの組み合わせは、存続させる必要があるクルマの基本中の基本、と個人的には思う。

アクセルを深く踏み込むとV8の高周波サウンドが心地良く、7300rpmで回転リミッターを連打する勢いが従来よりも早い気がする。吸気系の改良と軽量化と、ファイナルのギヤ比をローギヤード化、つまり加速性能を高める設定にした事が関係する。

フル加速すると1速はあっという間にフケ切り66km/h、2速110、3速157、4速200、5速240、6速249km/hで余裕を持ってのブレーキング開始。直線が終わるから減速するのであって、6速はまだ伸びて行く途中。この直進安定性の確かさは世界規準と言っていいレベルの高さにある。最高速を出しながら思うがままにレーンチェンジを繰り返しても、安定性に影響する動きは微塵も感じさせない。

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アクセルレスポンスに優れたためか、Dレンジの自動シフトであれば問題ないが、パドルを使うマニュアルシフトでは、回転リミッターに早期に当りやすく、一度当てるとパドルを引く操作をしてもシフトアップまでにタイムラグが生じる。そこは要改善ポイントだし、何故そうなるのかを尋ねると「トヨタ規準から外れるため」だそう。その瞬間にシフトアップさせるとシフトショックが大きいと言う意味だが、リミッター連打で加速が失速して減速Gを感じる方が不快である。

市街地走行でのV8サウンドは低回転からビートと音量の変化に抑揚があっていい。だがサーキットは常に中~高回転を維持するためか、“ヴィーン”と一定のビートのまま中~高回転を行き来する。いまどのくらいの回転域なのか、ソコをビートと音質の変化、まさに抑揚の盛り上がり感でも表現して欲しい。

多くの「F」ユーザーを生む要因

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従来からRC Fは誰が乗っても扱いやすい性質から、まずはこれがトヨタ車の規準になればトヨタのプレミアム性は一気に引き上げられる、と進言させて頂いた。もちろん1台に掛けられるコストが大きく違う事は承知しているが、世界のライバルの進化を考えると「いいクルマ造り」に、コストを削りつつもやはり高品質なパーツの組み合わせは重要な要素になる。今回の進化版RC Fを知る程にその思いはさらに強くなった。

富士の難関は高速旋回中に減速と加速を繰り返す100Rと、最終のパナソニックコーナーから手前のふたつ、GRスープラコーナーと第13コーナーのタイトなセクションで、路面の傾斜等の変化にいかにタイヤを接地させ、曲げる動きと駆動力を伝える事がいかに正確に安定して行なえるか、にかかる。

RC Fはドライバーに特別な操作をさせる必要がない、というところが最も優れた点であり、曲がりたい所でステア操作し、アクセルを踏み込めば駆動力は確実に伝わる。車輌安定装置VSC-ONの状態では、もう誰もがサーキット走行の限界手前で平和に楽しめるのだが、多くの「F」ユーザーを生む要因はここにあると思う。

もちろんブレーキングポイント等、減速すべき所は必ず落として、と言う意味で、アクセルの踏み込みが早いとか荒い操作等は、VSCの制御が自然に介入して安定させるのだが、それがなかなか介入しないところにクルマの素性の良さが表れている。

「パフォーマンスパッケージ」で全開走行!

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一方、VSC-OFFにして本気のアタックモードに入ろうとすると性格は劇的に変化する。コレは新たに設定された「パフォーマンスパッケージ」で味わう。 

エンジン関係もグラム単位の軽量化を実現しているが、カーボンを多様した外装、専用タイヤにサスペンション、380mmのカーボンセラミックブレーキ、チタンマフラー他により、従来車から70kgの軽量化。これで富士を攻めるのだから、違いは明白。200km/hオーバーの高速直進性の沈み込むような安定性が安心感として増強された感触。

安定制御の類が介入しない素の状態は純ナマの481ps/54.6kgmがタイヤに伝わる。しかし基本的な操作をしている限り、癖も無く挙動は安定している。コーナー進入でステア操作した瞬間のタイヤの応答性の確かさと、旋回中にアクセルを強く深く踏み込んで行っても、横には逃げず踏ん張るグリップ力、横Gの高さはレースカーに近い。

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ステア操作と同時に意識してアクセルを早く深く踏み込むと、狙い通りのパワーオーバーステアも誘発できる。意図して起こせるオーバーステアはクルマの操縦性の正確さの表れでもある。パワーオーバーステアをステアリングの修整とアクセルコントロールで姿勢を操る術もコツさえ掴めば簡単に…というにはサーキットを相当走り込む必要はあるが、それを難なくこなせる所にRC Fの存在意義がある。

走行モードの切り替えで市街地を快適に走行し、そのままサーキット走行も平然と行なえる。新たな“パフォーマンスパッケージ”はそのサーキットの部分をより強力に高めている。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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