【三菱 アウトランダーPHEV 新型試乗】現行アウトランダーの完成系がこれ!…中村孝仁

マイナーチェンジの肝は

とにかくスムーズな走り

完成形に近づいたアウトランダーPHEV

三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)
三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)全 23 枚

マイナーチェンジの肝は

いつもながら三菱『アウトランダー』の試乗は出遅れてしまう。今回もマイナーチェンジ版がデビューしてからすでにだいぶ月日がたってしまった。

では今回のマイナーチェンジの肝は?まずはエンジンだ。従来の2リットルに代えて、より強力な2.4リットルエンジンを搭載した。勿論パワーアップを果たしている。パワーアップは後輪側のモーターにも及び、従来の82psから95psに引き上げられた。因みにエンジンの方は128ps、199Nmである。

三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)
今回試乗したのは前回と同じ最上級グレードとなる「Sエディション」だ。このSエディション、2リットル時代もリアゲート回りを中心に、構造用接着材を使って剛性アップを果たしていた。それが今回はその使用範囲を広げて、前後ドアなどに拡大されている。いわゆる開口部に接着剤を多用した、という印象だがどうもこれはかなり効いているようで、従来よりもさらに骨格の力強さというか、剛性感の高さを感じさせてくれる。

2年前に試乗した時は一般道ではその効果が実感できず、路面の補修跡を通過する際に、その突き上げ感と余韻が残ると書いたが、今回そんな兆候は見られず、「部分部分を強化すると、そこは良くなるだろうが、全体として見た時に入力された力の逃げ場所が無くなって、結果としてそれがアンバランスを生んでしまった印象が否めない」と書いた前回から、今回はその使用範囲を拡大したことによってバランスの取れた骨格が出来上がったのかと想像するわけだ。

電気を有効に使う

三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)
元々、基本的に電動で走ることが前提で、エンジンは黒子的役割を果たすように作られているモデルだが、田町の三菱本社からクルマを借り出して家までおよそ30kmほどの距離は、すべて電動で走ってしまう。電動走行距離も若干バッテリーの容量を増やしたことで少し増えて65kmとなったそうだが、額面通りに受け止めれば往復電動走行が可能で、もしこれが通勤距離だとすると、ガソリンは使用せずに走れることになる。

三菱ではこのアウトランダーPHEVと共に新たなサービスDDHを展開する。これはアウトランダーとセットで家庭用の太陽光発電機やそれを家庭に導く機器、設置工事、さらにはクルマと家を繋ぐ機器などすべてをパッケージにして販売し、クルマを家庭用電源の一部に組み入れる仕組みそのものをワンパッケージとして販売しようという構想。今年からそのサービスを展開する計画だという。勿論メンテナンスもやってくれる。

話が横道にそれてしまったが、電動車両をより有効に使おうという取り組みで、PHEV普及の一助になればよいが、もっと電動車を三菱にも増やして欲しいという願いもある。

とにかくスムーズな走り

三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)
2.4リットルを搭載した結果、パフォーマンスがアップしているだろうことは想像に難くないのだが、正直その恩恵なのかはたまたクルマの出来が良くなって全体的にフリクションが取れ、変わっていないはずのモーター(フロント)のパワーアップを感じるのかどうかは不明だが、とにかく走りがスムーズである。

何より、非常に静粛性が高くなってエンジンが明確に介入した瞬間がほとんどわからない。いつの間にやら、あれ?エンジンかかっているわ、っていう状況が多かった。シフトポジションを表示するシフトレバー根元の左右にEVモードとノーマルモードからチャージモードやセーブモードに移行するプッシュボタンが付く。敢えて、EVを押さなくてもバッテリーさえ満足に充電されていれば、ほとんどの場合電動走行だから、これ要る?という印象も。

またセーブモードにしてもあまりセーブされている印象はなく、かといってパワーが極端に落ちて走行に影響を与えるわけでもなく、こちらもセーブモード要る?という印象。つまりノーマルモードとチャージモードさえあれば、事足りるという感じであった。

言い忘れたが、もう一つスポーツモードがある。これを押すとまさにビタミン剤注入!という感じになる。電気残量を気にしないで走れる向きには、胸のすく加速が味わえる。さらにこの周辺にはもう一つツインモーター4WDの切り替えスイッチがあるが、試してみたところでドライのオンロードで走行の変化はほとんど感じ取れなかった。

完成形に近づいたアウトランダーPHEV

三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)三菱 アウトランダーPHEV(Sエディション)
一週間、約400km走行し、この間ガソリンは補給したが、充電はせず。ちょっと充電してみたい衝動にはかられたが、急速充電機では最近PHEVが充電しているとピュアEV車オーナーから文句が出るという話も聞いたので、中止。でも、走行には何の問題もない。恐らく多少燃費は悪かったと思う。

というわけで全体としてとても良くできたPHEVだし、従来の2リットルエンジン搭載車と比較してもさらに完成形に近づいたと思う。

唯一気になったのは、三菱自身が『eKワゴン』の試乗会で話していたペダルの角度が悪くて走行中にアクセルペダルから足が離れてしまうため、ペダルの角度を変えましたというくだり。これ、どうやらアウトランダーにも当てはまるようで、1週間で3度滑ってペダルから足が離れたことがあった。eK同様こちらも要改良のような気がする。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. 日本にはないアバルトの高性能SUV、『パルス アバルト』が大胆イメチェン!
  4. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る