踏切事故を起こした時…損害賠償、懲罰はどうなる?【岩貞るみこの人道車医】

踏切(イメージ)
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【踏切事故を起こしたら?】2019年6月19日午後2時55分、神奈川県厚木市にある小田急小田原線で、踏切内で立ち往生したミニバンに快速電車が衝突し、一両目が脱線するという事故が起きた。

鉄道会社の急ピッチの作業で、翌20日始発から運転再開したけれど(いつもながら工事関係者の方々の底力には唸らされる。機会があればぜひ、取材をさせていただきたい!)、8万9000人の乗客に影響が出た。

こうなると、損害賠償は誰がどう負担するのか気になるところだ。特に今回のように、8万9000人も影響が出て、代替輸送するためにバスを手配したとなると、そうとうな金額になることは必至なのである。

クルマと鉄道の事故、損害賠償は

損保会社によると、発生する損害賠償は、

1)脱線復旧作業代
2)電車の修理費
3)運行振り替え輸送費
4)鉄道会社への補償
などになるらしい。怪我人がいたら、さらに、ということになる。

金額を算出すると同時に、交通事故同様こうした事故も事故調査が行われて過失割合を決めることになる。

・ドライバーに違法行為はあったのか。
・クルマの機能に不具合はなかったか。
・踏切に不具合はなかったか(穴があいていて抜け出せないとか)。
・非常停止ボタンは正常に機能していたか。
などが調べられるというわけだ。

被害総額を過失割合で計算し、ドライバーが支払うべき補償額が出る。いくらになるかは、事故被害によるけれど、過去には3億円を超えた事例もあったと漏れ聞く(未確認)。

3億円!

凍り付きそうな額だけれど、これ、任意保険の対物賠償保険に入っていればそれで対応が可能なのである(自賠責保険は、対物は補償していない)。

ありがたい、任意保険! こういうときにこそ、任意保険! 対物は、できることなら無制限で入っておこうと強く勧めたい。

故意か過失か

では、刑法的にはどうなるか。

中京大学法学部教授で弁護士の中川由賀氏によると、こうした踏切事故の場合は、刑法の往来危険罪になるという。つまり、犯罪行為であり、懲罰(懲役や罰金)の対象になるのだ。

ただし、故意か過失で、大きく分かれるという。

故意であれば、125条の往来危険罪「鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する」にあたる。

一方、過失であれば、129条の過失往来危険罪「過失により、汽車、電車の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する(一部抜粋)」に該当する。

つまり、故意なら懲役。過失なら罰金である。

「前のクルマがつかえていて、踏切内で立ち往生してしまった」という場合(前述の小田急線事故とは関係なく)、過失になると思われるけれど、やはり鉄道事故の影響を考えると、過失している場合ではない。踏切では、一時停止して、周囲の安全を確認してからじゃないと、わたりはじめてはいけないのである。

高速道での事故の場合

ところで、損害賠償といえば、高速道路での事故はどうなるのだろう。高速道路上で事故を起こし、通行止めになったら売り上げは落ちるはずだ。サービスエリアだって、クルマが通らなければ客は来ない。そのぶんの損害賠償請求は……請求されない! そう、されないのである。

高速道路事業者に確認すると、この通行止めによってどのくらいのドライバーが高速道路を「使わなかった」のか正確な数字が出せないため、損害賠償請求はしないのだそうだ。サービスエリアも、どのくらい客がきて、品物を購入したか証明できないわけだし。

ただ、事故を起こしたドライバーも、払わなくていいと浮かれている場合ではない。もしも、ガードレールや中央分離帯などを壊したら、これらは当然、修理代の支払いが命ぜられる。

やっぱり大事、任意保険。ちゃんと入ろう、任意保険。そして、なによりもまず、事故を起こさないことが大切なのである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

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