「ライダーの夢あきらめないで」自宅から北海道までバイク輸送、老舗が仕掛ける新戦略とは

個人宅から北海道へのバイク輸送サービスをおこなうゼロ・プラスBHS
個人宅から北海道へのバイク輸送サービスをおこなうゼロ・プラスBHS全 22 枚

夏の北海道といえば、ライダーたちの聖地。日本海オロロンラインを走って目指す最北端・宗谷岬、丘のつらなる絶景広がる富良野・美瑛、雄大な眺望がきく開陽台などバイク乗りなら感動間違いなしで、その魅力は語り尽くせない。

【画像全22枚】

しかし、正直なところ遠い。つまり、行くまでがタイヘンだ。学生時代は存分にあった休みを利用して、テントと寝袋をリアシートにくくりつけて、それこそ月単位で北の大地を周遊できたかもしれない。80年代のバイクブームの頃は、無料や格安で利用できる「ライダーハウス」やキャンプ場が数多く点在し、もはや住み着いてしまっている“ぬし”なるものまで存在したほどだ。


荷物を満載にしたバイクはその見た目やブーンという音から“ミツバチ族”とも呼ばれ、社会現象にもなったほど。ちなみに鉄道やバスで周遊する若者たちは“カニ族”で、大きなバッグを背負って横歩きすることに由来している。

筆者もそのうちのひとりだった。学生時代はフェリーで丸1日かかろうとも、国道4号線をひたすら走って青函連絡船で津軽海峡で上陸しようとも、あるいは夜行列車にバイクを積む「MOTOトレイン」にガタゴト一晩中揺られても、それを含めて夏のバカンスとして心底楽しんだ。しかし、今となってはそんなに長い休暇はもう取れない。北の大地は、いつの間にか学生時代の想い出、過去のモノとしてあきらめてしまっている。

費やす時間や手間、料金的に考えても魅力絶大!!

ゼロ・プラスBHSの車両保管庫には、北海道へ運ばれるバイクもゼロ・プラスBHSの車両保管庫には、北海道へ運ばれるバイクも
「ライダーの夢、あきらめないで!」と立ち上がったのが、創業40年以上のバイク輸送会社であり、2016年12月には自動車輸送最大手のゼログループとなったゼロ・プラスBHSの橋本健生社長だ。毎年7~9月の期間限定で、自宅から苫小牧まで愛車を運ぶ「北海道ツーリングパック」を5万9900円(税抜き750cc以下、東京の場合)というサービス価格で提供し続けている。

ユーザーはツーリング開始日の約1~3週間前に自宅でバイクを預け、あとは飛行機など交通公共機関を利用して千歳空港へ向かうだけ。愛車を受け取るのは空港から電車と送迎車で程近い自社倉庫で、そこからすぐに北海道ツーリングが楽しめる。宅急便などを利用し、ヘルメットなどを送っておくこともでき、まさに手ぶらでツーリングへ行けてしまう。

価格と手間を考えると、とてもリーズナブル。フェリー料金や自走で走った場合の高速代、燃料代、費やす時間などを考えれば、それはすぐに納得がいくだろう。毎年、あらゆる手段で北海道へ渡った筆者からすれば、あの苦労はいったい何だったんだと思うほどお手軽である。

日頃からドアtoドアで信頼関係を築いている

バイクの形状はさまざまなので積載車への積み方にもこだわりがバイクの形状はさまざまなので積載車への積み方にもこだわりが
しかし、心配なのは運送中のキズやトラブルではないだろうか。橋本社長は「お任せください」と、頼もしい。同社は前身である高栄運輸の時代から「BHS(バイク ヒッチハイク サービス)」を展開してきたバイク輸送の老舗だが、サービス提供にあたって根本から意識改革したという。

「以前から我々は運送業ではなくサービス業だと認識を変え、バイクを運ぶだけでなくお客様の笑顔を見ることを目的としたのです」(橋本社長)

まず、車輌引き取り時にはキズの有無の確認を徹底し、スタッフは写真撮影もおこなう。そして万一、損傷が出たときは保険で保証する体制を万全としている。橋本さんは運送業の悪しき過去の実態を改善することから、まず取り組んだと話してくれた。

バイクを預かる際には傷チェックと写真撮影をおこなうバイクを預かる際には傷チェックと写真撮影をおこなう
「多くの運送会社では無事故手当というのがありまして、それを支給されるのを目的にドライバーがもしトラブルがあっても会社に報告せず、うやむやにしようとしてしまう実態があることがわかったのです。たとえば、ポケットマネーを使って修復してしまったり、自分で適当に修理してごまかしてしまうという事態が希に起きてしまっていました」

「トラブルが起きてしまうのは仕方がないこと。でも報告しないのは、重大な過失があります。そこで弊社では無事故手当を辞めて、キズをつけてしまうようなことがもしあれば、すぐに報告することを徹底しました」(橋本社長)

結果的にトラブルはほとんどなくなり、ユーザーの満足度も向上。また、引き取り日と配達予定日も明確に応えるなど当たり前のことを、当たり前にするようにしたという。

バイク積載へのこだわりと自信

ゼロ・プラスBHSの橋本健生社長ゼロ・プラスBHSの橋本健生社長
「バイクの場合、1台ずつカタチが違うので、積み方も難しいのですが、それはプロである全国のバイクショップに多くの常連客がいらっしゃることからもわかるとおり、ドライバー達は自信とプライドを持ってやっています」(橋本社長)

バイクの積載はとても難しい。筆者も20年ほどトランスポーターとしてバンを所有し、いろいろなバイクを乗せてレースやモトクロスなどを楽しんできたが、タイダウンベルトが外装に擦れただけでキズが付くし、フロントフォークを縮めすぎてオイルシールにダメージを与えたり、運送会社が片手間でできるようなものではない。バイクの構造に理解があり、大袈裟かもしれないが、愛情もなければならないだろう。

「たとえば、北海道で愛車をお渡して、お客様が目を輝かせてツーリングに出掛ける瞬間を見たとき。あるいは、ご自宅にバイクを届けて、笑顔で感謝の気持ちを伝えられたとき、スタッフらは歓びややり甲斐を感じています。我々は荷物を運ぶだけでなく、夢を届ける素晴らしい仕事に携わっているのだと自覚しているからこそ誇りをもって仕事し、バイク輸送で信頼を得ているのだと自負しています」(橋本社長)

また、北の大地へのツーリングが身近に感じてきた気がする。今はこんな手段があるのだ。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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