ZFはドイツで「ZFグローバル・テクノロジーデイ」を開催。イベントの冒頭、挨拶に立った同社のウォルフ=へニング・シャイダーCEOは「個人のモビリティは貴重なサービスであり、今後も守られるべきものです」と語った。「いまやロンドンやローマの平均車速は10km/h以下で、シュトゥットガルトなどドイツの中規模の市内でもドライバーは1日あたり平均34分の渋滞を経験しています」。シャイダーCEOはそう続けて、都市部で移動の自由が阻害されている現実を訴えたのである。
こうした現状を改革するため、ZFは「モビリティ・ライフ・バランスを取り戻す」と主張する。つまり、より効率的で快適な移動の手段を模索するというわけだ。もちろん、それらは安全で環境に優しく、サステイナブルでなければならない。これらの目標に向かってZFが研究・開発を続ける技術テーマの代表例を紹介するのが、今回のイベントの目的だったといっていい。
彼らが現在、取り組んでいるのは「電動化」「ビークルモーション・コントロール」「インテグレーテッド・セーフティ」「自動化運転もしくは自動運転」の4分野に分類できる。
まず電動化のトピックは2段変速機構付き電気自動車用ドライブトレインとPHVに対応した縦置き用8速ATのふたつ。前者は、これまで変速機構を持たなかった電気自動車に2段変速機構を組み合わせることにより加速性能を最大で10%、航続距離を最大5%改善するというもの。新型8速ATはコンベンショナルなパワートレインにもマイルド・ハイブリッドにも対応するいっぽう、PHVでは80~100kmのEV航続距離を実現する。
ZFのウォルフ=へニング・シャイダーCEOビークルモーション・コントロールとはシャシー・テクノロジーのこと。ZFは自社で生産するパワーステアリング、後輪ステアリング、ダンパーなどを統合制御することでより快適な乗り心地と安全性の高い操縦性を実現。快適な乗り心地は自動運転が実用化された社会でとりわけ重要になると訴える。
インテグレーテッド・セーフティとは「統合された安全システム」のこと。この分野では今後、自動運転もしくは自動化運転の重要性がさらに高まるが、パッシブセーフティの領域ではTボーン・クラッシュの危険性を低減する「プリクラッシュ・エクスターナル・サイドエアバッグ・システム」を提唱。ボディ・サイドの外側にエアバッグを展開することで車両と乗員に加わる衝撃を抑制する。
ZF グローバル・テクノロジーデイ 2019自動化運転もしくは自動運転技術は各自動車メーカーが現在、もっとも熱心に取り組む技術テーマのひとつだが、ZFはレベル4ないしレベル5自動運転が先行して実用化されると見込まれる商用車やモビリティ・サービスへと事業を拡大。ここで得たノウハウを乗用車の自動化運転もしくは自動運転技術の開発に役立てる戦略だ。各技術分野の詳細を、追ってリポートしていく。