アルプスアルパインとフリービットが包括的業務提携へ…めざすはCaaSビジネスの拡大

アルプスアルパイン、フリービットと業務提携
アルプスアルパイン、フリービットと業務提携全 10 枚

23日、アルプスアルパインとフリービットが「CaaS:Car as a Service」の領域で資本関係を含む包括的な業務提携を結んだことを発表した。アルプスアルパインは車載電装品にフリービットの通信技術、クラウド基盤を組み合わせることで、CASE、MaaS時代の新しい製品やサービスを展開していく。

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アルプスアルパインとフリービットは、既存事業での取引や共同開発を行っていた。2019年1月のCESでは、フリービットが手掛けるブロックチェーンを利用した独自のデジタルキー(Car Key Platform)のコンセプトモデルを発表・展示している。100年に一度といわれるモビリティ革命に揺れる自動車業界だが、AI、5Gといった新しいテクノロジーと密接に関係するCASE車両やMaaSに対応するためには、「エッジ側の車載器の技術だけでは限界があるので、これまでのサービス開発等で付き合いのあるフリービットと組むことにした」(アルプスアルパイン 代表取締役 米谷信彦氏)という。

米谷社長は、アルプスアルパインの事業方向性は、コネクテッド機能を利用したつながるクルマによる上質は移動空間の提供であるとし、ユーザー乗車前からのシームレスな移動体験に製品とサービスを展開していくという。そのために、クラウド技術およびその基盤を持ち、グループ企業にはトーンモバイルのブランドのスマートフォン事業も展開するフリービットとの関係強化が必要だった。

たとえば、1月に発表されたデジタルキーは、フリービットと共同開発したブロックチェーンの技術が使われている。ブロックチェーンというと仮想通貨がイメージされるが、仮想通貨はブロックチェーンを利用したアプリケーションのひとつにすぎない。ブロックチェーンは、あらゆる取引の記録を、認証する主体、信頼の母体を必要とせず真正であり改ざんがないことを担保するしくみだ。インターネット上の多数のコンピュータを利用して特殊な暗号化で取引記録に鍵をかけるため、現在の技術は解読、改ざんは実質不可能とされている。

仮想通貨がよく盗まれたり流出事故を起すのは、ブロックチェーンが破られたわけではなく、ブロックチェーンで署名された暗号化データの管理方法が悪く盗まれているだけだ。通貨で考える場合、ブロックチェーンは絶対に偽造できない印刷技術と思うとよい。偽札は絶対に作れないが、本物のお金は、管理が悪ければ金庫に保管していても簡単に盗まれてしまう。ブロックチェーンでは、盗まれた通貨の取引をたどることはできるが、さまざまな取引所を経由したり、別の仮想通貨や一般的な貨幣に換金(ロンダリング)されれば、完全なトラッキングができない。これが、仮想通貨に起こっている問題であり、ブロックチェーンの問題ではない。

この偽造できない印刷技術ともいえるブロックチェーンで署名したデジタルキーが、アルプスアルパインとフリービットがCESで展示したものだ。オーナーカーにしろシェアリングカーにしろ、ブロックチェーンで管理されているので、クルマの盗難や不正利用対策の技術と思うかもしれない。確かに一般的なデジタルキーよりも不正アクセスへの耐性は高いといえるが、仮想通貨が通貨データ(取引所の口座情報やアカウント情報)そのものの盗難に弱いのと同様に、デジタルキーをインストールしたスマートフォンが盗まれたら、端末ロックをしていないと解錠されてしまう可能性がある。

この技術が真価を発揮するのは、やはりシェアリングカーや新車、中古車の取引と流通、そして各種コネクテッドサービスとの連携の場面だ。

シェアリングカーについては、すでに複数のサービスが市場に展開されている。会員カード、免許証のICチップ、スマホアプリを利用したデジタルキーが存在するが、Car Key Platformは、鍵情報のやりとりがブロックチェーンで管理されるので、仮にアプリやサーバーが不正アクセスされても鍵情報の改ざんが困難になる。

ブロックチェーン(今回の実装ではイーサリアムのスマートコントラクトが利用されている)というオープンなしくみを利用しているため、新車OEMメーカーがCar Key Platformを採用すると、その後の中古車取引もアプリレベルで簡単に鍵情報の交換が可能になる。

鍵情報がアプリやクラウドで管理されるようになると、コネクテッドサービスとの連携が、車両ごとではなく、ユーザー(スマホ)ごとにになり、たとえば、ナビ設定、車載サービスアプリの設定などが、クルマを乗り換えても簡単に引き継がれることになる。

米谷氏がいうシームレスな移動体験とは、このような世界を意味する。しかし、これが実現するには、その車両がアルプスアルパインのいうCaaSやCar Key Platformに対応している必要がある。同社では、Car Key Platformについて、まずはレンタカーやシェアリングカー事業者への展開を考えているが、アルパインスタイルのコンプリートカーにもCar Key Platformを搭載していきたいとも語る。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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