トヨタは本当にインドネシアをEVの開発拠点にするのか?[インドネシアの自動車業界事情]

トヨタ C-HRハイブリッド(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2019)
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急速にすすむIT社会、中間所得層の急激な拡大に伴い東南アジアではスタートアップ企業の活動が凄まじい。

とりわけ総資産評価額10億ドルのユニコーン企業が数年で4社になったインドネシアは、日本の投資家やベンチャー企業からも注目の的となっている。そのユニコーンの一つがシェアバイクのGo-jek社のモビリティ事業。それだけでなく中古車、アフターサービス、電動バイクなど自動車周辺ビジネスのベンチャー企業はまさに台風の目となっている。

一方、本家インドネシアの自動車メーカーはというとアジア全体の新車市場の伸び悩みもあって低調ムード。販売競争激化のなかでは眼の前の生産量と販売量をいかに確保するかという旧ビジネスモデルに躍起となっているのが現状。本社のCASEやMaaSとの連動、インドネシア政府の動きもフォローしながらの現地ビジネスの舵取りは難しいのが実情だ。

7月18日からジャカルタ近郊でモーターショーも開催されている。今回から4回に分け、インドネシアの自動車ビジネスの最前線を取りあげたい。

「トヨタ、インドネシアをEVのー開発拠点化」は本当か?

トヨタ自動車のインドネシア販売会社トヨタ・アストラ・モーター中田佳宏社長(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2019)
6月末、ロイター発のニュースが世界を駆け巡った。トヨタがインドネシアをEVの開発拠点とするための2100億円規模の投資を行うというものだ。確かに最近トヨタの電動車開発投資はスピード感にあふれており、日本だけでなく中国現地メーカーとのコラボなどグローバルな動きはトヨタのー社員ですらついていけないのが現状だ。

インドネシアは世界4位の人口を抱える将来有望な大国。中国、アメリカ、インドは既に様々なメーカーがEV事業をスタートさせているなか、インドネシアはまだEVどころかハイブリッドの普及ですら進んでいない。いわば手つかずの電動車有望国と行っても良い。ただし、周辺国と比べて遅れていたインフラ投資にようやく火がついた段階であり、電力不足問題に加え、都市部の地盤沈下に伴う雨季の道路冠水問題など電動車以前に解決すべき問題が山積みである。

7月18日から始まったインドネシア・オートショーのトヨタコーナー。ハイブリッド車の展示はあったものの、将来のEV開発投資に関するニュースは無し。具体的な計画や販売策は今後発表される政府の電動車普及策待ちといったところだろう。しかしながらトヨタの現地法人トップ中田佳宏社長のプレゼンでは、ハイブリッド、プラグイン、FCEV、EVまでの電動車の幅広い開発力や世界での実績が訴求され、トヨタは基本的にはあらゆる技術対応が可能で「何でも来い」といったところだろうか。

モータースポーツ活動など企業PRに徹したオートショーの展示

トヨタのモータースポーツコーナー(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2019)
大きなモデルチェンジのニュースがない中、トヨタは日本から2台の新型『スープラ』をオートショーに持ち込んだ。またモータースポーツコーナーでは広くスペースを割きGRカラーのモータースポーツ参加車両を出展。市販車ベースでもレース上でもチャレンジをし続けるトヨタの企業姿勢をインドネシアの人びとにアピールした。

インドネシアは順調に年間5%台の経済成長をしつづけている新興国。平均年齢も28歳と大変若い。モータリゼーションの黎明期のような状況でクルマは憧れの対象だ。会場では真っ赤なカラーのスープラに見入る若いカップルや熱心に写真を撮る学生も見受けられた。トヨタのイメージ戦略はこの国では成功していると思われる。

量販モデルはダイハツ頼みのインドネシア・トヨタ

トヨタ アバンザ(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2019)
しかしながら、トヨタのインドネシアのビジネスはというと、量販モデルである地域モデルはダイハツに負っているところが大きいのが現実。インドネシアに適した低コストで国産化のしやすいMPV、SUV、ハッチバックなどの小型モデルは全てダイハツがインドネシア向けに開発し、ダイハツのインドネシア工場でつくられたものだ。

昨年はトヨタ車全体販売台数のうち65%がダイハツからのOEM供給車両となっている。日本市場での軽自動車のように同モデルはダイハツの販売網でも販売されているが、強大なトヨタの販売網でダイハツを上回る販売量をこなす。

トヨタとしては自社のインドネシア工場で造っている高級モデルをもっと売りたいところだが、市場構造上いかんともし難いのが現状だ。特に、前日のGo-jek社のシェアタクシーであるGo-carやGrabビジネスの影響で運転者向けに廉価なクルマが売れることが、市場の下級移行に拍車をかけている。

こうした中、トヨタは今回ダイハツとの差別化を狙った高級モデルの展示や自社のインドネシア生産モデルの展示に重点を置いたようである。

供給元はともあれトヨタの商品ラインアップは他メークと比較し豊富であり、しばらくNo1の地位が大きく揺るぐことは無いと思われる。

トヨタ イノーバ(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2019)

<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。

《藤井真治》

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