「うれしくて悔しい」国内クラス3位表彰台、女性ライダーペアが挑んだ雨の鈴鹿4耐

笑顔が素敵なGOSHI Racingの片山千彩都さん(左)と小椋華恋さん(右)。2人をデザインしたステッカーを持ってパチリ
笑顔が素敵なGOSHI Racingの片山千彩都さん(左)と小椋華恋さん(右)。2人をデザインしたステッカーを持ってパチリ全 6 枚

7月27日、鈴鹿サーキットで行われた鈴鹿4時間耐久ロードレースに、片山千彩都さん、小椋華恋さんの女性ライダーペアが参戦。雨のレースで、見事に国内クラス3位を獲得した。

鈴鹿4耐は、7月28日に決勝レースが開催された2018-2019 FIM世界耐久選手権最終戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第42回大会の前日、27日に行われた4時間の耐久レースである。

2019年の鈴鹿4耐に、唯一の女性ライダーペアとして挑み、注目を集めたGOSHI Racingの片山さんと小椋さん。バイクはホンダ『CBR600RR』だ。20歳の小椋さんは今季、Moto AmericaのJr.Cupにスポット参戦で活躍しており、19歳の片山さんは地方選手権と、MFJカップJP250という250ccバイクで争われるレースに参戦している。

決勝レースを翌日に控えた7月26日、2人に話を聞いた。

因縁の仲なんです、バチバチですよ!

鈴鹿4耐に女性ライダーペアとして参戦したGOSHI Racingの小椋華恋さん(左)と片山千彩都さん(右)
「因縁の仲なんです、バチバチですよ!」と2人の仲を称するのは小椋さん。過去、拠点が違った2人は会うことはなかったものの、レースでの活躍でお互いのことは知っていた。ピットが隣になったレースがきっかけで、3年ほど前から次第に仲を深めていったのだそうだ。小椋さんは「因縁の仲」と言うが、時には一緒に出掛けることもあるのだとか。

もちろん、レースでは戦う相手だから「バチバチ」やりあうのだろうが、小椋さんが「コース上では本当に容赦がないんです」と片山さんについて話せば「そっちもでしょ!」と片山さんが返す。なんともいいライバル関係に見える。そんな2人がタッグを組んで参戦した今回の鈴鹿4耐。片山さんにとっては初参戦で、一方、小椋さんは2017年、2018年に続いて3度目の参戦だ。

耐久レースというのは、スプリントレース以上にチーム力が必要で、また、ライダー同士の円滑なコミュニケーションが重要になってくる。例えば、バイクのセッティング。スプリントレースとは違って、自分だけの好みにすることは難しい。2人のライダーが速く走るためのポイントを探っていく。こうした作業を進めるうえで、ライダーとしても、コースの外でも、関係性を築いてきた2人で臨むことができるのは大きな強みだったに違いない。

予選を終えて、GOSHI Racingは6番グリッドを獲得。翌日に控える決勝レースに向けて意気込みを聞くと、片山さんが「国内クラス優勝」ときっぱり。「同じです」と言い切る小椋さん。鈴鹿4耐では国際ライセンスを持つライダーと国内ライセンスを持つライダーが参戦する。2人が目指すのは、国内ライセンスクラスの頂点だ。

表彰台は嬉しい!けど悔しい…

鈴鹿4耐のグリッド上でスタートを待つ小椋(左)と片山(右)
そして迎えた決勝レース。この日は台風の影響により、路面が完全に濡れた状態でレースが行われることになった。レース中には雨が小康状態になったかと思えば再び雨脚が強くなるなどを繰り返し、さらには強い風も吹いていた。

スタートライダーを務めた片山さんは、エアバッグをバイクにつなぐ作業によってポジションを落としたものの、これは想定内のこと。そこから見事な追い上げを見せると、4番手で小椋さんにバイクを託す。7番手でレースに復帰した小椋さんも堅実に走り、再び4番手でピットイン。ほぼ1時間ごとにライダー交代を行い、順調に片山さんの2回目の走行に入った。しかし、残り時間が約1時間15分となったころ、転倒が相次ぎ、赤旗が提示されてレースは中断。そのままレース成立となった。

小椋さんと片山さんは総合5位、国内クラスで3位を獲得して表彰台に上った。

レース後に話を聞くためにピットを訪れると、複雑な表情を浮かべる2人がいた。追い上げていくタイミングでの赤旗終了。そこまで戦略としてもうまく進んでいた。目指すクラス優勝に向けて、スパートをかけるところだったのだ。

小椋さんは「表彰台獲得は久々なので、うれしいです」と明るく言う。一方で、「いい感じに来ていたんです。だから、ここで終わるの!? って」と複雑そう。片山さんは「かなり不完全燃焼です」と言い、それから「悔しいです……!」と、しぼりだすようにつぶやく。

とは言え、いいレースができたのでは? と聞けば、2人とも「はい」とはっきりした返事が返ってきた。結果は100%満足できないけれど、赤旗までは自分たちのレースができた、2人はそう感じていたのだろう。

女性ライダーだから、という言い訳はできない

小椋から片山へ、ライダー交代の様子。小椋が路面状況などを片山へ伝える
うれしさと悔しさがないまぜになった、国内クラス3位表彰台獲得。そんな今年の鈴鹿4耐を経た、今後のレースに向けた展望を聞いた。

「今季は普段300ccのバイクでレースをしているので、600ccに乗って、経験値としてすごくいいものが得られました。Moto Americaであと2戦、残っているので、まずはそこからです。全力で戦います。今回、すごくいい経験になったから」と小椋さん。「やったりますよ!」ときっぱりと言い切った。

片山さんは「MFJカップJP250があと3戦あるので、表彰台の頂点を目指します。それから鈴鹿サンデーロードレースではチャンピオンが獲れるようにがんばりたいです。鈴鹿4耐は、リベンジしたいですね」と今季の自分のレースとともに、鈴鹿4耐への再挑戦を誓う。

最後に、チームメイトとして鈴鹿4耐を戦ったお互いに向け、一言ずつ語ってもらった。

小椋さんは片山さんに向け、「雨降らしちゃってごめんね」。なんでも小椋さんは「強烈な雨女」なのだそう。それにしても台風を呼ぶとは、かなりの雨女ぶりかしれない。それから「また一緒に鈴鹿4耐に出て、リベンジしましょう!」と片山さんに早くも次の鈴鹿4耐へ向けてラブコールを送った。

そんな片山さんは「わたしにとって華恋ちゃんは憧れの存在だったんですが、憧れからライバルになって、今は相棒になりました。これからも良き仲として、ライバルとして、尊敬できる人としていてほしいなと思います」と、これまた熱い『告白』。それを聞いた小椋さんが「照れる……!」と笑う。

女性ライダーペアとして表彰台獲得の快挙を成し遂げた片山さんと小椋さん。女性のレーシングライダーとして注目を集める2人だが、そこに対する思いもある。

「このスポーツは男女の区別なくできるのがいいところだと思っています。女性ライダーとして注目してくれるのはすごくうれしい。そのうえで、レースでは男女区別なく見ていただけるのが、わたしとしては理想なんです」と片山さんは言う。

小椋さんも「レースは女性ライダーだから、という言い訳はできないスポーツです。注目してもらえるところは注目してもらって、でも、バトルになったら真剣勝負ですからね」と語っていた。

レーシングライダー、片山千彩都、小椋華恋の挑戦は続いていく。

2人をデザインしたこのイラスト。小椋のお母さんによるデザインだそうだ

《伊藤英里》

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