【SUPER GT 第5戦】GT500クラス2連勝のLEXUS TEAM LEMANS WAKO'Sを率いる脇阪寿一監督「強いチームになってきた」

表彰式を見守ったあと、ファンの声援に応える脇阪寿一監督。
表彰式を見守ったあと、ファンの声援に応える脇阪寿一監督。全 16 枚

3~4日に開催されたSUPER GT第5戦「富士500マイル」、GT500クラスではトップハンデでここに臨んだWAKO'S 4CR LC500の大嶋和也&山下健太が優勝し、2連勝で王座獲得に向けて前進した。陣営を率いる脇阪寿一監督は、就任4年目のチームの充実を実感している。

好調レクサス勢の一角、LEXUS TEAM LEMANS WAKO'S(チームルマン)の#6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也&山下健太/タイヤはブリヂストン=BS)は前戦タイで今季初優勝してドライバーズポイントリーダーの座に浮上。それゆえに今回の富士500マイルには“厳しい臨戦”となっていた。

SUPER GTには獲得ポイント連動のウエイトハンデ制度があり、第6戦までは「×2kg」の原則。35ポイントで首位の大嶋&山下は当然ながらトップハンデとなる70kgのハンデ数値でここに臨むことになっていたからである。規定により、34kg分は燃料流量リストリクター(燃リス)の“2段階マイナス調整”に振りかえられ、残り36kgを実ウエイトとして搭載するが、直線の長い富士で燃リス2段階マイナスはかなり辛い要素として作用することが予想された。

ドライバーの大嶋と山下も、もちろん厳しさを予感していた。迎えた予選は15台中11位。理屈的にはビリでも仕方ないところでQ1セッション、4台を下した山下の走りと陣営のマシンの仕上げは健闘と評してもよかったが、両ドライバーは予選日朝の練習走行の段階から「思っていたよりマシンは速い。決勝レース想定のペースは他車にあまり遜色ない」ことを実感していた。

富士500マイル、GT500クラス優勝の#6 WAKO'S 4CR LC500。富士500マイル、GT500クラス優勝の#6 WAKO'S 4CR LC500。

そしてレースでは混乱を避けつつ表彰台を争う位置まで上昇、さらにはセーフティカー導入直前の絶妙なピットイン判断で丸々1周近いリードを奪い、最後は独走で2連勝を成し遂げた。これで大嶋&山下のドライバーズポイントにおけるリードは16点、決して小さくはないギャップを築くことに成功している。

セットアップを司る阿部和也エンジニアも「厳しいハンデなりには(最初から)良く仕上がっていたと思います」と振りかえっているが、チームルマン陣営は予選日から決勝日に向けて、チームファクトリーが近くにあることも活かしつつ、さらなる戦闘力アップに向けて万全の準備を図ったという。それはこのチームを率いる脇阪寿一監督が「ドライバーを含めて、それぞれの役割分担が(高い次元で)出来るようになってきている」と、チームの充実を感じる部分であり、後述する彼の“理想とするチーム像”に近いものとなってきている証でもあったようだ。

#6 LC500の(左から)大嶋和也、脇阪監督、山下健太。#6 LC500の(左から)大嶋和也、脇阪監督、山下健太。

脇阪監督はGT500の現役ドライバー時代、絶大な実績と人気を誇った“ミスターSUPER GT”である(人気は今も健在)。2002、06、09年と3度のドライバーズタイトル戴冠を誇り、16年に自身初王座獲得時の所属チームであるチームルマンの監督に就任。16、17年と最終戦までタイトルを争うチームとして陣営を機能させたが、勝利と王座をつかむことは叶わず、今季に捲土重来を期している。

その今季、チームルマンには昨季のスーパーフォーミュラの“チャンピオンエンジニア”である阿部エンジニアが古巣復帰のかたちで移籍、若手気鋭の山下も移籍加入するなど、体制が一層強化された。そして脇阪監督は、今回のシーズン中盤での2連勝、3戦連続表彰台という快挙を成し遂げた自陣に今、過去にない大きな手応えを感じている。

GT500クラスの表彰式。GT500クラスの表彰式。

「阿部が僕の理想とするところを分かってくれていて、それが(チーム全体で)出来てきている。タイで“勝てるチーム”になり、今回は“強いチーム”になってきたと思います」

脇阪監督の理想のチーム像とは、「僕とアンドレ(ロッテラー)が組んでいた頃のトムス(TOM'S)」。のちにルマン24時間レースで3勝するなど世界的名手ともなるロッテラーとのコンビで06年と09年に戴冠した時代のチーム像再現を、チームルマンの監督として脇阪寿一は狙っている。そしてそれが、ついに現実のものになろうとしているのだ。今回の富士でのマシンの仕上げ、2連勝を呼び込んだ最高のピットイン判断などが、それを証明していよう。

ファンの歓呼に応える脇阪監督。ファンの歓呼に応える脇阪監督。

「アタマが良くて速いドライバーふたりと、素晴らしいエンジニア、そしてそれを支えてくれるメカニックやチームスタッフたちを活かして、この先のチャンピオン争いを頑張りたいと思います」と脇阪監督。次の第6戦はもちろん、ハンデ係数が「×1kg」になる第7戦も厳しいハンデと付き合い続ける必要が出てきたが、「今回こういうレースができている強いチームなら、頑張れると思います」。1点でも2点でも獲って、あとは全車原則ノーハンデとなる最終第8戦での王座獲得へ、視線はブレない。大嶋と山下、阿部エンジニアも思いは同じだ。

富士500マイルの表彰式、大嶋と山下がその中央に立つ姿を脇阪監督はポディウム下から見守った。その去り際には多くのファンから大きな声援を受け、相変わらずの人気ぶりであった。2連勝だが、監督としての国内初勝利に観客も沸き立った。

GT500クラス優勝の#6 WAKO'S 4CR LC500。GT500クラス優勝の#6 WAKO'S 4CR LC500。

「ドライバーとしては実績を残させてもらいましたが、監督としては(今季途中まで)1度も勝てていなかったので、自分のやり方が正しいかどうか、迷うところも正直ありました。自分の心の中で言い訳を探しながら自分に言い聞かせている面もありましたけど、こうして結果も出てきましたから、胸を張って、自信をもって、自分のやり方でみんなと一緒に進んでいこうと思います」

次戦第6戦オートポリス(9月7~8日)、#6 WAKO'S 4CR LC500は計算ハンデ数値が60×2kgで120kgに。ただし実行上限100kgという規則があるため、実際には100kg相当ハンデ適用、燃リス3段階マイナス調整と実ウエイト50kgという格好になる。より厳しいハンデ状況で、王座に向けてどれだけ加点できるか(ドライバーズポイントはポールと決勝1~10位に入る)。シリーズリーダーの戦いぶりが引き続き注目される。

脇阪監督(手前)と阿部エンジニア。脇阪監督(手前)と阿部エンジニア。

《遠藤俊幸》

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