[サウンドシステム構築論]パッシブクロスオーバーネットワーク・システムを楽しむ!

パッシブクロスオーバーネットワークを付属したスピーカーの一例(DLS・RC6.2)。
パッシブクロスオーバーネットワークを付属したスピーカーの一例(DLS・RC6.2)。全 3 枚

カーオーディオの楽しみ方はさまざまある。ライトにシステムを完結させても良いし、物量を投じてハイエンド仕様を完成させても良い。当特集では、そのシステム構築のバリエーションについて解説している。今回は、通称「パッシブ」を活用するシステムに焦点を当てる。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」とは、音楽信号を“帯域分割”する装置。

最初に、「パッシブクロスオーバーネットワーク」が何なのかを説明していこう。これは基本的にはスピーカーに付属しているものであり、音楽信号を“帯域分割(クロスオーバー)”するための装置である。2ウェイや3ウェイといったマルチウェイスピーカーは、ツイーターとミッドウーファーというようにスピーカーを複数個用意して、それぞれに役割分担をさせて音楽を再生するのだが、その形を成り立たせるためにはなんらか音楽信号を“帯域分割”する道具が必要となる。ゆえに多くのセパレートスピーカーは、これもセットにして販売されている。

ただし現代カーオーディオでは、「パッシブクロスオーバーネットワーク」が使われないことも少なくない。その場合には“帯域分割”は、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)で行われる。

なおDSPにはさまざまなタイプがあるが(ハイエンドナビに内蔵されているもの、パワーアンプ内蔵DSP、単体DSP)、いずれのタイプであれDSPは、パワーアンプの前段に組み込まれる。

ゆえに、DSPに搭載されている“クロスオーバー”機能のことは、“アクティブ・クロスオーバー”とも呼ばれている。“アクティブ”という言葉には「能動的」という意味がある。対して“パッシブ”は「受動的」という意味の言葉だ。つまり分類上、パワーアンプで増幅されるより前に“帯域分割”されることが「能動的」だと定義され、パワーアンプで増幅された後に“帯域分割”されることは「受動的」だと定義されている、というわけなのだ。

ちなみに現代カーオーディオでは、システムを発展させていこうとするときには割と早い段階で、なんらかのDSPがシステムに投入されることが多い。つまり、「パッシブクロスオーバーネットワーク・システム」は、「入門的なシステム」で採用されることが多いスタイルなのである。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」を使えば、効率的にシステムを完成できる!

ところで、システムを発展させようとするときにDSPが、つまりは“アクティブ・クロスオーバー”が用いられることが多い主な理由は、「きめ細かくサウンドチューニングしたいから」だ。DSPの中では最初に“クロスオーバー”がかけられる。そうすれば、各スピーカーに送られる信号の個別制御が可能となる。それがしたいがためにDSPが用いられると言っても過言ではない。

対して“パッシブ”なシステムでは、詳細なサウンドチューニングは行い難い。ツイーター用の音楽信号とミッドウーファー用の音楽信号は同一回路で伝送されるので、個別制御は行えない。

しかしながら、だからこそ得られるメリットもある。それは主に2つある。まず1つ目は、「パワーアンプのch数が少なくてすむこと」だ。

例えば、使用しているAV一体型ナビに高度なDSPが搭載されている場合、“アクティブ”に“クロスオーバー”をかけると、内蔵パワーアンプの4chすべてがフロントスピーカーによって使い切られることとなる。スピーカーが4つあり(左右のツイーター+左右のミッドウーファー)それぞれを個別制御するためには、信号を個別に伝送する必要がある。ゆえにパワーアンプも4chが必要となるのだ。

しかし「パッシブクロスオーバーネットワーク・システム」では、内蔵パワーアンプの2chだけでフロントスピーカーを鳴らせる。なので、リアスピーカーを殺さなくてもすむ。後部座席に人を乗せることが多いというドライバーの中には、後部座席用のスピーカーを残したいと考える人も少なくない。「パッシブクロスオーバーネットワーク・システム」では、問題なくリアスピーカーを残しておける。

また、外部パワーアンプを使う場合にも、2chアンプを用意すればこと足りる。より低コストでかつ合理的に「外部パワーアンプ・システム」を構築できる。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」にこだわる、という楽しみ方もある!

そして2つ目の利点とは「パッシブクロスオーバーネットワークならではのサウンドが楽しめること」だ。

車載用のスピーカーの多くは、「パッシブクロスオーバーネットワーク」も含めて開発されている。つまり、それを使ったときに聴こえてくる音こそが「開発者が意図した音」なのである。「パッシブ」を使えば、開発者が意図したとおりの音を聴けるというわけなのだ。さらには、「パッシブ」の回路内を音楽信号が流れることで、音に味わいが付加されたりもする。

またマニアになると、「パッシブクロスオーバーネットワーク」を改造、またはゼロから作り直したりもする。そうすることで音の変化を味わえる。「パッシブクロスオーバーネットワーク」にこだわるという楽しみ方も存在している、というわけなのだ。

ところで、「パッシブクロスオーバーネットワーク」の中には“バイアンプ接続”が可能なモデルもある。もしも使っている“パッシブ”がそうであるなら、それは積極的に活用したい。

“バイアンプ接続”に対応している「パッシブクロスオーバーネットワーク」では、ツイーターとミッドウーファーそれぞれ用に専用の入力端子が設けられている。なので、以下のような接続方法が可能となる。例えばAV一体型ナビのフロントch出力をミッドウーファー用の入力端子に、リアch用出力をツイーター用の入力端子に繋ぐ、というように。

つまり、内蔵パワーアンプの4chすべてをフロントスピーカーのために使い切るという、より豪華な接続方法が取れるのだ。結果リアスピーカーは鳴らせなくなるものの、1つ1つのスピーカーに十分なパワーがかけられて、しかも「パッシブクロスオーバーネットワーク」内部での信号の干渉もなくなる。音に良いことずくめなのである。

また、もしも使用しているAV一体型ナビに“タイムアライメント”機能が搭載されている場合には、ツイーターとミッドウーファーのそれぞれに、個別に“タイムアライメント”がかけられるようにもなる。より詳細なサウンドチューニングも可能となるのだ。

「パッシブクロスオーバーネットワーク・システム」では場合によっては、“バイアンプ接続”という楽しみ方もできる。覚えておこう。

今回はここまでとさせていただく。次回は、「シンプル外部パワーアンプシステム」というテーマで話を進める。乞うご期待。

『サウンドシステム構築論』Part4 「パッシブクロスオーバーネットワーク・システム」を楽しむ!

《太田祥三》

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