積水化学工業が初出展、4つの新素材で拡販に挑む…フランクフルトモーターショー2019

積水化学工業の高機能プラスチックカンパニーが出展したコンセプトカー
積水化学工業の高機能プラスチックカンパニーが出展したコンセプトカー全 9 枚
積水化学工業はドイツ・フランクフルトで開催中のフランクフルトモーターショー2019に、新規制作したコンセプトカーを初出展した。同社は自動車業界のトレンドである「CASE」の発展を支援する材料の開発および拡販を基本戦略としており、その出展動向に注目が集まった。

◆コミュニケーションツールにも最適な「合わせガラス用楔形中間膜」

出展したのは積水化学工業でエレクトロニクス、車輌・輸送、住インフラ材を戦略3分野と位置付けている高機能プラスチックカンパニー。同カンパニーでは現在、車輌・輸送分野での事業拡大を重要戦略として位置付けており、その一環として、2017年度にはオランダのオープンイノベーション施設内に欧州研究センターを設立。欧州を自動車業界におけるトレンドの発信拠点と捉え、同施設を欧州でのリサーチ・マーケティングを行いながら研究開発へつなげる場として活用していく。

その積水化学工業が出展したコンセプトカーには、大きく「合わせガラス用中間膜」「ポリオレフィンフォーム」「カラーカーボン」「放熱グリス」の4つの新素材が搭載されていた。

「合わせガラス用中間膜」は本来、ガラスの貫通・飛散防止や紫外線カットのために自動車ガラスで使用されているフィルム。ただ、そのままでは光の屈折で映像が2重になって見えるという問題が発生してしまう。積水化学工業では断面を楔(くさび)形に成形することで光の屈折を制御し、画像をクリアに映せる新たな中間膜を開発。さらに、「自発光機能」を付与することでフロントガラス全面に情報を表示できるようにした。

これにより、ドライバーだけでなく、同乗者が情報を確認することもできる上に、外部からクルマ側の意思として示すことも可能になる。たとえば、「お先にどうぞ」とか「どうぞ道路を渡って下さい」とか、外部とコミュニケーションを取る新たなツールとしても使えそうだ。

「ポリオレフィンフォーム」は 主に内装の下地材やHVAC(冷暖房空調設備)の断熱材として使用されているもの。コンセプトカーでは新たに光透過性を付与した開発品を搭載し、周囲とほぼ同等の素材に時計やエアコンの設定温度などを透過表示できるようになっている。必要に応じてON/OFFすれば高いインテリア性を確保しながら、高機能を発揮することが可能となる。積水化学工業によれば、この発砲技術で光を透過させるのは同社独自のものだそうで、素材そのものは1964年に世界で初めて開発し、架橋ポリオレフィンフォームでは現在トップシェアを誇っているという。

◆金属の持ち味を活かす美しい仕上がり「カラーカーボン」

デザイン面でのインパクトを特に感じたのが「カラーカーボン」である。これは、炭素繊維のテキスタイルに金属をスパッタリングした素材で、金属の種類によって様々な色を表現することができるという特徴を持つ。積水化学工業によれば「カラーカーボンを使ってCFRP成型品を生産すると、塗装せずに高いデザイン性を付与することができる」という。表面はクリア塗装をしたような透明感を伝えるもので、それでいてプレミアム感あふれる仕上がりを見せている。表面強度も十分にあるとのことで、内装だけでなく外装材としても利用すれば新たなデザイン展開に役立ちそうと感じた。

そして、4つめが近々搭載車が登場予定になっているという「放熱グリス」だ。室温レベルで硬化可能なシリコーンを素材とした放熱グリスである。素材が持つ高い熱伝導性に加え、塗布設備に対する耐摩耗性や製品そのものの低アウトガス性能により、各自動車メーカーやリチウムイオン電池メーカーから高い評価を得ているという。積水化学工業では電気自動車の動力源とする、バッテリーの熱対策としての提案を進めており、2020年春~夏頃にはオランダに工場を新設して本格稼働に入る予定にしているという。

積水化学工業では欧州を生産面でも重要なエリアと位置付けており、すでに中間膜、フォーム等の生産拠点を構えている。加えて、各事業の欧州における生産能力増強を進めており、中間膜事業においてはHUD対応くさび形中間膜等を生産できる新製膜ラインが2019年10月に、中間膜原料樹脂の新ラインが2020年4月に稼働を予定。また、放熱材料事業ではオランダに新工場の建設中で、2020年春~夏頃には稼働する予定にしている。同社では今回の出展を契機に欧州市場での事業拡大に向け、さらなる攻勢をかけていく構えだ。

《会田肇》

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