【MaaS】JR西日本、瀬戸内で航路に力を入れる理由とは…西日本旅客鉄道 総合企画本部 MaaS推進室 室長 神田隆氏[インタビュー]

【MaaS】JR西日本、瀬戸内で航路に力を入れる理由とは…西日本旅客鉄道 総合企画本部 MaaS推進室 室長 神田隆氏[インタビュー]
【MaaS】JR西日本、瀬戸内で航路に力を入れる理由とは…西日本旅客鉄道 総合企画本部 MaaS推進室 室長 神田隆氏[インタビュー]全 1 枚

西日本旅客鉄道(JR西日本)は鉄道、船舶、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクル、カーシェアリングなど交通機関および地域の観光素材をスマートフォンなどでシームレスに検索・予約・決済をする統合型サービス「観光型MaaS」に取組んでいる。

まず2020年に秋に実施されるせとうち広島デスティネーションキャンペーンに合わせて、2019年10月から行われるプレキャンペーンに合わせて観光型MaaSの実証実験を行う。その観光型MaaSアプリ「setowa(セトワ)」には行程作成、ルート提案、予約決済のe5489へのリンク連携などの機能も加える。

なぜMaaSにJR西日本が取組むのか。キャンペーンなどJR西日本の瀬戸内での取組みを中心に、JR西日本総合企画本部MaaS推進室室長の神田隆氏に聞いた。

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“つながる” ことが大切

---;JR西日本はどんなところに位置していますか?

神田氏;JR西日本はJR北海道以外と境界と面しています。新幹線でもJR東海と東海道山陽新幹線、JR東日本は北陸新幹線、JR九州は九州新幹線でつながっています。

JR西日本は北陸や関西、中国地方など幅広い地域を所管しており、首都圏やなどの都市圏からの送客を図るために、それぞれの地元の皆様とのつながりやJR他社とのつながりを重要視してきました。このようにJR西日本にとって“つながる”ことが非常に大切です。

航路など二次交通の整備への取組み
日ごろからのコミュニケーション

---;ここからはエリアを活性化させるキャンペーンについて教えてください。まず「ディスカバーウェスト」とは?

神田氏;2003年の新幹線ダイヤ改正より品川駅に新幹線が止まるようになったが、この時同時に東京~岡山、広島への直通列車が増加し、中国地方への観光誘客が課題となりました。

しかし瀬戸内はJR西日本首都圏とって重要なエリアなのですが、東京在住のお客様に観光旅行先についてアンケートをしたところ、中国地方と答えた方が残念ながら1%だったのです。また観光客は広島や尾道など街中が中心になりがちで、海まで行かない観光客が多いです。瀬戸内の海や島には素晴らしいポテンシャルあります。しかし島へ渡る旅客船は通勤や通学のための生活交通として住民が利用しているため、時刻表などがデジタル化されていなかったり、観光客が使いたい時間になかったり、航路が新幹線とうまく接続していなかったりします。新幹線を降りた先のエリアを盛り上げるための二次交通の整備が課題となりました。そこでディスカバーウェストというキャンペーンをはじめました。

たとえば「鞆の浦」は新幹線の福山駅から近くにあります。福山駅からバスで30分かかっていました。そこで地元の船会社に航路をつくってもらって、JR西日本が宣伝や旅行商品にするような、アクセスの整備を当時から行っていました。

また“うさぎ島”として有名な「大久野島」が多くの観光客がやってきます。大久野島の観光施設は休暇村1つで、そこが旅客船を運行しています。新幹線からすぐ降りて大久野島に行けるように、地元の皆様にご相談をして三原に直行する航路を土日限定で作っていただきました。

ディスカバーウエストキャンペーン推進のため、中国地方の五県と当社で連携協議会を2006年より運営しているほか、地元の支社が市や町の行政、事業者の皆様との日頃のコミュニケーションを行なっています。

---;「せとうちパレットプロジェクト」について教えてください
神田氏;当社の鉄道事業と創造事業が連携し、瀬戸内エリアをお客様が何度も訪れたくなる一大周遊エリアにするため2018年からせとうちパレットプロジェクトをはじめました。これまで重点的に取組んできたのは地域の観光地の紹介やアクセスの整備と宣伝です。瀬戸内パレットプロジェクトでは、JR西日本自ら観光に特化した航路や古民家再生などの宿づくり、スタートアップへの投資などを行いはじめました。
-
--;「デスティネーションキャンペーン」について教えてください

神田氏;デスティネーションキャンペーンはJR西日本のみならずJRグループで昭和50年代の国鉄時代がから行っています。1年間を4つに分けて、全国のどこかの地域で実施するようにしています。全国の駅や車内の中吊りに広告を集中的に貼りだしたり、旅行代理店が旅行商品を用意したりします。

--;デスティネーションキャンペーンも協議会が主体となって推進されているのですね。

観光からローカルの生活へ

---;MaaSに対する考え方は?

神田氏;2019年6月に私の部署ができました。会社としてMaaSの検討をはじめたのが、2018年の年末あたりからです。MaaSについて検討する以前から、当初ワンストップサービスのようなものを考えていました。MaaSを検討するようになり、駅でまとめて予約や決済などをするのではなく、MaaSアプリで行えるように変えていきました。

2019年10月からMaaSの実証実験は2020年10月からの、せとうち広島デスティネーションキャンペーンの準備として行います。デスティネーションキャンペーンは一過性のものだと捉えられがちですが、新しい観光素材やツールをつくりレガシーとして残ることを目指しています。デスティネーションキャンペーンがあるところで徐々に環境づくりを進めて、観光以外の分野、例えば大都市圏や中山間地域といった地域において、移動手段間の連携や移動の目的となる生活サービスとの連携により、それぞれの地域での生活をより便利にするような取組みにもチャレンジすることを通じ、MaaSアプリが使えるエリアがあちこちにあるようにしたいです。

JR西日本はMaaSアプリを観光だけではなく、買い物など移動に必要な生活サービスに合わせて予約できるように付加価値の高い移動を提供していきたいと考えています。

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《楠田悦子》

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