【ベントレー フライングスパー 新型試乗】「コンチネンタルGTの4ドア版」からの脱却…大谷達也

存在感と華やかさが際立った新型フライングスパー

グランドツアラーの血統

ワインディングロードでのパフォーマンスに感銘

ベントレー フライングスパー 新型
ベントレー フライングスパー 新型全 32 枚

存在感と華やかさが際立った新型フライングスパー

前輪の位置を130mm前進させてフロントミッドシップ化を図り、駆動系に8速DCTや電子制御油圧多板クラッチ式トルク配分機構を採用し、足周りに3チャンバー式エアサスペンションや48Vシステムのアクティブ・アンチロールバーを組み込んだのは、いずれもフォルスクワーゲン・グループのプラットフォーム“MSB”を用いた影響。つまり、兄弟モデルの『コンチネンタルGT』との深い結びは3代目になっても引き継がれたといえる。

ただし、外観から受けるイメージはずいぶん異なる。これまでの「コンチネンタルGTの2ドア・クーペ・ボディを引き伸ばして4ドア・サルーンに仕立て直した」印象がずいぶんと薄まり、『フライングスパー』の存在感と華やかさが際立ったような気がするのだ。

ベントレー フライングスパー 新型ベントレー フライングスパー 新型
それを象徴するのがコンチネンタルGTより4~5cmは高いと思われるフロントグリル。スポーティなメッシュ仕様のコンチネンタルGTに対し、フライングスパーではクロームメッキで美しく輝く垂直な棧が幾重にも並んでおり、上品ななかにもきらびやかな世界を作り上げている。

インテリアも華やかになった。コンチネンタルGTよりも“光り物”が増えたが、それを趣味のいい高級インテリアに仕上げている点はさすがベントレー。レザーに3次元加工を施した3Dレザーをドアトリムにオプション設定したり、レザーシートのステッチに“カセドラル・ウィンドウ”と呼ばれる新しいデザインを採用したのも同様で、モダンでありながらイギリスらしさを強く感じさせるキャビンに仕上がった。

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グランドツアラーの血統

走りの魅力という点でも、フライングスパーはコンチネンタルGTに優るとも劣らない。

国際試乗会のコースはモナコを起点とし、コートダジュールのワインディングロードをぐるりと巡ってくるというもの。スタート地点となったカジノの目の前に位置するオテル・ド・パリからモンテカルロ市街の狭い路地をすり抜けていったのだが、ここでまず感じたのが乗り心地の滑らかさ。鋭い突起などを乗り越えても足回りが巧みにショックを吸収してくれて、車内は実に快適。低速域での乗り心地では間違いなくコンチネンタルGTを凌いでいると思う。

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もうひとつ驚いたのが、狭い路地を何度も行き来したのに、一度も切り返しが必要にならなかった点。理由のひとつに、ベントレーとして初採用となる4WSがフライングスパーに搭載されていたことが挙げられる。コンチネンタルGTに比べても344mm長い3195mmのホイールベースが与えられているのだから、4WSの装備もある意味で当然といえるが、取り回し性を上回る4WSのメリットがワインディングロードで明らかになった。

その前に高速道路での印象を記しておくと、優れた快適性は市街地を走っていたときとまったく同様。しかも、ハーシュネスは軽いのにボディはフラットな姿勢を保って崩さない。フランスのオートルートは制限速度を130km/hとしている区間が多いが、このスピード域でもキャビンは静寂そのもの。

フルタイム4WDのフライングスパーは高速直進性も優れていて、それこそステアリングに指を添えているだけでフライングスパーは一直線に突き進んでいく。グランドツアラーこそベントレーがもっとも得意とする分野だが、その血統はフライングスパーにも受け継がれたわけだ。

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ワインディングロードでのパフォーマンスに感銘

もっとも、フライングスパーの走りで私がもっとも強い感銘を受けたのはワインディングロードでのパフォーマンスだった。軽快に吹き上がるW12エンジンのレスポンスに気をよくしてかなりペースを上げたつもりだったが、21インチ・サイズのピレリPゼロはとうとうスキール音ひとつたてることがなかった。

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しかも、市街地であれだけの快適性を示した足回りが、素早く向きを変えるS字コーナーでもレスポンスに不満を覚えなかったのだから驚く。この辺は新採用の4WS、それに48Vシステムを使ったアクティブ・アンチロールバーの効果も影響しているはずだ。

グランドツアラーの伝統を守りつつ、快適性と華やかさで新たなレベルに到達したベントレー・フライングスパー。兄弟モデルの完成度がこれだけ高まると、2ドア・クーペのコンチネンタルGTもうかうかとはしていられないだろう。

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大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

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