【スーパーフォーミュラ 最終戦】2019年のチャンピオンはニック・キャシディ、悲願の初戴冠達成…7戦7人目のウイナーは野尻智紀

2019年スーパーフォーミュラ王者となったニック・キャシディ。
2019年スーパーフォーミュラ王者となったニック・キャシディ。全 15 枚

全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)最終戦は27日、鈴鹿サーキットで決勝日を迎え、このレースを2位でフィニッシュしたニック・キャシディが2019年のシリーズチャンピオンに輝いた。最終戦を制したのは野尻智紀で、今季は7戦してウイナー7人となっている。

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決勝日も鈴鹿サーキットの路面コンディションは予選日同様にドライ。朝のフリー走行では、前日の予選でシーズン3度目のポール獲得を果たした自力タイトル候補のひとり、今季新人の#64 アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)がトップタイムをマークした。このセッションの順位に大きな意味はないが、流れの良さを感じさせる決勝日の立ち上がりである。

#64 パロウは前日、マシンの仕上がりとポール獲得という結果を大いに喜んでいたが、予選Q3での自身のアタックの出来には完璧ではない悔しいところもあったと語っていた。予選2位との差はコンマ1秒、もしアタックも完璧だったなら後続を大きく突き放すタイムを彼は出していたのかもしれない。

いずれにせよ、この週末の鈴鹿においてパロウとTCS NAKAJIMA RACING 64号車のトータルパッケージが発揮する速さには他を圧するものがありそうな様相。勝てば自力王座なのだから、形勢は#64 パロウの“ルーキー戴冠”へとさらに傾いたかのように思われた決勝日の朝だった。

午後の決勝レースは43周、約250km。レインタイヤを使用しない限りはソフトとミディアム、両スペックのドライタイヤを使用する義務が生じ、そのためのタイヤ交換は「先頭車両が7周を完了した時点から、先頭車両が最終周に入る前まで」の間に消化しなければならないのが今回の規則だ。これに燃費等を絡めた戦略判断が勝敗を左右することにもなってくる。基本は1ストップで、なるべくソフトで長い距離を走りたい。

ドライバーズチャンピオン獲得の可能性を残す選手は5人。#1 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)、#37 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)、そして#64 パロウの3人は勝てば自力での王座獲得となる。#3 山下健太(KONDO RACING/トヨタ)と#18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG/トヨタ)は自身の優勝を必須とする他力待ちだ。

14時過ぎにレースは開戦した。今回のレースはセーフティカー導入等の状況はなく進んでいくこととなり、最終的には最終ラップで止まった1台(1周遅れで完走扱い)を含め全20台が完走、チェッカーを受けた19台はすべてトップ同一周回という、重厚感ある展開となっていく。

スタートタイヤにはソフトを選んだ者が7名、ミディアム発進組が12名、そしてまさかのレインタイヤ選択が1名(詳細は後述)。ミディアム発進の12名が予想通り、規則的にソフトへの交換が可能になるタイミングの7~8周目にそれを消化し、ソフトのまま長く引っ張りたいソフト発進組の7台が見た目のトップ7を占める構図となった。

さて、レインタイヤを履いてスタートしたのは#18 可夢偉である。決勝ではドライ時もレインタイヤを使えることを利用し、ソフト/ミディアムの両使用義務を回避する作戦で、1周目にピットインしてソフトへ。43周のうちの2~43周目に関しては“無給油&タイヤ交換なし”で走りきる作戦だ。

1周目のピットストップ時の作業ロスが3~4秒ありつつも、リタイアのないソリッドな展開のなかで#18 可夢偉は、16番グリッド発進から(一時最下位の20位走行を経て)終盤には10位走行とポジションアップに成功。作戦には一定の効果があったといえそうだが、最後はさすがに燃費が厳しくなってガス欠ゴールイン、2つ順位を下げて12位だった。とはいえ、可夢偉は最終戦を大いに沸かせてくれた。

なお、可夢偉同様に優勝が戴冠必須条件だった#3山下は11番グリッド発進から決勝最終結果9位。可夢偉と山下、彼らの大逆転王座は実現しなかった。

自力王座候補の3人はポールの#64 パロウと予選5位の#1 山本がミディアム、予選6位の#37 キャシディがソフト発進であった。

#64 パロウはソフトに履きかえたあとにペースが落ち、“ミディアム発進だった組”の先頭である全体8番手から順位を下げていってしまう。2度目のタイヤ交換で次のソフトを履き直すこととなり、万事休す。前日から朝までの流れは一変し、#64 パロウは決勝最終結果19位、戴冠は叶わなかった。でも、ルーキーイヤーの善戦を振り返り、「今日はハッピーではなかったけど、シーズンはハッピーなものだったよ」との言葉を彼は残している。

#1 山本もソフトへの交換後、思ったほどはペースが良くない様子。最終的には5位に甘んじることとなり、2年連続3回目となるはずの王座獲得はならなかった。ただ、彼と今回3位初表彰台をゲットした#5 福住仁嶺を擁する「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」(エンジンはホンダ)は7年ぶりのチーム部門タイトル獲得を果たしている。

#37 キャシディはソフト発進組7人の2番手に位置し、先頭の#16 野尻智紀(TEAM MUGEN/ホンダ=予選2位)を追いかけた。そして割と早い段階で、キャシディ所属のTOM'Sチームは“レース後半の自身のピットストップ後もパロウと山本の前でコースに戻れる”計算を成り立たせることができていたようである。作戦が的中したことはもちろん、予選ではトヨタ勢がQ3(上位8台)にキャシディしか残らないという苦境下でも「レースでの強さには自信があった」という#37 キャシディ、彼が最後に笑う結果となった。

トップチェッカーは#16 野尻で、今季7戦目で7人目のウイナー誕生、野尻は5年ぶりの通算2勝目を達成する。そして#37 キャシディが2位でゴールし、昨年の惜敗を雪辱する格好で悲願のSF初戴冠を成し遂げた。

2019年SF王者 #37 ニック・キャシディのコメント
「この気持ちをどう表現していいか分からない。レースを終えて戻って来るラップでは、ずっと泣いていたんだ。最後に泣いたのはいつだろう、っていうくらいに僕は泣かないんだけどね。号泣していたと思う。今年はとにかく(より一層)SFにフォーカスして取り組むことが重要だと考えた。そして、それを僕はチームとともに実行してきたんだ」

ニック・キャシディはニュージーランド出身の25歳で、2015年から日本を活動の主舞台としている気鋭。同年の全日本F3王者で、17年には当時23歳の若さでSUPER GT/GT500クラスチャンピオンの座に就いている。SFには17~18年とKONDOから参戦し、18年は惜敗のシリーズ2位。今季はGT500の所属チームでもあるTOM'Sに移籍し、まだ3年目とはいえ“悲願”と形容していい初王座獲得を果たした。

なお、キャシディは今季のGT500タイトル獲得の可能性を残しており、来週(11月3日決勝)のSUPER GT最終戦もてぎには、ライバルの山本尚貴が昨季達成した2冠同時制覇がかかることとなった。その成否はともかく、キャシディが今後も国内外のトップシーンを長く賑わす存在になっていくことは間違いなかろう。普段は陽気でアグレッシブなキャシディ、そのSF初戴冠を、鈴鹿に集まった多くのファンが祝福していた。

キャシディがカーナンバー1をつけて連覇に挑むであろう2020年のスーパーフォーミュラは今季同様全7戦の日程、4月4~5日に鈴鹿サーキットで開幕する予定だ。

《遠藤俊幸》

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