自分に生まれ故郷があるように、愛車にも“ふるさと”があるはずだ。そう考えると、相棒が誕生した地へ足を運んでみたくならないだろうか。
もしかすると、バイク乗りでなければ理解不能かもしれない。モーターサイクルは工業製品ながら趣味性が強く、ライダーは自分のバイクをとても大切に想っているのだ。
ホンダはそんな想いに応えている。昨年から本田技研工業熊本製作所にて開かれている「Honda Motorcycle Homecoming」だ。今年は10月12日(土)に開催され、1900名もの来場者を集めた。
作り手とユーザーの絆を感じる
Honda Motorcycle Homecoming
作り手側であるメーカーとユーザーが強く結ばれようとしている。イベントでは会場オープンからそう感じる。朝9時にゲートが開くと、敷地内では真っ白なユニフォームを着た従業員たちが旗を振ってお出迎え。そして皆、大きな声で「おかえりなさい!」と口々にしているのだ。
従業員たちに歓迎され、次々に熊本製作所内に入ってくるライダーたちも「ただいま」と手を振り返す。駐車場に停まったバイク乗りたちに話しを聞くと、「もうこれだけで感動体験」だと言う。
誰でも入場無料で、ウエルカムなのはホンダユーザーだけでなく、乗っているバイクのメーカーは一切問わない。クルマで来てもOKで、家族連れの姿も目立つ。
《撮影 青木タカオ》
1日たっぷり、プログラムは充実している。「CBと駆け抜けた時代展」と名付けられた歴代CBシリーズの展示は、まるでホンダコレクションホールの一角。初めて「CB」の名が付けられた市販スーパースポーツの元祖、ベンリイCB92スーパースポーツ(1963年)やドリームCB450(1966年)をはじめ、直列6気筒エンジンを搭載したCBX1000(1979年)、CB750F(1979年)などもあり、見応えタップリ。
ドリームCB750フォア(1969年)やCB1000スーパーフォア(1992年)はデモ走行も披露され、さらにベンリイCB92スーパースポーツも元気溌剌とギャラリーの前を駆け抜けた。
往年の名車を運転したのは元ホンダワークスライダーの宮城光氏で、「いずれのバイクも快調で、CB92にいたっては60年という長い時を経ている。なのにこうしてアイドリングも安定し、今なお素晴らしいコンディションで走れ、ホンダ高品質の伝統を感じずにはいられない」と絶賛していた。
大人気のホンダ隠れヒット商品も
《撮影 青木タカオ》
特設ステージでおこなわれたトークショーでは、元MotoGPレーサー高橋裕紀選手(KYB MORIWAKI RACING)やRCB時代の耐久レーサーやCB-1(1989年)、CB1000SUPER FOURの開発責任者である原 国隆氏が壇上に上がり、一語一句を聞き逃すまいと熱心なファンが集まった。
人気が高いのは、工場見学。普段からも予約申込みすれば見学はできるものの、この日だけは特別に未公開エリアへも立ち入ることができ、リピーターも見逃せない。生産ラインや完成車検査を目の当たりにでき、75分をかけて熟練作業員がおこなうエンジン分解実演も計3回実施された。
唯一工場見学だけが、ホンダの二輪ユーザーでなければ参加できず、受付でキーを見せるのがエントリーの条件。1400名もが参加した。
また、社員食堂でランチを食べることができ、お目当ては“ホンダ伝統の味”として名物となっているカツカレーうどん(500円)。真っ白な作業着に汁が跳ねても良いよう、翌日が休日の金曜日に毎週登場し、いつしか業界内で「ホンダの製作所ごとにカレーうどんの味が違っていて、とても上手い」と評判に。
いまでは各レトルト商品が発売され、隠れたヒット商品に。お土産として、たくさん買い求める来場者の姿もたくさん見られた。
意見が開発に活かされるかも!?
Honda Motorcycle Homecoming
敷地内にあるHSR九州サーキットでは試乗会がおこなわれ、ゴールドウイング、CB1300 SUPER BOLD’OR、CB400SUPER FOUR、CB1000R、CB650R、CB250R、CBR1000RR、CBR650R、CBR400R、CBR250RR、CRF1000L アフリカツイン、CRF250ラリー、X-ADV、レブル500、レブル250、NC750X、400X、フォルツァを、安全なクローズドコースにてテストライドすることができる。さらに原付2種試乗会、ゴールドウイングの豪華で快適な後部座席を体験できるタンデム走行会も好評だった。
先導役やアテンド係が気さくに参加者に声をかけ感想を聞き出していたが、なんとそれはその機種の開発責任者だから驚く。これも熊本製作所ならでは。試乗体験者の意見が、ニューモデルの開発にそのまま反映されるのかもしれないと思うと、ワクワクしてくる。
イベントの最後はパレードラン。自分のバイクでゆっくりと周回し、愛車が生まれた地を訪れた歓びを噛みしめるのだ。「また来年も!」と参加した多くのライダーが誓ったはずで、こうしたイベントに参加できるホンダ二輪ユーザーは幸せといえる。