アメリカの5Gの現状をチェック---「MWC19 Los Angeles」開催のLAで試す

アメリカの5Gの現状をチェック!「MWC19 Los Angeles」開催のロスで試す
アメリカの5Gの現状をチェック!「MWC19 Los Angeles」開催のロスで試す全 17 枚

2018年9月に世界に先駆け5Gサービスを開始したアメリカ。2019年4月からはスマートフォンを使ったモバイルサービスも始まり、現在は4キャリアがアメリカ各都市でサービス展開をしている。2019年10月22日から24日までロサンゼルスで開催された「MWC19 Los Angeles」でも話題の中心はアメリカの5Gサービスだった。では現時点のアメリカの5Gサービスはどのような状況なのか、2019年10月末時点の各社の状況を調べてみた。


北米4キャリアの5Gサービスの現状



Verizon Wireless(Verizon)

サービスの概要
サービス都市:15都市(NR)、4都市(5GTF)
スマートフォン:4機種
通信方式:NR・5GTF, 28GHz(Band n261)

アメリカで最初に5Gサービスの商用化を行ったVerizon Wireless

アメリカで最も早く5Gサービスを開始したVerizonは、サービスエリアや販売するスマートフォンの数でも他社を一歩リードしている。Verizonの5Gは2018年10月1日に世界で最初となるコンシューマー向けサービスをヒューストン、インディアナポリス、ロサンゼルス、サクラメントの4都市で開始したが、通信方式は業界団体である3GPPが定める標準規格「5G NR」ではなく、「5G Technology Forum(5GTF)」方式を採用した。サービス内容も固定ブロードバンドサービスを無線で置き換えるFWA(Fixed Wireless Access)であり、端末は屋内設置用のルーター(CPE)のみだった。

その後2019年4月3日、標準規格NR方式によるスマートフォンを使った5Gサービスを開始。現在モバイルサービスは「5G Ultra Wideband(UWB)」、FWAサービスは「5G Home」の名称で展開を行っている。

Verizonは固定ブロードバンド代替のFWAサービスも展開

2019年10月末現在、NR方式によるサービス都市はアトランタ、ボイス、シカゴ、ダラス、デンバー、デトロイト、インディアナポリス、ミネソタ、ニューヨーク、オマハ、パナマシティー、フェニックス、プロビデンス、STポール、ワシントンDCの15都市。ロサンゼルスなど5GTF方式で開始した4都市は順次NRへ切り替えられ、5GTFは今後廃止される。また2019年末までに5Gサービスは30都市まで拡張される予定だ。

スマートフォンは以下4機種が販売されている。このうちモトローラの「moto z4」は5Gアダプタ「5G Mods」を装着することで5Gに対応する。また旧モデルとなるモトローラ「moto z3」「 moto z2 Force」にも5G Modsを装着して5Gスマートフォン化することが可能だ。

・サムスン Galaxy Note 10+ 5G
・サムスン Galaxy S10 5G
・Motorola moto z4 + 5G Mods
・LG V50 ThinQ 5G

5G Modsを装着したモトローラのmoto Z4

スマートフォン向けの料金は既存の4Gプランをアップグレードした形となっており、4Gデータ無制限に10ドル追加で5Gデータが利用できる3プランを提供。付加サービスの種類に応じて45ドル/月または55ドル/月の料金となる。

Sprint

サービスの概要
サービス都市:9都市
スマートフォン:3機種
通信方式:NR, 2.5GHz(Band n41)

9都市で5Gサービスを開始しているSprint

Sprintは2019年5月30日からアトランタ、ヒューストンなどの4都市で5Gサービスを開始した。Sprintの5Gの特徴は既存の4Gでも利用されている2.5GHz帯の周波数(サブ6GHz)を利用していること。基地局の一部は4Gと5Gで同じ周波数帯域を共用している。

2019年10月末時点のサービス都市はアトランタ、シカゴ、ダラス-フォートワース、ヒューストン、カンサスシティー、ロサンゼルス、ニューヨーク、フェニックス、ワシントンDCの9都市。

ロサンゼルスのSprint店舗では5Gスマートフォンを販売中

スマートフォンは3機種。中国OnePlusの製品をいち早く採用した点が注目される。価格も単体で840ドルと、1000ドルを切る”低価格”で提供されている。またLGのV50 ThinQ 5Gは同製品の発表会でSprint対応を謳い、Sprintの5Gサービスの最初の販売端末だった。スマートフォンで劣勢のLG、新興メーカーとして勢いに乗りたいOnePlusの両者がSprintの5Gサービスに大きな期待を寄せている。

・サムスン Galaxy S10 5G
・LG V50 ThinQ
・OnePlus 7 Pro 5G

大手メーカーに交じりOnePlusの7 Pro 5Gが販売されている

スマートフォン向け料金プランは70ドル/月-50GBと80ドル/月-100GBの2つを提供。Huluなどのストリーミングサービスは無料で利用可能だ。なお固定向け端末としてHTCのバッテリー内蔵ホームハブ「5G Hub」も販売されている。

AT&T

サービスの概要
サービス都市:21都市(B2B向け)
スマートフォン:1機種
通信方式:NR, 39GHz(Band n260)

AT&TはB2Bに5Gを展開

AT&Tは2018年12月21日からアトランタなど12都市でNR方式による5Gサービスを開始。モバイル利用が可能だが端末は5G Wi-Fiルーター(NETGEAR社「Nighthawk 5G Mobile Hotspot」)のみで、4GスマートフォンをWi-Fi接続して利用する方式だ。またサービス加入は企業のみに限られ、個人客の5G契約はできない。これは現在も同様である。そのためAT&Tの一般店舗では5G NRサービスの案内は見られない。

2019年10月末時点のサービスエリアはロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼ、ジャクソンビル、オーランド、アトランタ、インディアナポリス、ルイスビル、ニューオリンズ、シャーロット、ローリー、ラスベガス、ニューヨーク、オクラホマシティー、ナッシュビル、オースチン、ダラス、ヒューストン、サンアントニオ、ワコの合計21都市。

5Gスマートフォンは1機種のみで、これも企業向けのみとなる。料金は90ドル/月でデータ定額。他に複数の割引プランもある。
・サムスン Galaxy S10 5G

AT&TのスマートフォンはGalaxy S10 5Gのみ。企業向けに限定展開している

ところでAT&Tはギガビット通信に対応したLTE Advancedに「5G Evolution」という名称を付け、同社が販売するLTEスマートフォンのアンテナピクト表示も独自に「5GE」としている。この表示は紛らわしく、Sprintが異を唱えて訴訟を起こしている。

ロサンゼルスのAT&Tの店舗。5Gが大きくEvolutionが小さい表記でまぎらわしい

ちなみにアメリカでは4G開始時に3Gの高速通信であるHSPA+などを「4G」と表記した過去の例があり、AT&Tはそれを再び繰り返している。AT&Tは「5G」(NR)と「5G E」(LTE Advanced)の表示は異なるから消費者は混同しないとアピールするが、AT&Tの一般店舗では「5Gサービス」とアナウンスしていることから実際は混乱が生じていると考えられる。

T-Mobile

サービスの概要
サービス都市:6都市
スマートフォン:1機種
通信方式:NR, 28GHz(Band n261)・39GHz(Band n260)

T-Mobileは600MHz帯をアピールするが、サービスはミリ波から

T-Mobileは6月28日からNR方式による5Gサービスをアトランタ、クリーブランド、ダラス、ロサンゼルス、ラスベガス、ニューヨークの6都市で開始。現在もこの6都市のみでサービスが展開されている。なおT-Mobileは600MHz(Band n71)の免許も取得しているが現在はまだサービスは提供されていない。

スマートフォンは1機種のみを販売している。サービスプランは4Gと同額とのこと。

・サムスン Galaxy S10 5G

また各サービス提供都市でも5Gエリアは狭く、ロサンゼルスのダウンタウンにあるT-Mobileの店舗を2か所訪問してみたが、5Gサービスの案内や端末の販売は無かった。現時点ではまだごく一部の利用者だけが5Gを利用しているという状況のようだ。

ロサンゼルスのT-Mobileの店舗では5Gサービスの案内は無かった


VerizonとSprintの5Gをスマートフォンで体験

MWC19 Los Angelesで訪れたロサンゼルスの街中で5Gサービスを体験してみることにした。訪れたのはSprintの店舗で、店内には5Gスマートフォン3製品(Galaxy S10 5G、LG V50 ThinQ 5G、OnePlus 7 Pro 5G)が展示されていた。しかし店内には5Gアンテナは無いようで、3機種のうち5Gに繋がっていたのは店の入り口側に近い位置に展示されているGalaxy S10 5Gのみだった。

Speedtest.netのアプリで速度テストを行ったが100Mbps程度と思ったほどの速度は出ず、記録用の写真を撮ることを忘れてしまったほど。やはり2.5GHzの電波は屋外から屋内には入りにくいということだろうか。なお端末では5G NR n41に接続していることは確認できた。

Galaxy S10 5Gのサービスモードで5G NR n41に接続を確認

実店舗は実際の街中での5Gの接続状況を試すのにうってつけの場所ではあるが、Verizonの店は立ち寄る時間が無く、AT&Tは個人向けの端末展示は無し、T-Mobileの店舗も前述したように5Gの案内は無い。そのためMWC19 Los AngelesのVerizonとSprintのブースで速度テストを行ってみた。なおどちらのブースも屋内にアンテナを設け、実電波を飛ばして接続デモを行っていた。

まずはSprint。MWCの会期中3日間訪問し1日2回程度速度テストを行ったが、300Mpbs前後といったところだった。最高速度は363Mbps。ブーススタッフの話によると500Mbpsに到達することもあるとのことだったが、実際は300-400Mbpsが出れば十分という状況だろうか。ブーススタッフも実際に5G契約したユーザーが体験できる速度は300から500Mpbs程度と話していた。

MWC19 Los AngelesのSprintブース、5Gスマートフォンを展示

Galaxy S10 5Gで363Mbpsが最速だった

続いてVerizonブース。こちらは周波数の高いミリ波のため屋内にアンテナがあれば速い速度が期待できる。展示端末でスピードテストアプリが利用できたのはモトローラのz2+5G Modsのみ。速度はコンスタントに600Mbps台、最高値は696Mbpsだった。障害物が無い環境だったこともありギガビットは無理だったが4Gの実速度よりかなり高速だ。

とはいえ以前韓国でテストしたときのように、実際の街中で使えば5Gの電波の届かないデッドエリアはまだまだ多いと思われる。ブースのスタッフもサービスを提供している都市でも5Gの実力が十分出るわけではないと話していた。

モトローラz2+5G Modsで696Mpbsが最高

Galaxy Note10+ 5Gのサービスモードで5G NR n260接続を確認

<TEXT:山根康広>

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《編集部@RBB TODAY》

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